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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

愛し続けるということ。その9
結婚できたら、するのかな?

ノリスケ たとえば電車の中で、
いるじゃない? いい感じだなと思うご夫婦。
ジョージ いるよね。
ノリスケ ちゃんと目線が同じで、
いつくしむような目で見ている人たち。
たとえば会話がなくてもね、
新聞を読んでるダンナのほうを
うれしそうに見たりとかする奥さん見ると、
ああ、いいなと思うね。
ジョージ 尊敬といたわりだよね。
で、何気ないところに見せる
相手に対する思いやりとかね。
そういうのはある。
つねさん 気遣いとかね。
ノリスケ うん。
ジョージ だから、そういうものの集大成が
マナーだったりとかするんだろうなと
思うしね。
つねさん そうだね。マナーだから、
それは彼氏にだけじゃなくって、
周りの人に対しての思いやりだもんね。
ジョージ 絶対そう思う。たとえば
人前でする夫婦ゲンカ。
見ていて愉快なものもあるけど、
他人が聞くのも忍びないような。
ノリスケ 人を不愉快にするような。
ジョージ 陰湿な夫婦ゲンカもあるしね。
ひどいケンカってあるもん、たまに。
そんなの人前でするなよ、
っていうようなのが。
ほんっとに真剣になって、
もうおまえ帰れ、とか、
こんなところにはいたくない、とか。
なんで私をこんな店に連れてきたんだ、
こんな店でメシを食ってる俺は
どうなるんだ! とかって、あるもん。
つねさん ああ、それは嫌だね。
周りの人を不愉快にする権利はないよね。
ジョージ ああ、不幸な人たちだなと思うよ、
ああいうの見ると。
この人といてしあわせだなと思う気持ちを、
ずーっとなんか、自分なりに
盛り上げていかないと、
やっぱり、盛り下がっちゃうからね。
つねさん だって、人は盛り上げてくれないよね。
結局。
ノリスケ ほっとくとね、誰もね。
そりゃそうでしょう。
だから、不倫のこう、突発的なことが。
ジョージ 出ちゃう。
ノリスケ ボッと。
ジョージ ボッといって、そしてブスブスブス‥‥。
ノリスケ 私、生きてるわっ!
ってこう、なってしまうのかな。
でも、あれかな、若い男の子と女の子が
一生懸命お付き合いを持続させるって、
大変なことなのかな?
結婚って、お付き合いの
最終型なんだろうか。
お付き合いが終わって結婚が始まるのかな?
つねさん ま、人それぞれじゃないのかな?
わかんないけど、だって出会って
数ヶ月で結婚したりとかする人たちも
いるわけでしょう?
逆に何年も、10年とかつきあってから
結婚する人もいるわけだし。
ノリスケ うーん、結婚についてはわからないねぇ。
つねさん わかんない。
ノリスケ 今の自分の付き合ってる感じは、
結婚にすごく近いのかな?
っていう気はするけどね。
社会的な契約を何もしてないけど。
ジョージ うーん、そっか。
おふくろとおやじの話を聞いてると、
高校の同級生で、大学のときに
駆け落ち結婚だから、
お付き合いっていっても、
高校の3年間のお付き合いで、
そっから先は、結婚はしたけど、
一緒に仕事してたから。
会社を大きくするだとか、
社員をしあわせにするだとか、
子どもができたら子どもを育てるだとかって
いう目標があって。
だから共同体ではあったけど、
お付き合いではなかったんだろうと
思うんだよね。
で、それが、なんか数年前に、
子どももぜんぶ独立して、
ある程度、仕事も片が付き始めて、
最近すごい、お付き合いモードに
入ってるなと思うもんね。
ノリスケ うーん、あらためてね。
結婚は、わかんないな。
ジョージ 結婚ね。結婚。子ども。子ども‥‥。
ノリスケ そう、結婚制度ができたらするのかな?
とちょっと思う。わかんない。
ジョージ たとえばAさんとBさんが
完全に対等な関係であり続けるんであれば
結婚の制度は必要ないかも
知れないんだけれど。
でも、対等の関係でも、
たとえばふたりが共同財産を作り始めたら、
法的な問題で、なんか面倒臭いことが
起きるかなと思うことはあるよね。
ノリスケ うーん。
ジョージ ね。たとえば僕が今死んだら、
このグータラなおデブちゃんは
どうなるのかしら!? とかって思うと、
結婚できたらいいのになと思う。
つねさん ワシが先に死んだら?
ジョージ ‥‥うーん、
未亡人はきれいになるんですってよ。
ノリスケ はははははははははは!
うん、喪服は
セクシーだっていうから(笑)、
それがチャンスよ!
ジョージ 喪服! 喪服のときには必ず、
黒い靴下は穴開いたのにして、
隙を見せるのよ。
絶対にそれよ(笑)。
つねさん はははは。で、なに? 木陰で‥‥?
ノリスケ それじゃあ伊丹十三の
『お葬式』じゃない。
ジョージ でも、結婚するしないは別として、
ああ、この人と一緒に、たぶん齡とって、
死ぬまで一緒なのはこの人なのかなと
思ったら、もうそれが結婚なんじゃないの?
つねさん うん、だと思う。
ノリスケ うんうん、そんな気分。
ジョージ そうだと思う。
結婚したって離婚があるわけだからね。
昔さ、結婚の対になっていたのは、
たぶん添い遂げることだったけど、
今の結婚の対は離婚だからね。
つねさん あー、そうね(笑)。
ジョージ ね。
つねさん そういうのもあるよね。
ノリスケ でも、離婚した人に聞くと、
すごい体力のいる仕事だって言ってたよ。
(笑)離婚は一大事業だって。
ジョージ ウチのね、やっぱり知り合いとか
お客さんとか、離婚を、
兄弟そろって2回ずつやってる人がいてね。
ノリスケ うわぁ、タフだねぇ。
ジョージ そう。で、しかもそのうちのひとりの
ひとつは、アメリカ人との離婚だからね。
ノリスケ うわ、大変。
ジョージ 4年越し。やっとこの前、
完全勝利を勝ち取ったって言ってた。
ノリスケ あ、勝ったんだ。すごい。
ジョージ もう目の前が、一瞬にして開けたような
感じがしたってよ。ブォワーッ! て。
あとね、こないだ話したイギリス人の
奥さんと仲直りした人。
彼はこの前、やっぱり夫婦の間にも
絶対会話は必要だっていうふうに言ってた。
最近はやっぱり奥さんがイギリス人だから、
日本に頼るものも何にもなくて。
ご主人に、
主人でもあり友だちでもあり
パートナーでもあり、何よりも、
頼りがいのある相談相手で
なくてはいけないと、
ありとあらゆるものを、
要求するんだよね。
で、その要求はすごい重たいと
思っていたんだけれども、
男である以上、人間である以上、
その要求に応えることから
逃げちゃいけないから、っていうんで、
今すごい戦ってるの。
そうすると、ほんとにね、
毎日のいろんなことを話すように
なったって言ってて。
で、ほら、ゲイの付き合いってさ、
わりとゲイって、
地方から東京に出てきてると、
ありとあらゆる自分の歴史を
切って来てるじゃない?
ノリスケ あ〜。
つねさん そうね。
ジョージ それこそ、なんか、
小学校とか中学校とか高校時代の友だちと、
未だに付き合ってるかっていうと、
それも1回切れてるし。
つねさん 俺もまったくないよ。
ノリスケ ほんと? ぼく特殊?
ゴールデンウィーク中、
小学校からの友だちとずっとメールで
やり取りしたりしてた(笑)。

「未亡人はきれいになるんですってよ」
ってあんた。つづきます。

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2004-06-29-TUE

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