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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

オンとオフ。その2
パンツ自分で買ってる?

つねさん 行方不明ね。隠れ家、なんて、無理か。
ジョージ ま、一人暮らしっていうのは
隠れ家ってことだよね。
で、一人暮らしでなくていいし、
隠れ家でもなくてもいいから、
なんか、逃げ込む場所、
行方不明になれる場所さえ持ってれば、
それが趣味につながると思うんだよね。
たとえば、その場所が、
図書館であるとするならば、
その人にとっては読書が趣味になるのだろうし。
つねさん 映画館だってべつに構わないわけだし。
ジョージ そうそうそう。ね。
つねさん スポーツ・クラブでも構わない。
ノリスケ そこに新しい人間関係ができたりとかするとね。
ジョージ もっと楽しい。
つねさん そうだね。
ジョージ 嬉しいよ。
ノリスケ ゲイの世界は、
人間関係っていうのがそこにあるから、
もっとはっきりしてるけど。
ジョージ 二丁目っていうのは、
僕たちが行方不明になる場所だからね。
つねさん 遭難もいっぱいしてるけどね。
ジョージ 遭難、いっぱいしてるー。
遭難して帰ってこれない子たちとか、
いっぱいいるもん。
ノリスケ 難破船とかが(笑)。
ジョージ そう。人骨が山のように。
ジョージ で、中には、その、密林のほうが大好きで、
一般社会に出てこれなくなった、
取り込まれた人たち?
あ〜ん、富士の樹海のように。
つねさん ハハハハッ。
ノリスケ 物の怪とか(笑)。
ジョージ それ、いるんだよね。
つねさん いっぱいいる。
ジョージ いるんだよ。人間じゃなくなった子たちもいる。
どうなんだろう? ノンケの世界に
そういう場所ってあるのかな?
ノリスケ ただね、二丁目がオフにならない人もいるの。
働いてる人。
それは、ゲイでありながら、
手軽なオフの場所が
どこにもない人生になってしまうの。
ジョージ 逆の意味で、
みんなオンになっちゃってるんだね。
オフが裏返ってオンになっちゃってるんだ。
ノリスケ そう、オンになっちゃってる。
ノリスケ そっから逃げるためには、
外国に行くしかない。
ジョージ あー、そうだね。
ノリスケ ない。リゾートに行くしかないの。
ジョージ そうだね。でも、あれだよ、
東京に住んでると、行方不明になる場所って、
普通の人でも見つけられるかも知んないけど、
地方だと大変だと思うよー。
ノリスケ そっかー。
つねさん なおかつ、家族持ちだったりするとねぇ。
ジョージ も、大変だと思うよ〜。
つねさん やっぱり、なんか、ほら、
うちの兄弟とか見てたらさ
お盆には実家に帰るとかさ。
ジョージ そっちだよねー。
ノリスケ オフにならないよね。
ジョージ でも、どういうふうな手段使っても、
オフの生活っていうか、
自分の時間を獲得するというのはね、
自分の人生って、……ゲイとしての人生って
意味だけど、他の人生とちがって、
特別じゃない?
ノリスケ うん。
ジョージ んーと、まず、んー、締め切りがないでしょう?
つねさん うん。
ジョージ で、評価されることもないでしょう?
つねさん うん。
ジョージ 家族にとって、やっぱり締め切りがあるし、
会社も締め切りがあるし、
24時間で生きなけりゃいけないって言われたら、
やっぱり24時間だし。
だけど、自分の人生は締め切りないからね。
ノリスケ うん。
ジョージ 結果出さなくていいわけだし。
ノリスケ 仕事、時間はきっちりしてるほう?
たとえば、仕事中でも2時間あいたら
映画行っちゃおうみたいのって、ある?
そういうのはない? 仕事してる? ウィークデイ。
ジョージ わりときっちりしてるよ。
たまに午前中お休みとったりするけどね。
んー、わりとしっかりしてるよね。
会社に行くときは会社に定時で行って。
ノリスケ おお。
ジョージ きっちり残業したりとかしてるから、
わりとしっかりしてるよ。
あのさ、糸井さんみたいなタイプの人って
オンとかオフとかあるのかな。
ノリスケ 糸井さんは、オフがあるんだと思うよ。
どっちかっていうと、
オフがずーっと延長してる中に
ポンポンってオンがある感じじゃないのかしら。
ジョージ あー、わかる。僕の場合は、
わりとそれに近いかも知んない。
あの、んとね、オフな感覚と
オンな感覚っていうのがあるんだよね。
ノリスケ うん。
ジョージ で、オフの感覚っていうのは、
あくまで自分が中心にあって、
社会に属してるというよりも、
自分に属している社会の中で
生きている感じなんだよ。
ノリスケ そう、そうそう。
ジョージ だけど、オンの感覚っていうのは、
社会が別にあって、
その社会に属している自分が生きているんだよね。
ノリスケ そうそうそうそう。
ジョージ そうすると、そのー、
オンしか持っていないっていうのは、
自分で自分の社会が作れない人?
ノリスケ うんうん。
ジョージ だから、楽なんだろうね、ある意味ね。
ノリスケ そうしていくほうがね。
ジョージ よく、聞かれるの。
「いいですねー、いつも自由な感じで」って。
羨ましいですね、どうすればいいんですか?
っていう人に、
いやー、僕なんかこういうこともしてるし、
ああいうこともしてるし、
こうこうこうですよーって言うと、
「いやー、大変ですねー」
って言うんだよね。
ノリスケ 大変ですねーって(笑)。
大変じゃないよねえ。
ジョージ えー、なんでー? って思うよ。
ノリスケ オンとして見ると、大変かな?(笑)
それを「しなくちゃいけない」と思って
必死にがんばってやってるふうに見えるのかな?
つねさん だから、逆に言ったら、
見方を変えたらオンをオフに変えられる。
ノリスケ そうなの。スイッチング。
つねさん うん、だと思う。
心の持ちようで、おんなじことがらが、
それがオンになったり
オフになったりとかする。
ジョージ うん、それこそ、仕事しててね、
最近のファッションの傾向って、
こうこうこうでこういう感じで、
こういうふうな洋服はやってるんですよねー、
って言うと、
「どこで勉強してくるんですか?」
って言ってくるんだよね。
ん−、勉強っていうか、
僕、買ってますからね自分で、
って言うの。そしたら、
「えーっ!? 洋服自分で買うんですか?」
って言うんだよ、おじさんたちはね。
ノリスケ えーっ!?
ジョージ えーって、って? 言うと、
「家なんか、みんな女房が買ってくれるから、
 楽で仕方がない」って。
ノリスケ えっ!? 楽なの? それ。
ジョージ 楽なんだって。
ノリスケ イヤじゃーん!
ジョージ なるほどな、それじゃあファッションのこと
「勉強」って言うだろうな、って。
ノリスケ は〜、は〜。
ジョージ 僕らなんかは、
パンツ1枚くつした1足から
自分で買うわけじゃない?
ノリスケ そうだよ、くつした1足買いに行くのに
1日かかったりするんだから(笑)。
ジョージ そう。無くて悔しかったりね。
ノリスケ そう。
ジョージ 思ったのがないーっ。
それで、自分で自分のことを
全部しなきゃいけないから、
勉強じゃなくて、それは、
あたりまえなんだよね。
(つづきます)

2001-09-03-MON
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