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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

賢いレストラン。その3
クロークを使いましょう。

ノリスケ レストランの予約のときには
目的を伝える、と。
つねさん あ〜、たとえば、宴会とか?
ノリスケ 宴会て。そういうんじゃなくってさ、
もうちょっとオシャレなさ……
誰かの誕生日だとかさ?
ジョージ うん、うん。
ノリスケ 結婚記念日で夫婦で行く、とか?
ジョージ うん。ね。たとえば、
「2人で行きます」
とだけ伝えて予約を入れるとうのが
じつはいちばんタチが悪いのよ。
デートなのか、ビジネスなのか、
あるいは友だちなのか、ということは、
大事です。
つねさん 2人っていうだけじゃ、
どういう2人かっていうのが、
向こうに見えないわけよね。
ノリスケ そうだよねえ。
ジョージ でね、たとえばね、正直に言うのがいいにしても、
「初めて電話をかけるんです、
 どういう雑誌を拝見しました」
っていうのは、いいの。
つねさん 「女の子を口説いて、
 その晩一緒に初めて泊まろうと思うんで」
とかって正直は?
ジョージ 良くないですっ。
つねさん じゃあ女の子が
「今度つきあい始めた男の子が、
 けっこう金持ちみたいなんで、
 ちょっとふんだくろうと思うんです」
って、言っちゃ……、
ジョージ いけませーん(笑)。
ノリスケ たとえば、これはどう?
男の子のほうが、今晩、
3年つきあった彼女にプロポーズをします、
って?
ジョージ あ、それは大丈夫だね。
ノリスケ 言ったほうがいいよね。
つねさん なんで?
ノリスケ お店を味方につけることが出来るじゃん。
ジョージ でも、それは、
最後の最後に言えばいいんだよ。
予約受けて……
ノリスケ いきなり最初に言っちゃダメ(笑)?
ジョージ すいませんっ! プロポーズするんですけどっ!
つったら、向こうも困っちゃうからね。
はーっ? よそでおやりになった方が……(笑)
ノリスケ ちょっと荷が重いよね。お店としてはね(笑)。
そういうのも上手に伝えないとね。
ジョージ そう。だから、お店側として
欲しい情報っていうのは、
何時に、何人が、
どういうタイプのテーブルを欲しがっているのか?
っていうことなの。
つねさん あ、そっか。たとえば、
お座敷がいいのか? とか。
ノリスケ レストランにお座敷ないでしょ!
ジョージ ていうか、
目立つ場所がいいのか、
それとも隠れた場所がいいのか。
会話は弾みそうなのか、
弾みそうじゃないのか、とかね。
たとえば、大切な取引先の方を
お連れしたいのですが、っていうと、
ものすごく緊張してるだろう、
会話は弾まないんだろうな、と思うよね。
で、そんなお客さんを
大っきいホールの真ん中のテーブルに
ポツンと置いたら、
それこそ拷問みたいなもんだから。
そうすると、角の、
あんまり目立たないところかなんか?
あるいは、
「そちらのお店で待ち合わせになるんですけど」
っていう風に言えば、
どこから見ても分かるように、
目立つ場所をくれたりとかね。
つねさん あ〜。
ジョージ だから、そのお店に、
自分をこういう風に扱ってほしいという情報を、
どれだけ正しく与えられられるか、
みたいなこと、すっごーい、大切。
予約の電話が終わったときに、
レストランの楽しみの半分は、
保証されてるかされてないか、
ていうくらいのものなのよ。
ノリスケ お〜! その感覚はなかった。
つねさん 僕も、ぜんぜんなかった。
や、予約って、すいません、
会社の連中と行くんですけど、
20人で、とかっていう(笑)。
ノリスケ 直接行ったら無理かも知んないから、予約する。
そういう予約しか、したことなかった!
つねさん そうそうそうそう。
ジョージ そうなんだよね
シートを確保するために
予約の電話をするんじゃなくて、
自分はこういう風に楽しみたい、
っていうのを伝えるために
予約の電話する、って考えてね。
ノリスケ うん。
ジョージ 予約したお店に、一緒に行くタクシーの中で、
いったい今日はどんなお店で、
どういう風にもてなしてくれるのか、
不安で仕方がない移動って、やじゃない?
ノリスケ やだ。
ジョージ 人は何で馴染のお店に行くのかっていうと、
もう、行く過程で、どこに座らせてもらって、
どういう料理が出てくるか分かるから
行くわけだよね。で、初めて行くお店でも、
そういう感覚は、どっかに、
安心材料として残ってれば楽しい。
そのための、予約です。
つねさん そうだよね、確かに、それこそ、
デートとかで行くんだったら、
ある程度、自分が優位に立たないとね。
余裕あるとこ見せれるわけだから。
ノリスケ うん。
あのさ、レストランのマナーで思うんだけど、
時々さ、一緒に何人かで行くとさ、
入り口で、ちょっといいレストランだと、
コートとか荷物をお預かりしますよ、
って言ってくれるじゃない?
ジョージ うん。
ノリスケ だけどさ、なんか、けっこうな割合で、
3人いると1人ぐらい、
「あ、いいですいいですいいです」つって、
コートとでっかいカバン持ってくの(笑)。
ジョージ そうなのよ、やなんだよね、あれ。
何なの? って思うよ。
んで、そういう人に限って、
中にぜったい貴重品入ってないような
カバンなのよ。
ノリスケ でも、貴重品っての、難しくってさ。
男でも女でも、お財布ってけっこう大きくて
サイフだけ持ってポケット入れてく、
っていうのも、こう、妙なもんだし。
お財布ごと、預けちゃってもいいものなの?
ジョージ 預けちゃっていんじゃない?
僕の場合、カバンそのものが
貴重品の場合が多いんで。
ノリスケ きゃー。ヒヒヒヒヒッ。
つねさん ぱーんっ(殴る真似)。
ジョージ だって、そんなこと言ったら、ねえ?
毛皮のコート預かるっていうのは、
貴重品そのものを預かってるわけでしょ?
同じよ。
ノリスケ それはそうだよね。
信用して預けたほうがいいよね。
ジョージ あのさ、冬のニュー・ヨークとか
行くといいよー、レストランが。
いいレストランには、
いいクロークの女の子が立ってて、
上等なお客が、いいコートとか来てくでしょう?
で、モデル志望の女の子とか女優志望の女の子は、
お金を持っている社会的地位の高い人たちに
会うきっかけが、いちばん多いわけなのね。
クロークっていうのは。
つねさん あ、うんうん。
ジョージ で、しかも、渡されたカバンとか帽子とか
コートとかを触れば、
ほんとにその人がどういう職業なのか、
分かるでしょう?
だから、そういう、上昇志向の高い、
きれーな女の子がいっぱい勤めているのよ。
で、そゆときに、
車の中にコート置きっぱなしにしてきたら、
もったいなかったかな? と思うのよ。
ノリスケ やだわん。
つねさん ま、ね、それなりの服を
着てきましょうね、ってことよ(笑)。
ジョージ そうだよ。
ノリスケ うん。
ジョージ 初めて行くレストランでね、
私は年収いくらで、
ゴールド・カードを持ってます、
っていうのは、
いちばん最初には言えないわけじゃない?
つねさん あ〜。
ジョージ で、お店の人にとってみれば、
このお客さまは、いいお客さまなのかどうなのか、
っていうのを、見極めたいんだよね。
そうするとやっぱり、
カバンとかコートとかを見るよね。
女の人だったらバックとかね。
ノリスケ そっか。
ジョージ 上着、ジャケットを着ていって、
んー、テーブルに座ってから、
しばらくして暑くなったから、
っていってジャケットを脱ぐ人いるでしょ?
ノリスケ うん。
ジョージ あれは、あんまりよろしくない、よね。
ノリスケ あ、そうなの?
ジョージ 男の人の場合だったら、
けっこう許されるだろうけど、
女の人だったらば、
んー、たとえばジャケット着て、
脱いでもいい格好してるんだったら、
最初にジャケット預けちゃいましょう。
つねさん あ〜ん。
ジョージ その方が、ずっとスマート。
ノリスケ ふんふんふん。
ジョージ で、そんときに、
ちょっと上質のジャケットを着ていけば。
つねさん じゃあ、あの、年収が高くなくっても、
ゴールド・カード持ってなくっても、
ちょっと……
ジョージ この人は慣れている人だな、ってわかる。
ちょっと欧米っぽい、洗練されたマナーが
わかってる人だな、って、見てくれるよ。
ノリスケ うん。
つねさん だから、ちゃんと、するところではする、みたいな?
ジョージ そう。ジャケット渡したときには、
この人は上手にナイフ・フォークを
使ってくれるんだろうし、って……
大変だね、ジャケット渡しちゃったら、
上手にナイフ・フォーク使わなくちゃいけないから、
大変ですけども、それは頑張ってくださいっ。


(つづきます)

2001-07-03-TUE

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