APPLE
新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

カミングアウト。その2
カンのいい女には、バレる。

つねさん ブリーフって?
ジョージ あの、干してあるブリーフ。
ノリスケ ほ〜。
ジョージ あーれはねぇ……(遠い目)
ノリスケ 言いようもなく?
ジョージ 言いようもなく、ときめいたものよ。
あと、あの、家けっこう、
親戚の人とか近所の人たちとか来て、
お風呂入ってたんで、
脱衣所に脱ぎ散らかしてある、
いま脱いだばかりのブリーフの、
立体的なかたち。
もう、それ見ると、ムラムラ。
ノリスケ ハハハハハ。
つねさん でも、ムラムラって、僕、なかったよ。
なんか、ドキドキはしたけど、
ムラムラはなかった。
ジョージ それはもう、早めにぜんぶ
欲求を出し散らかしたからじゃない?
つねさん いやいや、小学校のときは、ぜんぜん。
全く。セックスのセの字も知らなかった。
ジョージ 小学校とか中学校のときに、
なんか、男女(おとこおんな)とか
どうとかこうとか言われたことあるよ。
ノリスケ 中学校になってくると、
女の子がさ、色気づくじゃない?
そうすると、分かる子が出てくる。
ジョージ 女のほうが分かるんだよね。
ノリスケ 鋭いの。「ノリスケは、誰々が好きだから」
みたいなことをパッと言ったりするの。
で、ほんとにそうなんだよ(笑)。
えっ? 何でわかんの、こいつ、
みたいなこと言うんだよ。
ジョージ そうなんだよね。
つねさん あ、僕は面と向かって言われたことないや。
ジョージ 僕、このまえ、久しぶりに地元に帰ったのね。
そしたら、Aっていう女の子がいるのよ。
まだ独身なんだけど。
ノリスケ うん。
ジョージ こいつとは、僕、幼稚園、小・中学校、
高校といっしょなの。
んで、そいつが、つき合う、
つき合うというかね、
色恋事はないんだと思うんだよ。
未だに処女じゃないかと思うぐらい、
そういうことはないんだけど、
そいつが友だちにする男っていうのが、
みんなホモ受けするやつばっかりなんだよ。
ノリスケ アハハハハ。
ジョージ しかも、どっちかというと、クマ系の、
短髪でヒゲ生えてて
ガッチリしたのが好きなんだよ。
で、この前、帰って、
そいつに「帰るわ」って言ったら、
「あ、じゃあ、私、人集めとくね」って。
集めてるのが……
ノリスケ みんな……
つねさん 初恋の人とか?
ジョージ 僕の、僕の、ああ、いいな、と
思ったやつばっかりなの!
そういうの、集めてるの!
それで、「久しぶり」って、
「おお、これ集めたんかー」っつったら、
その子が、「ヘヘッ」っつって。
「ジョージ君の喜ぶ顔が、私、見たかったの。
 いいでしょう? 今日のセレクションは」。
つねさん ハハッ! いや、いい女だねー。
ジョージ いいよー。でもね、「手出しちゃダメよ」って。
「はいはい」。言ったわけでも何でもないのに、
そうなんだよ。わかってるの。
ノリスケ いいじゃん。
そういうの、気が楽じゃん。
つねさん いいね。いいなー。
なんか、高校までの友だちって、
今ぜんぜん疎遠だから。
大学もないけど。
ジョージ で、そいつには、
「何で分かるの?」って聞いたの。
何だと思う? 何て言ったと思う?
つねさん 自分にフェロモンが
向いてこなかったとかじゃなくて?
ノリスケ 好きだったからずっと見てたとか?
ジョージ ううん、
「汗臭さをぜんぜん感じなかったから」
なんですって。
ノリスケ へー、フェロモンか。
ジョージ あの、思春期の男の子独特の、
油の臭いとか汗の臭いとか
ホコリの臭いとかがしなかったんだって、僕。
ノリスケ は〜。
つねさん あ、もう経験済みで、
ギトギトしてなかったんでしょう?
やっぱり、なんか、性的に満たされてない人って、
すごいギトギトしてるじゃん。
ジョージ そう。ぜんぜんギトギトしてなかった。
ノリスケ もう、普通に(笑)。さらりと。
ジョージ そう。普通。
つねさん 満たされてたから、欲求が。
ジョージ でも、そういうのって、
大人になってからの、小奇麗っていう部分で、
やっぱり受け継がれてるのかな?
って思うよね。
男と女の関係だと、やっぱり、
男が攻撃を仕掛けて、
一方的に女を引っ張っていかないと
いけないわけだから、
やっぱギラギラした何かが
出るんだろうと思うんだよ。
ギラギラ系フェロモンっていうの?
だけど僕らは、
どんなに攻撃をしようと思っても、
相手が攻撃される準備ができてないと
できないから、だから、どっちかっていうと、
潜望鏡で眺めている感じなんだよ。
で、どっかにおんなじ
香りがするのを見つけると、
ようやく焦点を合わせるわけ。
だから、やっぱり、
いわゆる男のフェロモンを出している状態とは、
違うんだよね。
ノリスケ 他の人には分かんないようにね。
ジョージ そう。
つねさん あと、たぶん、女の子に接し方も、
ぜんぜん違ったんだと思うよ。
ジョージ 優しい、とかっていうのがあるんだよね。
つねさん そうそうそう。あと、たとえばほら、
同じ接するにしてもさ、こう、
ついて来い、とか、そういうあれじゃなくて、
手を引っ張ってあげるとかさ。
ジョージ あと、ブスに優しいの。
つねさん ああ、俺もそうだった。
ノリスケ 優しいね、そうだね。
つねさん 俺、そういう女の子が好きだったもん。
ノリスケ ぼくもそういう女の子の友だち、
いっぱいいたよ。
つねさん 俺も。
ノリスケ 頭がいいけど、とかさ。
つねさん あっ、いっしょ、いっしょ、いっしょ。
ジョージ それは、それはもう、いっぱいいた。
つねさん でね、ツッパってて奇麗な女の子とね、
すっごい仲悪かったの、俺。
ノリスケ あ、ツッパって奇麗な女の子は、きついな。
つねさん 俺もイヤだったし、なんか。
ノリスケ そうだね。
つねさん なんか知らんけど、なんか、
蔑まれてるっつうか。
ノリスケ なんだろう? その気持ちって。
正当に評価されてない、こう、だから?
違うか? 相手の垣根の問題かな。
ジョージ 純粋に友だちになりやすいんだろうね。
ノリスケ そうだね。
ジョージ お互いに勘違いしあうこともないし。ね。
ノリスケ うん。
ジョージ それで、基本的に、
頭の良くない女の子って、苦手なんだよ。
つねさん ああ、そうね。
ノリスケ そうそう。
ジョージ で、勉強ができるできないの、
頭の良さじゃなくて……
つねさん うん、分かる分かる。
ジョージ 頭悪い子いるじゃん、だって、
こっちがさー、別に、
寝たいって言ってるわけでもないし、
つき合いたいって言ってるわけでもないのに、
「ねー、こんどデートしよう?」とか
「どこそこ行こう?」とか
「家に行ってもいい?」とかっていう
頭の悪い女、カンの悪い女?
ノリスケ カンの悪い女(笑)。
ジョージ カンが悪くて頭の悪い女。
ノリスケ そうそうそう。
ジョージ これはね、苦手っ。
ね、男友だちはどうだったの?
(つづきまーす)


2001-08-03-FRI

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