赤井 |
佐藤可士和さんがディレクションした
SMAPのCDの
「レコード屋に置くティッシュペーパー」が、
広告の賞をとりましたよね。
あれは、レジの横に置いておかれて、
店員さんもそのティッシュを使うし、
お客さんの目にも触れました。
ああいう、店員さんの
実用性の一部をかすめながらも、
お店のディスプレイとして置きたくなるような、
そんなものが、いいのかもしれません。
「荷造りテープ」とかは、どうかなあ?
書店員さんたちって、梱包することで
一日仕事の何分の1かを使っていますから。
書店員サービスというものは、「あり」ですよね。
毎日すごい数の本が段ボールで届くなかで、
ほぼ日ブックスの荷造りテープを使うなかで、
なぜか書店員さんのあたまに、
刻み込まれるという・・・。
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糸井 |
そういう「便利なもの」っていうのもありますね。
もちろん、大前提としては、そもそも、
本のなかにサービスをできるだけたくさん入れた、
という自信がなければいけないですよね。
商品力を増すことについて、
最もコストをかけるべきことなんですけど、
更に何か、と言うと、何だろうなあ?
・・・あ、そうだ。
スターバックスって、店員さんが自分で
ランバフラペチーノがどうの、とか、
黒板にメニューを自分で書きますよね?
あれって、人によって上手下手があったりして、
いいですよね。
たとえばの話、ホワイトボードの
ちっちゃいやつを置くったらどうだろう?
ある程度のことばは書いてあるけど、っていうやつ。
「あんまりおすすめしません」でもいいから、
そこにいる人に書いていただけるような・・・。
「自分にとってのベスト3冊」なんて
書いてもらっても別にいいわけだし、
それにホワイトボードにすれば、
ほぼ日ブックス以外のもののPOPを
それで作ってもかまわないじゃない?
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木村 |
それなら、本屋さん全体がよろこびますね。
TSUTAYAとかHMVとかで
店員さんが一生懸命書いているPOPも、
書きやすいような
オリジナルの体裁になってますもん。
たくさん書ける余白の多いものは、
歓迎だと思います。使いやすいし。
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糸井 |
極端に言うと、かっこいいワクがあって、
余白があって、「ほぼ日ブックスもよろしく」と
ちっちゃく書いてあるだけでも
いいぐらいですよね。
それでほかの本のPOPを
作ってもらってもオッケーで。
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赤井 |
いいですね!
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糸井 |
よく考えると、こちらの言いたいことも、
書店店頭では最低限でいいじゃないですか。
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木村 |
あんまり深く長く説明をしても、
すでに興味を持っている人が、
更にのめりこむということだけでしょうから。
もっと、本を読まなかった人たちも
手に取ってもらえたらうれしいですよねー。
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糸井 |
だから、短めに、ぼくたちが思う
ほぼ日ブックスに関するいちばん少ない情報を
出そうと思うと・・・。
要するにたぶん、
「本を楽しんで読む<時間>を、売っている」
ということになると思うんです。それを、
表現を変えてみるといいと思うんですけど。
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赤井 |
ほぼ日ブックスの創刊の言葉には、
「テレビを観るような、
ともだちと雑談するような、
『読む時間そのもの』を
サービスしたいと思います」
と、ありますね。
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糸井 |
いただいた感想メールでも
そこに反応してくれた人が多いんですよ。
その文章を短くするのが、
余白つきPOPとしては、
いちばんリアリティがあるかな?
ところで、参考までにだけど、
昔に朝日出版社でやってた
1週間に1冊本を出す企画「週刊本」って、
どういうキャッチフレーズでしたっけ?
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赤井 |
「思考のシンクロトロンが何とかかんとか・・・」
っていう、ものすごい長いものだったような(笑)。
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木村 |
(笑)すごい。
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糸井 |
わはははは。
あんまり長く説明してもなぁ。
それを聞くと、むしろいっそ、
ほぼ日ブックスの内容さえも言わずに、
「何用あって月へ行く。 ほぼ日ブックス」とか、
わけわかんないのをそれだけ書くのも、
ありだなぁ(笑)。
これはパクリだけどさ、山本夏彦さんの。
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木村 |
(笑)いいなぁ、それ。
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糸井 |
・・・まあ、ただ、
敢えてコピーライターとして言うと、
「90分ぐらいで読めてしまう」ということを、
お伝えしたい気分も、ありますね。
『ほぼ日刊イトイ新聞の本』(講談社)を
出版した時に、みんなが感想のメールで、
「すらすら読めたんですよ!」
ということに関して、すごくうれしそうに
反応してくれたんですよ。
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木村 |
そうそう。
「あっと言う間に読めたわたしって、
けっこうスゴイんじゃないでしょうか?」
って言ってくれたメールもうれしかった(笑)。
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赤井 |
「理解しながらすらすら読めた自分がかわいい」
みたいなのは、読書体験の中にあるでしょうね。
うれしいですよね、これは。
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糸井 |
あの感動って、
なんか自分でもわかるじゃないですか。
小学生の時に本を一冊読むと、
誰にということでもなく自慢したいような気持ちに、
なりましたもんね。
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木村 |
なったなった。
自分が進歩してる気持ちみたいな。
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赤井 |
そうですよね。
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糸井 |
90分・・・。それ、キーワードだな。
あ、わかった。
『90分を、わたしにください。』
っていうのは?
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赤井 |
いいですねそれ!
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糸井 |
・・・しかも、700円もください、と(笑)。
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赤井 |
わははは。
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木村 |
(笑)こらこら。
・・・ま、いちお、買ってね、と。
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糸井 |
『90分を、わたしにください。』
これ、いいんじゃないかなあ?
「ちょっとお時間いいですか?」
っていう感じが入っているし、
これ、どうも決まったっぽいですね。
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赤井 |
ええ。
『90分を、わたしにください。』
って、すごくいいと思いますよ。
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糸井 |
POPって印刷だけのことですから、
POPカードの大きさにして、
全部のタイトルの入っているものをつくったり、
「すこし詳しめ」のものもつくったりしながら、
『90分を、わたしにください。 ほぼ日ブックス』
とだけ書いた「お役立てください」という意味での
ちいさいホワイトボード的なものもつくって、
ぜんぶで名刺ボックスひとつぶんぐらいの
数のカードを、お店にあげると、いいよね。
これだと、お客さんのためでもあり、
書店のためでもあり、ほかの本のためでもあって
そのうえで、自分の本のためにもなるでしょ?
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赤井 |
うん。できましたね、これは。
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糸井 |
レコード屋さんのように、
先に読んでくださった店員のかたが、
空白の或るPOPに感想を書いてくださっても、
うれしいでしょう?
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赤井 |
ええ。
そうなると、ポスターをつくるとしても、
長々と商品説明をするよりは、
『90分を、わたしにください。』を入れて、
たとえば『個人的なユニクロ主義』の
表紙写真を大きめに出すとかいうほうが、
いいでしょうね。
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糸井 |
そうです、そうしよう。
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赤井 |
写真としてよくできていないと
ポスターって貼る気にならないし、
宣伝宣伝していたら、もう貼ってあっても
見る時に目がよこぎってしまいますからね。
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糸井 |
そりゃ、もう。
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赤井 |
書店にはってあるポスターって、
時には、壁をよごしているだけで
告知になっていない場合もありますから、
そういうのを避けて、
かっこいいポスターにしましょう。
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木村 |
わきわき。
ぼく、この一ヶ月で
10キロ体重が増えたんです。
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糸井 |
筋肉だけで10キロだもんなぁ。
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赤井 |
幸先、いいですよねぇ。
でかくなるって感じで。
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