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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

生きていく私。その1
かわいさの消費。

ジョージ この(ゲイの)世界に生きてると、
恋愛っていうのは、クセなのかな? と思うよ。
ノリスケ 癖?
ジョージ 癖。だから、同棲癖のついた男とか、
別れ癖のついた男とか、
不倫癖のついた男とか。
つねさん うん、すごい多い。
ノリスケ あ〜。
つねさん あと、暴力男にひかれる癖、とかさ。
ジョージ ひっかかる男のタイプが、
みんないっしょとかね。
つねさん そう。
ジョージ で、どうやって、
その癖のループから逃げ出すか、
のような感じはするけどね。
つねさん けっこう、そういう人だって、
逃げれないんだよね。
逃げようとしない、みたいな。
ジョージ そうするともう、
永遠におんなじことの繰り返しだったりするの。
ね。
ひどい恋愛をして、別れて、
新しい彼が出来たのに、こう言うのよ。
「いつもと違ったパターンだからヤダ」
って。
「だって、今までと違うから、
 今幸せなんじゃない!?」て訊くと、
「嫌。なんか居心地が悪い」とか言って。
ノリスケ じゃあなんで別れたんだ〜〜!?
ジョージ ねー。
つねさん で、それがやっぱり、男女もそうだけど、
刺激が、なんか勘違いして、
アドレナリンが出ちゃって、
これは恋かも愛かもー、みたいな?
ジョージ ねねね、いい子っていうのがいて、
逆に悪い子っていうのがいて、
たとえばね、人の口にのぼるとき、
「いい子なんだけどねー……」
って言われるのと、
「ああ、あの子は悪い子なんだけどねー」
って言われるのと、どっちがいい?
どっち側の人生の方が、チャーミング?
ノリスケ 悪い子なんだけどね、の方でしょう。
ノリスケ そうね。
ジョージ でも、それって、大変じゃない?
ノリスケ 大変だあね(笑)きっと。
つねさん (ジョージに向って)
でも、悪い子って言われてたほうでしょう?
あなた。
ノリスケ 言われてたの?(笑)
ジョージ だって、悪いこといっぱいしたもんっ。
ノリスケ どういうこと?(笑)
ジョージ 別にみんなから好かれなくってもいいや、
と思ったから。
つねさん 俺、好かれたかったなー、好きな人に(笑)。
ノリスケ あなたがみんなを好きだから?
つねさん たいがいの人(笑)。
ジョージ んー、僕的には、んー、どゆのかな?
生きていくうえにおいて……
わ、すごい重い言葉、
「生きていくうえにおいて」。
つねさん 人生(笑)。
ジョージ わー、人生とかそういうんじゃなくて(笑)、
んと、基本的に、やっぱり、
人気者でいて、ちやほやされたいじゃない?
ノリスケ うん。
ジョージ ね?
ノリスケ うん。
ジョージ で、やっぱり、その世界で、
スターでありたいんだよね。
で、この世界にデビューしたときに、
やっぱりかわいかったの。
ノリスケ あなたのいまのルックスみると
さぞや、って思うわよ。
積み重ねる前の、その、原形が?
ジョージ ウン。
ちゃーんと積み重ねてきたから、
今はもっとかわいいけどねっ。
つねさん ちょっとは否定せいっ。
ノリスケ ククッ。
つねさん だって、この人、かわいいよね、って言うと、
「当たり前でしょう?」とかって、
言うんだよ(笑)。
ジョージ でもね、なにがすごいってね、
僕とおんなじようにかわいい子が、
いっぱいいたんだよ、昔は。
いや、ま、今でもそうだと思うんだよ、
かわいい子はいっぱいいるの。
で、んと、僕より1年も2年も3年も前から
かわいいと言われ続けていた人たちも、
いるんだよ。
つねさん うん。
ジョージ だけど、その人たちを見てて思ったの。
それは、昔かわいかっただけの人なんだよね。
ノリスケ ふーん。
つねさん かわいくあり続けよう、と思ってない?
ジョージ みんなにとって、
かわいいかわいいと言われるような
かわいさっていうのは、
最初だけであって……
つねさん あきられる?
ジョージ そう。後からは、
他のかわいさがやってくると、
かわいくなくなるの。
つねさん 場所取られちゃうのね?
ジョージ そう! そういうのは、
いっしょうけんめい見てて、
私はかわいいだけでは、いけない!
そう考えたのよ。
つねさん あ〜。でもそれ、女の子も言えるよね。
ジョージ 思わない? 絶対、
かわいいだけじゃダメなんだよね。
つねさん それ、特化するわけね? 自分を(笑)。
ジョージ 最初、お店にちょっと
入ってたことあるんだよ。
ノリスケ (ゲイ)バーの店員さん
やってたってことね。
ジョージ お店のカウンターの中から外を見ると、
ほんとにかわいい子がやってきて、
かわいさを消費するだけ消費して
帰っていくんだよ。
で、かわいさをね、
誰が消費してるのかっていうと、
かわいい本人が消費してるんだよ。
ノリスケ ほ〜。
ジョージ ニコニコニコニコ笑顔ふりまいて、
なんか、愛想笑いして、
誘われたらイヤと言わずに、
いろんなとこついていって。
浪費してるんだよね。
ノリスケ う〜ん。
ジョージ かわいさっていうのは、ほんとに、
ほんとにそれを使いたいと思う人に
使ってもらわなきゃいけないのに、
自分で勝手に使っちゃうの。
つねさん 減っちゃうんだ。
ジョージ そう。減っちゃうの。
ノリスケ あ〜〜。
ジョージ それで、だめだ、だめだ、
僕はこんなんじゃだめだ、と思って、
自分ならではのかわいらしさを、
いっしょうけんめい考えたんだよ。
つねさん お〜。すご〜い。
ジョージ そうだよ。賢かったから!
ノリスケ ヘヘヘヘ。
ジョージ 経験豊富だったし。そうすると、その、
誰にも迎合しない自分がいちばん好きで、
自分がいちばん大切な自分っていうのが、
そこにいて、
それをかわいいと思ってくれる人にだけ
かわいさを売ってあげればいい。
ノリスケ んー……ふんふん。
それが「別にみんなに好かれなくってもいいや」
ってことなのね。
ジョージ そう。僕が自分で、
こういう部分をかわいいと認めて欲しい、
という部分を認めてくれない人にとっては、
僕はかわいくないんだよね。
つねさん は〜。
ジョージ で、最初はね、最初は、
それでもとんがってなかったから、
100人、人がいたらば、
30人とか40人ぐらいが、
それでもかわいいよ、って。
君はまだ若いんだから。
若いということは、わがままが許されて、
いいことだよね。うん、君はかわいい、
かわいい、って言ってくれてたの。
ノリスケ うん。うん。
ジョージ で、30になるとね、
もう、あんた、30になって、
そういうこと言っちゃダメでしょう?
ノリスケ うん。
ジョージ で、100人のなかの、
去年まで30人いたはずの人が、
15人ぐらいしかいなくなるんだよ。
ノリスケ うんうん。
ジョージ で、路線変更しようか? と思ったんだけど、
やめたんだよね。
いいや、今までこれでここまで来れたんだから。
ノリスケ フフフッ。
ジョージ で、40になった今は、ただ、
1人の人しか、いてくれないんですー。
つねさん ハハハハッ。
ノリスケ 今のオチはびっくりしたよ。
そこにいくのか(笑)。
ノロケかっ!?
ジョージ うそでーす。そのオチは、いま、考えましたっ。
こういうとこが、やなとこだよね。
いけず。
でもさ、そやって考えたことある?
自分て、自分て、何が売りもんなんだろう? って?
(つづきます)

2001-07-09-MON

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