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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

恋愛の話しましょ。その4
無駄じゃないって、言ってほしい。

ノリスケ 恋愛をしない女の人っていうの、
何人か見てきたよ。
つねさん 超忙しくってー?
ノリスケ 理想が高いの。
それをずっと言っているんだけど、
結局、ずーっと誰とも長続きせずに、
歳をとってしまって、
ひどいことになってる。
ひどいことっていうのは、
惨めだって、周りから見ると
思える人になっちゃった。
ジョージ あー。
つねさん それは、なんか……
ノリスケ 選んでひとりでいるんじゃない、っていう、
なんかね、なんだろう?
ジョージ でも、あれだよ、人と、
他人といっしょにいるってね、訓練だよ。
つねさん うん。
ジョージ 努力しないでは……
ノリスケ いれないね。
ジョージ だって、人を好きになるっていうのも、
努力のたまもので、訓練だもの。
ノリスケ うん。そっか。
ジョージ で、いい訓練を、自らすすんで積まないと、
ぜったいチャンスがやってきても、
つかめないよね。
ノリスケ うん。
ジョージ むかし、よくね、始まりがあるから
終わりがあるんであって、
始まらなかったら終わらない、
って言ってたことがあるんだよ。
つねさん 宝くじみたいなもんだね。
ノリスケ 買わなきゃ当たらない(笑)。
ジョージ で、つきあい始めるから、
おつきあいが終わるわけであって。
だから、つきあい始めなければ、
終わることもない。って。
これって、いわゆるあの、
セク・フレ感覚であったり、
あるいは、私は恋人はいないの、
ボーイフレンドがいればいいの、
友だちがいれば、それでいいの。
で、下手すると、友情だって
始まってしまえば終わってしまうから、
友情もいらないの、
とかってのといっしょなんだろうと思うのね。
ノリスケ ああ。ああ。
ジョージ だけど、なんでも終わりは来るんだろうと
思うんだよね。だけど、終わりが、
すべて悪いことではないの。
終わりも自分の糧にしていくことが、
できる自信があればね。
だから、たぶんね、あるていど年取ってから、
恋愛ができない人っていうのは、
ろくでもない別れ方を、
ずーっとしてるんだと思うよ。
あの、終わりだけは、しっかりしようと思うもん。
わりと若いころって、
諦めてしまうことが、
終わりの始まりだったりとか
することが多かったんだよね。
ノリスケ はぁー。
ジョージ 諦めが、終わりの理由ではないからね。
諦めて終わるぐらいだったら、
憎しみ合って終わったほうが、
まだ学習機能が働くわけだよ。
つねさん ああ。僕、諦めてたから。
学習してなかった。
ノリスケ 諦めるにもさ、いい終わらせ方って、
やっぱりあるじゃない?
ジョージ あるね。
つねさん 僕は、何が怖かったかって、
疎遠になっても、ふっと会って、
お? 久しぶりー、って言えることあると思うけど、
けっこう別れたら、
もうそれで終わりっていう人って、多いじゃん?
ジョージ そーね。
つねさん そうなるのが、やだったりとかしたからね。
だから、少なくとも僕は、
その人のこと、すごく好きだった時期があるから、
忘れたくないわけよ。
もちろん憶えてはいるんだけど、
たとえば、それが継続して、
たとえば、それが友情に変わるのであれば、
すごく、それはいいことかなー?
って、思ってた時期はあった。
結局、深手を負う前に? なんか、
こっちから身を引いたら、
僕のほうが、そういうふうに接しやすいじゃん?
うん。っていうんで、なんか、
ものわかり良く、
別れ話を出してた時期はあったよ。
ジョージ んー。そうだね。あとは、
色々ひとりで考えすぎて、
めんどくさくなって止めちゃったことはあるな。
つねさん ああ。
ジョージ つきあい始めてね、軌道に乗りはじめるとね、
その人といっしょにしたいこととかね、
いっぱい出てくるんだよ。
ノリスケ くるね。
ジョージ うん。それでね、なんでもっと前から、
知りあってなかったのかしら? って。
ノリスケ ハハハハハハ。
ジョージ と思うんだよね。
んで、あんなこともしたくって、
こんなこともしたくって、
でも、そういうことっていうのは、
1年にひとつずつくらいしか、潰せなくって。
そしたら今、20あるっていうことは、
20年いっしょにいないとダメなの?
とかって思ったんだよ。
ノリスケ ハッハッハッハッ。
ジョージ で、じゃあ、20年後の僕って、
どうなんだろう? と思ったら、
えーッ?! めんどくさいなー、とかって思って。
んで、やめにしましょっ! って。
ノリスケ やめちゃったんだ。
ジョージ けっこう昔の話だけどね。
ノリスケ 今だったら、それ、違うでしょ?
ジョージ 今は我慢できるね。
ノリスケ ねえ? 楽しみにさえ、なる。
ジョージ でも、すーんごいいっぱい、
したいことあるんだけど。
やっぱり、ねぇ? いろんな手前があって、
できなかったりとかもするでしょ。
ノリスケ だって、旅行だってさ、
1年に1回か2回、
行ければいいほうなわけだからさ。
ジョージ そう、行きたいところはね、
世界中に、やっぱ4、50はある。
そうすっと、40年かかるぞー、
とかって思うとね。
で、そのうち増えてくるわけでしょう?
行きたいところが。
おー、80歳になっちゃうじゃん、ってね。
お気に入りのところにも、
何回も行きたいしね。
ノリスケ それって、一生かけても行けないよね。
つねさん あ〜、確かにそうだね。
ジョージ あとね、つきあう努力でいうとさ、
役割分担てこと考える。
あのさ、僕らのつきあいっていうのは、
あんまり役割分担を
はっきりさせないおつきあいでしょ?
ノリスケ うん、うん。させてないね。
つねさん それこそ、ほら、子供とかいないから、
お父さんである必要がなかったり、
お母さんである必要がなかったりとかするから。
ノリスケ 得意なことは、自分でやるけど、
みたいな感じはあるけど。
つねさん うーん。例えば、彼のために料理を作る、
あなたがいたりとかー。
ノリスケ 自分で作ったものが、
いちばん美味しいと思ってるから(笑)。
つねさん だから、好きなことをすすんで、
分担してやるっていうのは、あるよね。
ジョージ 逆にそれが、男の人と女の人の関係では、
難しいのかもしんないよね。
女だからこれをやれ、男はこれをやれ。
社会的にいわれている役割分担を、
演じ続けるということは、
自分たちなりのおつきあいじゃなくて、
社会が求めるおつきあいを演じているわけだから、
疲れるだろうね。
ノリスケ きっとね。
ジョージ だから、おつきあいしながら、
自分がほんとうにしたいのは、これです、
あなたがほんとうにしたいのは、何なの?
でも、好きなことばっかりやってたら、
両方がしないことが
いっぱい増えてくるわけだから、
やっぱり、両方が好きでもない、
得意でもないことを、
どうやって分担すればいいのでしょうか?
っていうことを考えればいいのかもしんないね。
ノリスケ ああ……そういう努力、僕、30代になってから、
やっと、できるようになった。
話がちょっと飛んじゃうかもしんないんだけど、
僕、20代の10年間ってさ、
ほとんどさ、恋愛らしい恋愛はしてないの。
とても忙しい会社にいて、
そこで忙しくしていることで
ごまかしてたのね、色んなことを。
出張も多かったから、
四六時中一緒にいるような恋愛は、
できないもん、って。
で、その間にしてた恋愛っていうのは、
……恋愛と言えるかどうかわからないけど、
「誰かを好きになること」でしかなかったの。
ああ、だから、みんながさ、
もうとうに昔にやってたことを、
20代にやってたわけだよ。
ノンケを、……友達を好きになって、
その「好き」という気持ちだけが
僕の支えだったの。
ジョージ あ〜〜、苦し〜。
ノリスケ で、何にもできないじゃない?
とにかくできることは、
お友達になることぐらいなんだよね。
恋人にはなれないわけだから。
ジョージ 苦しい〜〜〜。
ノリスケ 他にはありえないような、
いい友だち関係になろうと思って、
そのために努力をしたんだけど、
それにはとても時間がかかったの。
恋愛感情をなるべく押さえて、
友だちとして接して。
向こうにも、大事な友だちだと思わせるような、
努力って、とっても大変だったんだよね。
ジョージ あ〜ん、苦し〜〜〜。
不倫以上に苦しい。
ノリスケ とっても大変だったんだけど、
それをね、二丁目に飲みに行くようになったときに、
ああ、いままでの10年って
無駄だったのかな? と、思っちゃった。
つねさん それ、無駄じゃないよ。
ノリスケ もったいないとは思う?
ジョージ 無駄ではないけど、
ちょっともったいないかなー。
ノリスケ 無駄じゃないよね。そう言ってほしい。
つねさん 無駄じゃないけど、空回り?
ノリスケ ほーんと、空回りだよね(笑)。
あれは、何だったんだろう?
あの10年は(笑)。
じゃあ、でも、もっと早く
そういう世界に出てたら
何か変わったのかな? と思うと、
……まあ、変わったんだろうけど。
もうちょっと上手に恋愛してたのかな?(笑)
ジョージ そうだねー。
でも、この世界くらい、
残酷な世界はないかも知んないよね。
ゲイの世界に関しては、
どんなに努力したって
無駄なことがいっぱいあるんだよ。
(つづきます)

2001-06-14-THU

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