APPLE
新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

お料理だいすき。その4
和定食を作ってあげたい男。

ジョージ お箸づかいね。
中国料理かなんか食べに行くとさ、
大皿でバーンと出てきくるじゃない?
それをささっと取ってくれる女の人って、
すごい素敵じゃん。
ノリスケ うん。役割っていう意味じゃなくてね。
だからそれは、男の子も、同じなのよ。
上手な箸づかいで、
ささっと取ってあげられたら
格好いいの。
つねさん ああー。
ジョージ だけど、取ってくれるのに、
お皿にてんこ盛りだとかね。
つねさん あーの、何も考えずに、
ガサッとがさつにやるヤツ?
ジョージ そう。あと、前菜三品盛りかなんかが出てきて、
その3つを綺麗に小皿に盛りつけてくれて、
そっと出してくれたら、
ほーっ! この女ーっ、かっこいい!
て思うもんね。
つねさん たしかにね。
ノリスケ お膳立てできると、かっこいいよね。
ジョージ それは、「料理」なんだよ。
ノリスケ そうか、それも、料理だ。
盛りつけは料理。
ジョージ ねっ?
つねさん おう。
ジョージ ま、かといって、コンビニで買ってきたお総菜を
盛りつけるのだけが上手な女っていうのは、
ちょっとやかな? って思うけど。
ノリスケ それは、寂しいかなー?
ジョージ でも、あの、スチロールのパックで、
そのまんま出してくるよりはマシかな?
つねさん まあねー。ま、2品ぐらいまでなら許せるけど、
全部はイヤよね、ってやつ?
ノリスケ んー、ぜんぶは困るね。
ちょっとごまかしで、プラスの2品だね。
つねさん 1品は、私これ作りました、みたいな、
主張があるメイン・ディッシュがあったら、
それはちょっと許せるでしょう。
ジョージ ねえねえ、好きな人のために作りたい料理って、
どんな料理?
ノリスケ 僕は、ごくごく普段のもの。ふつうのもの。
「いつ食べても、これはおいしいね」
っていうものを、食べさせたい。
つねさん 僕も、なんか、そんとき食べたいやつって感じ。
ジョージ ああ、僕、も、僕、ものすごいの……
ノリスケ あるの? とっておきがあるの?
ジョージ うん。みんながうなずく答え、
ひとつ知ってるよ。
つねさん なに?
ジョージ 「朝ごはん」。
ノリスケ ああ〜!
ジョージ 昔ね。昔、二丁目のお店でね、
今宵の恋の相手が見つかりました。
その男といっしょに帰るでしょう。
で、しばらくして、そのお店行くでしょ?
そうすると、マスターから
「どうだったの、あの人?」って聞かれるの。
そうするとね、僕の答えがね、
1、お水、
2、コーヒー、
3、フレッシュ・オレンジ・ジュース、
4、洋食、
5、和食。
そのどれかなのよ。
その5段階が、朝ごはんにあったのよ。
ノリスケ そ、それは、どういう……
あとのほうが、いいごはんだけど。
わかった。一夜を過ごした相手の評価が、
その「朝ごはん」なんでしょう!
ジョージ そうよ。
だって、もう、もう、いいわ、って、
二度と会わなくていい、って思ったら
朝起きて、「水でも飲む?」って言うの。
で、そん次はコーヒー入れてあげて。
まあ、可もなく不可もなくな場合には、
キュルキュルキュルって、
オレンジ・スクワッシャーでもって、
フレッシュのオレンジ・ジュース作ってあげて。
ノリスケ あ、それは、けっこうなことじゃない?
ジョージ でしょう? 出してあげるの。それが真ん中。
で、んー、あと、まあ2・3回はOKかなー?
っていう感じだと、トースト焼いてあげて。
ノリスケ シリアルとか?
ジョージ そう。スクランブル・エッグとかで、ね?
ノリスケ アメリカン・ブレックファスト。
ジョージ 洋朝食ね。
ノリスケ じゃあ、和食は……
ジョージ そりゃあ、ああ、もう、
一生いっしょにいたいわ、とかって思うと、
味噌汁作り始めるの!
ノリスケ アハハハハハ。
ジョージ ね?
つねさん 僕、水も出なかった。
ジョージ うふ、んー、だってー、なんかー、
そんな、朝ご飯作るヒマもなかったの。
ノリスケ 何それ?(笑)
ジョージ だってー、寝顔を見ているのが嬉しくって。
つねさん ハッハッハ! ……ウソつき。
ジョージ ウソだよ。
ノリスケ 僕、起きる時間が違うから、
朝ご飯作って置いてくるよ。
ジョージ 朝ご飯て、いいよね〜。
ノリスケ すっごい喜んでくれるよね。
一緒に住んでいるけど、
いつも作ることを習慣にしたり
義務にしたりはしてないんだ。
自分が食べるから2人分作って、
さめちゃうけど置いとくとかは、する。
そうすると、すっごい喜んでくれるのね。
意外なほど。
ジョージ 好きな男に朝ご飯をつくるのって、
幸せなことよ。
あのね、朝ご飯を作る空間っていうのはね、
何にもないんだよ。
まずね、起しちゃいけないでしょう?
つねさん ああ。
ジョージ だからね、そーっとね、ベッドを出てね、
テレビもつけられないしね。
つねさん 音楽もかけられないし。
ジョージ 音楽もかけられないんだよ。
音がないんだよ。
音のないシーンとした台所でもって、
トントントントンっていう、
音だけがするんだよ。
そうするとね、もうね、それだけでね、
盛り上がっちゃうの。
つねさん あれでしょ? ご飯が炊き上がるときに、
シューッて音がして(笑)。
ジョージ そうなの! シューッて音がするんだよ。
ノリスケ ちょっと聞いてくれる?
僕はそれで失敗しちゃったの。
つねさん ウハハッ。
ノリスケ もうね、作ってあげようと思ってね、
すっごい清らかな気持ちで(笑)。
つねさん はい。
ノリスケ で、メシ作ってあげようって、
お魚があったからお魚焼いといて。
お味噌汁を作って。
あ、ご飯炊いとかなくっちゃ、て思って。
うち、玄米なのね。
で、玄米、そのまま炊く時間なかったの。
つけ込まなきゃいけないから。
で、精米機があるの。
で、それを、なんにも悪びれずに、
精米機にジャッて入れて、
グォーッ! て(笑)。爆音!
つねさん 音がしちゃったのね。
ノリスケ あの、工事現場のような音が(笑)。
ジョージ それはダメ……
ノリスケ も、機嫌悪いの、起きてきて、
なにやってんのーっ? て(笑)。
ジョージ 起されて、って感じだよね。
つねさん 無理やりね。
ノリスケ 失敗しました。
お料理上手も、ちょっと、
精米機まであると問題だったわ(笑)。
(つづきます)

2001-09-27-THU

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