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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

賢いレストラン。その7
銀座に馴染みの寿司屋を持つ女。

ジョージ レストランによって、
エレガントを目標としてるところと、
粋を目標としてるとこって違うじゃない?
ノリスケ お〜。
ジョージ で、粋に食べなきゃいけないところで、
エレガントに食べようとするのも妙よ(笑)。
寿司屋で、じっくりじっくり時間をかけて、
味わいながら頂いては、ダメよ。
寿司屋、天ぷら屋、蕎麦屋。
これは、30分から40分で、
食って出なきゃ、ダメよね。
女の人で、どうだろう?
程度のいい馴染みのお寿司屋さんを
一件、持っておくっていうのは?
ノリスケ かっこいいと思う!

いいお寿司屋さんの
6時半から7時半ぐらいの間って、
あんまり混んでないんで。
つねさん へええ。
銀座あたりの有名なお店でも?
ジョージ 大丈夫よ。
予約もなんにもしなくていいから。
入って、
「すいません、こういうところ
 慣れてないんですけれども、
 今日は美味しいのを
 お任せでちょうだいしたいので」
って、丁寧に言います。
つねさん 予算は? お任せって怖くない?
ジョージ ううん、そう言えば、向こうがね、
「予算これぐらいになってますけど、
 それでいいですか?」って言うよ。
つねさん ああ、言ってくれるんだ。
ジョージ で、言わなかったら、
そのお店はあんまり信用できないな、
と思っていい。ま、二度と行かなきゃいいわけで。
つねさん それも、じゃあ、お勉強なんだ。
ジョージ そう。で、じゃあ握るね、
って言ってくれたら必ず、
「あんまり時間もないもので、
 せかせるようで申し訳ないんですけれども、
 30分くらいでお願いできませんか?」
って言うの。そうすると、
「このねえちゃん、分かってる!」
って、思われるよ。
ノリスケ 1時間いちゃ、いけないの?
ジョージ だって、おねえちゃん座ってるその1席、
1時間いられちゃったら、
1万5千円、2万円払ってくれるお客さんが
後で来たとき入れない。
だから、30分なら、いいっ、
ってことになるの。
つねさん は〜。
ジョージ そうするとね、ふつう、ここ座ったら
1万円かかるんだけど、
7千円で帰してやろうじゃないか、
って、なると思う。
ノリスケ おお〜、粋だねー。
つねさん お寿司屋って、
けっこうそういうとこあるよね、なんかねー。
ジョージ うん。それで、適当につまんでね。
たぶんお腹いっぱいになんないよ。
お腹いっぱいになんなかったら、
帰り駅の立ち食いそば食えばいいの。
それで、そういうのをね、
そのお店は気持ちがいいなーって思ったら、
1ヶ月に1回、自己投資だと思って行けばいい。
銀座に寿司の馴染みのお店を
1軒持っているOLって、
かっこいいよー、かっこいい!
ノリスケ かっこいいーっ!!
ジョージ それで、そのうちね、
自分の上司かなんかがね、
困った困ったって言うんだよ。
「困った困ったー、今度、会社の接待で、
 寿司屋探したいんだけど、高いしなー」
ノリスケ (声色変えて)
「課長、私ちょっとお馴染のお店が1軒あるんで……」
つねさん うわーっ(笑)。
ノリスケ かっこいいー!
ジョージ 電話してあげるのよ。
「すいません、私の上司なんですけど」
「ああ、いいよ」
それで予約がとれたら、
女が上がるってもんだよね。
ノリスケ 上がるっ!
つねさん あ〜。かっこいいね。
ジョージ フランス料理のお馴染のお店、
1軒持ってるのとは意味が違うから。
んで、銀座で店を構えてる
オヤジさんっていうのはね、
すーごい色んなこと知ってるの。
ノリスケ ああ、そう。
ジョージ うん。んーと、たとえば、
鰻を食うんだったら、あそこが美味いとか、
天ぷらだったら、あそこがいいとかね。
それと、んーと、名のある寿司屋さんだったら、
それこそ、フランス料理屋のオヤジさんが、
定休日にどこそこのメシに行こう、ていう、
いいフランス料理屋知ってたりとかするんだよね。
で、その板前さんに色んなこと聞いて、
紹介状書いてもらって、
あるいは電話入れてもらって、
いろんなところに行けばいい。
ノリスケ 世界が広がりそう!
つねさん そしたら、芋づる式で。
ジョージ そうそうそう、ぜんぶいただき!
ノリスケ 雑誌ではない情報収集ができるね。
ジョージ うん、そうなんだよね。
つねさん は〜。
ジョージ それで、そうやって人間関係を作ってるのが、
うちの(会社の)お嬢さんに、いるの。実際。
うちの秘書に1人、そういうのがいるの。
東京のスター・シェフを
みんな芋づるで抱えているって女がいる。
ノリスケ すっげー。
会ったことないけど、
かっこいいにちがいない。
つねさん ぼく会ったことある。
あのひと、脇屋さんを
「ワッキー」て呼んでるよね。
ジョージ そう。トゥーランドットの。
つねさん あと、なんだったっけ?
ニュー・ヨークのノブが取れる女。
ジョージ そう、ノブさんも、
日本に来ると必ず会って帰る。
ノリスケ 恐ろしい女。
それ、自分で開拓したんだ?
ジョージ そう、自分でやったんだよ。
開店してから店が忙しくなる前か、
あるいは昼飯時の終わりかけ。
ほんの一時を狙って、行くの。
ノリスケ 最初、勇気いるよね。
雑誌とかの情報で、
えいやっ、って入るわけでしょう?
それも、ひとりで!
ジョージ うん。ガラガラガラって開けると、
最初、あ、女がこの時間に入ってきたー、
と思って、すっごいイヤな顔されるよ。
ノリスケ それに負けずに?
ジョージ 負けずに入って。
たとえばランチの終りかけだったら、
「昼ご飯を食べそこなったもんですから。
 ただこの後、どうしてもすぐ、
 帰らないといけないんで、
 30分しか時間がないんですけども、
 適当にお任せで」って言って。
あ、ねえちゃん、分かってるじゃないの、と。
おいらも早く昼休みが取りたいんだよ、
じゃ、すぐ帰ってくれるんだったら、
まあ、残った、こんなところの
中落ちのいい部分と、
ま、ウニもちょこっと入れたろうかなー、
とかって思いながら、食べさせてくれるのよ。
つねさん すごいねー(笑)。
ジョージ で、2、3回続けると、3回目ぐらいに、
あ、このねえちゃん、確信犯だな、
って思うんだよね(笑)。
つねさん でも、それはそれで、向こうも、
なんかもう……
ジョージ うん、ま、いっか、
かわいいじゃないの、って。
ノリスケ 俺も、だまされちゃったな、って(笑)?
ジョージ そうそうそうそう。
そしたら、そのオヤジさんって、
店終わって銀座の飲み屋かなんかで
飲んでるときに、
「いやー、うちの店に
 変わったねえちゃん最近来るんだよ。
 今度、おめーんち紹介するから、
 よろしくね」っていうことになるのよ。
つねさん そういう人、ふえるといいね。
ノリスケ でもねえ、なかなかね、
実際にやるって人は、
そんなに多くないのかも。
ジョージ うん、でも、そういう人が
いっぱい増えたほうが、
変な雑誌かなんかに出るお店ばっかりを信じてる、
みたいな状況が変わって、いいと思う。
だいたいね、飲食店で
1ヶ月も2ヶ月も予約が取れないっていうのは、
変なんだよね。
で、そういうお店を作っちゃう風潮よりは、
ずっといいと思うんだ。
(このテーマはこれにておしまい。
 月曜日からまた別のテーマで掲載しますよ。
 お楽しみに!)

2001-07-08-SUN

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