APPLE
新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

パーティは女の戦場 その1
無防備になっちゃダメよ。

ジョージ かんぱーい!
今日のテーマは、パーティですっ。
ノリスケ パーティなんか、行ったことないですっ。
ジョージ フンガッ。ごめんなさい。
ゲップが出ました。
つねさん えーっと、その前に、
ノリさんに渡すものがあるのよ。
ノリスケ なに? なにかくれるの?
つねさん うんっ!
ジョージ そーんな、失礼でしょう?
旅行に行くとね、自慢気に、なんか……。
ノリスケ 買ってきてくれたのね。ありがとう。
つねさん おみやげー。えいっ。
ノリスケ なあに? なに? これ。
イシマだ!
ジョージ イシマよ。しかも、ナイト・クリーム。
「サクセスナイト」っていうのよ。
つねさん ハッハッハッハ!
ノリスケ 朝起きたときに、ぷるぷるになるのね!
ジョージ もう、赤ちゃんの肌を、あなたにプレゼント。
ノリスケ (笑)うれしー。
もともと、お肌つやつやなんだけどね。
栄養とりすぎで……
つねさん ワッハッハッハ……
ジョージ さて! そんなことよりも、
今日は美味しいお食事を頂けて、
ほんとによろしゅうございましたっ。
ノリスケ 美味しい和食やさんに行きましたっ。
カウンターで、座ると、おまかせのお料理が
どんどん出てくるようなお店。
で、今はお店を出て、とあるバーにいますっ。
ジョージ うん、でも……
つねさん ね。
ジョージ でも、ね。
つねさん でもね。あの女っ。最低っ。
ジョージ カウンターの一番はしにいた、
あの女ね。ああいうのを最低の女と言いますっ。
ノリスケ カウンターが、
1、2、3、……8人くらいしか
座れないお店なのね。9人かな?
つねさん 2、2、3、3かな。10人?
ジョージ ま、どちらにしても、
2桁座れるか座れないかぐらいの、
親密なカウンターです。
ノリスケ その一番はじっこに、茶髪の女がいました。
まあ、茶髪はどうでもいいんだけど。
つねさん ホスト風のおにいちゃんと一緒だった。
ノリスケ ホストかな?
つねさん うーん、違うと思うよ。ホスト風ってだけで。
ジョージ ホストじゃないよ。
でも普通の会社員じゃないな。
たぶん、不動産系のね、
車でいうと、ベンツを喜んで乗ってる、
日焼けサロン通いの激しい……
昔、ベルファーレの黒服かなんかやってて、
最近、港区のマンション上げてます、
っていうような感じの、おにいちゃん。
ノリスケ そういうおにいちゃんと、おねえちゃん。
つねさん の、カップルがいたんだよね?
ジョージ 2人で来てました。ね? 
で、食事も終わらないのに!
つねさん 女は携帯するし。
ジョージ タバコは吸うし。
つねさん あの吸い方がひどかったよね。
ジョージ あれは、ホステスの吸い方ですっ。
ノリスケ やってみて下さい。
ジョージ あのね、唇を突き出しながら、
右手にタバコをはさみ、
はさんだ右手のヒジは、
カウンターについて。
ノリスケ ついて。
つねさん 左手は、携帯と、あのー、メール打ってんの。
ジョージ メール打ってますねー。
ジョージ 火のついたタバコを、
んーと、手の位置はそのまんまにして、
首を前に突き出して、
アゴから、タバコをくわえて下さい。
そしてパカッて、離したと思ったらば、
煙を、ななめ上、
35度ぐらいの角度に、吐き出して下さい。
ノリスケ フーッ。
ジョージ すごいでしょー?
ノリスケ それにさ、おみそ汁のナメコを
「あーん、これ、タピオカー」
って言ったのよ!!!
でっかい声で!! 失礼千万。
叩っ切る! タピオカだって!
ジョージ ふつう思いませんっ。
ノリスケ 思いませんよー(笑)。
ジョージ 何がくやしいって予約が取れない、
貴重な二席。貴重な二席を、
あんなバカ者が占めていたがために、
ほんとにあの人の料理を食べたい人が2人、
来れなかったのよ。
ノリスケ そうだよ!
つねさん そうだよー、ほんとに。
ジョージ それが一番、
可哀想です。
つねさん 雰囲気、壊してくれたよね、あれね。
ノリスケ うん。美味しいものが好きな人が集まる、
丁寧なご飯を出してくれる和食屋さんのね。
ジョージ いけませんねー。
なんであそこまで、
女の人が人前で無防備になれるかな?
と思うよね。
ノリスケ うん。
つねさん そうだよね。終わった後の
ベットの上じゃないんだから。
ジョージ それはちょっと、飛躍のしすぎー。
つねさん だーって、そんな感じだったじゃん。
ノリスケ 見られてることをね、意識しなさすぎ。
つねさん うん。
ジョージ うん、そうなんだよね。
だって、もしかしたら、あの場に、
彼女を見初める可能性のある、
世界的大富豪が座ってたかもしれないのに。
ワシは絶対、ピック・アップしないわ。
ノリスケ ハハハハッ。するわけないでしょっ。
ゲイなんだから……
それにしても無防備すぎます。
つねさん 無防備すぎるよね。
ノリスケ ああいうの見ると、やだなー、と思うなー。
ジョージ なにが? 女が?
ノリスケ ちがうの。自分は女じゃないけれども、
そうなっちゃいけないって思うの。
ジョージ 二丁目のゲイ・バーのカウンターにも、
ああいうおネエさん、いっぱい座ってるよ。
ノリスケ 気をつけますっ。
ジョージ あれを見てて思ったんだけど、
男っていうのは、たぶん、
永遠に女を見る立場であって、
見られる立場じゃないよね。
でも女性は、やっぱり見られる立場なのよ。
ところがあの女は、
いっさいそれを意識してないの。
で、もし、あれを「見せてる」としたら……
つねさん やな女。
ジョージ ね。やな女。いやぁ〜ん、って感じ。
そうなんです。、もっと、女の人は、
見られている自分、あるいは、
んー、どういうのかなー?
自分の価値どおりに、
自分を見せる大切さ。
磨けば磨くほど、自分の価値以上のものを、
見ていただくことが、できるのよ、
ということを、知ってほしいの。
ノリスケ そういう女になるために、
いったいどういう努力をしたらいいの?
なかなか、見られることの切実さを
体験できるのって、少なくない?
ジョージ それがね、パーティなのよ。
パーティで美しくふるまえる女は、
いい女ですっ。

(つづきます)

2001-06-03-SUN

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