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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

お料理だいすき。その6
男の子の料理、女の子の料理。

ジョージ ものすごく、自分で得意な料理って、ある?
ノリスケ これは、食べさせれば、誰でも文句は言わない、
みたいな?
ジョージ 不意のお客様が来るなりなんなりして、
これだけならば、
いつ作っても同じように美味しく、
食べた人も美味しいと言ってくれる料理。
つねさん 定番みたいな?
ジョージ うん。
ノリスケ で、いつも材料が家にあるもの?
ジョージ ん、それは、どうでもいい。
ノリスケ お総菜系だと、ささみのチキンカツかな?
ジョージ いいねー、メシのおかずにもなるし
ビールのおつまみにもなるし。
ノリスケ 旨いんだよ、これが。
あのね、ダイエットしてたときにね、
ささみがいいっていうんで、
いろいろ研究したのよ。
ジョージ あ、そっかー。
……ちょっと待って、それじゃダイエットの
意味がなくない?
ノリスケ あはは、なかったわーん。
ゴハン進んじゃって。
つねさん 僕はねえ、茄子の煮浸しかなぁ?
ジョージ そうなのよ、この人の茄子の煮浸し、
美味しいの!
ノリスケ ほ〜。で、ジョージさんは?
ジョージ 僕はね、野菜スープ!
つねさん あっ、すーごい美味しいの。
ぜんぶみじんにした野菜のスープ。
ノリスケ 煮込み系得意?
前に、二人してうちに来て、
ローストビーフ焼いてくれたでしょう。
そのとき出た筋張ったクズ肉をさ、
煮込んで帰ってくれたのを憶えてる?
「このまま一晩寝かせてから、
 明日カレーにすると美味しいわよ」って。
で、やってみたの。
あんなに旨いカレーを食ったことがない、
っていうぐらい旨かったわよん。
ジョージ ふふ。基本的に煮込み料理好きなの。
あと、スパゲッティ。
つねさん なんか、洋食だよね。
ノリスケ スパゲッティはね、僕も得意。
つねさん 俺も作るけど。
ジョージ スパゲッティってね、
男の子の料理って気がしない?
女の子に作ってあげるとね、
すごく喜んでくれるよ。
つねさん あ〜。
ジョージ あのね、これはね、うちの会社、
キャンプとか行くんだけど、
そこでわかったの。
基本的に女の子たちが作ってくれたほうが
ありがたいお料理と、
男の子が作ったほうがおいしそうな料理が
あるんだよ。
つねさん へーえ。
ジョージ 手先をこちょこちょ使って作る
お料理っていうのは、女の子的なのよね。
男が作ったサラダとかって
美味しそうじゃないんだけど、
女の子が作ったサラダって美味しそうなの。
つねさん ああ、そうだね。なんかね、ちぎり方からね。
ジョージ そう。で、パスタとかっていうのはね、
じつは力仕事だから、
男の子が作ってあげたほうがね、
女の子は嬉しいんだと思うんだ。
ノリスケ 一人分でも、かなりのお湯を使うものね。
たーっぷりのお湯っていうのが、
コツのひとつだし。
ジョージ あれだよね、女の子的に、
お料理があんまり得意じゃないわ、
けど料理が上手になりたい、と思ったら、
まず好きな人つくって、
好きな男の子と2人でもって、
お料理するといいかもね。
ノリスケ ふん、ふん。
ジョージ で、分業もいいんだけど、
「これは私の担当」っていうほうがいいな。
特に、男の子に、
美味しいパスタの作り方を仕込んで、
日本でいちばん美味しいパスタを作れる男の子を
育てる女とかって、格好いいかもしんない。
つねさん ハハハハッ、面白いね。
ジョージ で、自分は、女の子の自分は、
たとえば、揚物作ったり焼いてみたり、
サラダ作ったりとかして、いろんなこまごまを、
男の子のお手伝いをメインにやってもらって。
つねさん 男の子には、そういう、大きなものをひとつ。
ジョージ そう、それをテーブルに並べて、
まずワイン飲むんだよ。
つねさん うん。
ジョージ ワインのある食卓って素敵だからね。
で、ちょっと小腹がたまったころに、
パスタが食べたい、って女の子が言うと、
彼が、「じゃ僕が作ってあげるよ」。
ノリスケ おもむろに。
ジョージ って、ささっとペペロンチーノかなんか
作ってくれるの。あーっ、すっげーいいかも。
つねさん あー、いいな〜。
ノリスケ あんたは食べたいだけでしょ。
ジョージ 逆にダメなのはさ、男の子に
「なんか、腹たまるの作れよ、
 パスタかなんかあるだろう」
って言われちゃう、二人の食卓ね。
でも、そうやって、ちゃんと男、育てたら、
……別の女の子に、俺のパスタ食いに来い、って
言ったりして。
ノリスケ アハハハハハハハ。
あたしが育てたのに!
ジョージ ま、それも緊張感ということで、いいかな?
つねさん ワハハハハ。
ジョージ 自分がお料理作る上においての約束事って何?
ノリスケ 化学調味料、使わない。
ジョージ おんなじーっ。
ノリスケ あとね、いいお塩。
ジョージ そっ、いいお塩。
ジョージ あとね、美味しいお野菜。
つねさん あ〜。違うね、野菜ってねー。
ノリスケ それは大きい。
ジョージ あとね、美味しいお水。
ノリスケ ああ、わかる。
ジョージ これね、あの、お蕎麦を茹でるとき、
お蕎麦とかそうめんを茹でるとき、
特にあの、乾いたお蕎麦。
ノリスケ うん、吸うからね。
ジョージ お水吸うでしょう?
でね、お湯にミネラル・ウォーターとかを
使ったりする人がいるでしょう?
ノリスケ ああ、ああ。
僕はしないけど……
ジョージ だけどね、これはね、
乾いた麺がお湯の中にスコーンと入った瞬間に、
表面に膜を張っちゃうんで、
水を吸わなくなるんだって。
だから、いちばんいいのは、
お蕎麦を湯がきましょう、
って思う15分ぐらい前に、
お蕎麦をバットに一列に張って、
そこにミネラル・ウォーターをガーッとかける。
それでね、吸わせるの。
ノリスケ ほ〜。
つねさん 半生みたいにするんだ。
ジョージ そうすると、柔らかーくなって、
それをお湯の中に入れて、
通常の茹で時間の半分で揚げるんだって。
ノリスケ あの、お米研ぐときも最初のお水、
いいお水にするほうがいいっていうからね。
ジョージ そうそうそう、いちばん最初のぶんはね。
思うんだけどね、お料理ってさ、
調味料っていっぱいあるじゃない?
お砂糖だとか香辛料だとか胡椒だとか、
甘いもの、苦いもの、酸っぱいもの?
あるんだけど、ほとんどの味って、
野菜から借りてくることができるんだよ。
ノリスケ あ〜。
ジョージ たとえば、タマネギいっぱい入れると、
お砂糖なんか入れなくても甘いでしょ?
つねさん うん、そうだね。
ジョージ うん。で、トマトいっぱい入れれば、
お酢なんか入れなくても酸っぱいの。
つねさん 酸味が出るんだ。
ノリスケ あと、うま味も出るよね。
ジョージ で、苦味が欲しかったら、ニガウリ入れたり、
若い野菜入れたりすればいいの。
で、辛味が欲しかったら……
ノリスケ ネギとか、唐辛子とか。
ジョージ そう、唐辛子入れればいいの。
だから、ほとんどの味は
野菜からもらえるんだけど、
塩だけもらえないの。
つねさん あ、そっかー。
ジョージ だから、お水とお塩にいいものを使って、
美味しい野菜を使えば、
ぜったい美味しい料理ができるのよ。
つねさん は〜。
ジョージ だから、野菜スープ好きなのよん。

(つづきます)

2001-10-01-MON

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