まるで、NASAのようなメディアになりたい?

 第4回 90分を、わたしにください。



(じゃじゃん! 『ダーリンコラム』表紙だよ!
 思わず笑っちゃうほど「ほぼ日」な雰囲気のおさる!)


・わ〜〜い。わ〜〜い。
 『ほぼ日ブックスのご案内』が届きました!
 うれしいよぅ。さっそく寝転んで読みました。
 良いですよ〜。すっごくリラックスできました。
 (よしこ)

・思いがけなくほぼ日ブックスの小冊子を
 お届けいただきまして、ありがとうございました。
 本当にありがとうございました。
 さっそく、フワフワした気持ちで読みはじめました。
 ・・・文字がするすると入ること入ること。
 気が付かないうちにしばらく読みふけっていました。
 読もうと意識しないまま読み進んでいきます。
 理解したとか思う前にしみわたる感じで・・・。
 あまり意識していなかったのですが、
 印刷物となったほぼ日をこうして読んでみると、
 インターネット上の文字(全般)に対しては
 80%くらいしか身を入れずに
 読んでいるのかもしれないという気がしました。
 それから、片手でぴったり本がもてるのもいいですね!
 電車の中では片手はつり革を掴むことが多いので、
 片手操作はつねづね重要だと思っています。
 通勤の友としても、非常にたのもしそう。
 気分に合わせて本屋でぽっと手にとって、
 待ち合わせの間も読んでいて、
 相手に「おもしろかったよ!」と渡せるような
 (あっ、それは本の流通をさまたげますでしょうか)
 そんな感じの本になったらいいなーと思いました。
 ほぼ日ブックスの発行、楽しみに待っています。
 (純子)


みなさんこんにちは。「ほぼ日」のメリー木村です。

10月13日ぐらいから、『ほぼ日ブックスのご案内』の
プレゼントが、みなさまのお手元に届いているようです。
上記のように、小冊子を読んだあとの感想を、
たくさんいただいてます。ありがとうございますっ!
みなさん楽しく読んでくださり、うれしいです。

(※まだ届いていない場合もありますので、
  「当選しなかったのかな?」と思っているかたも、
  もうちょっと、期待してててくださいね)

今日は、みなさんのもとに小冊子が届けられはじめた
その10月13日(土)の夕方におこなわれた
「ほぼ日ブックスのための会議」の内容を、
しゃべりたてホヤホヤで、お送りしちゃいます。

創刊直前の気合いのせいか、短く集中した会議で
ビシッと「それで決定だ!」と言いたいリズムで
ものが決まっていく場合が多くなってきたので、
その興奮の一端を、共有していただきたいと思いました。

「書店という場に来る人にとって、
 親切なグッズって、何だろう?」
・・・これが、14日の会議の焦点でした。

ふつうに考えると、POPといって、
「ほぼ日ブックス、新発売!」とか書いて
本の近くに立てかけるものを作ることを
まずまっさきに考えるんですけど・・・。

でも、それで、いいのでしょうか?

「いままでやっているからやる
 という方法だけは取らないようにしよう」
と考えてきた「ほぼ日ブックス」ですから、
書店さんにお届けするものにも、
もうひと工夫したいな!と思ったんです。
ではさっそく、会議の様子をどうぞ。

(参加者は、糸井重里、朝日出版の赤井茂樹、
 わたくしほぼ日のメリー木村の3人でした)



<2階のジムでのトレーニングを終えてdarling登場>

糸井 ううう、キツかった〜〜。

ぼくらの位置づけができていないまま、
「みんながやってるからPOPをつくる」では、
書店さんから見たら
「スペースを占めるものが送りつけられてくるだけ」
だし、こちらからしても、
「思ったほどの効果をあげないありふれたもの」
に、なってしまいかねないですよね。

たとえば、出版ではない業界とかなら、
極端に言えば、営業がお金を使って、
商品そのものをタダで配りまくる、という
宣伝のかたちもあったりするわけです。
こういうことは、できっこないんだけど、
その無料の商品も、
『販売の場』を確保するための
コストとして計算してあるんだと思うんです。
それが、健康なことだとは
ぼくは思わないんだけど。

ぼくらにしても、
少ない予算のなかでやることなんだし、
販売促進のツールを配ることの動機と意味を
「いち」から、考えてみましょうか。
赤井 ええ。
「いち」から、の発想で
なんでも考えたいですね。
糸井 ぼくら、夢みがちだから、
「書店がよろこぶなら何でもしたい」
と思って、書店さんがよろこぶものを、
まるでアメ玉でも配るように
考えるクセがついてますよね。

特に広告代理店は、クライアントに対して、
そういう立場をとっちゃいがちじゃないですか。
だけども、さっき言ったみたいな、
営業が商品そのものの料金を受け持って
そのままタダで配ってるほうが、なんか、
「実弾」を打っているような殺傷力があるわけで。

そのことも視野に入れると、
「POPという名前のアメ玉を配る」
と決めてしまったあとでその内容を考えるのは、
アメを1コ配るか3コ配るか、
オレンジ味なのかどうなのか、
っていうような話をしているだけじゃないか、と。
どうもあやしいなぁと思うんですよ。
それじゃあ、味が変わるだけで、
本質的にはオリジナリティも親切もない。

アメ玉を配らなくったって、
きちんとわかってくれる書店員のかたは、
商品を理解して愛して配ってくださる。
でも、じゃぁPOPを配らないことを
結論にして満足してちゃいけない。
何かをしたい気持ちはある・・・・。
じゃあ、なんだろう?と。
木村 そもそも、POPというものがない時代に
戻ったような気持ちになって、で、
「何を配りたいか」と考えるってことですよね。
糸井 たしかに、POPっていうのは
お客さんにとっても、意味がありますよね。
こういう本ですよ、っていうメッセージがある。
出版社にとっても、もちろん意味があります。
この本には、力入れてますよ、と伝えて、
ほかの本よりも抜きん出ようとするものですから。

ただ、ほかを抜こうとする
エゴイズムからちょっと脱して、
他の書籍までよろこぶようなものって、
何かできないかなぁ・・・・?

この発想で本屋さんに何かをお届けできれば、
「ホントにいいこと」になるかなぁと思うんです。

お客さんがほぼ日ブックスを
見つけてくれることが、
本屋さん全体をよろこばせるモノ、と言うか。


(『経済はミステリー』大迫力の表紙!)

赤井 佐藤可士和さんがディレクションした
SMAPのCDの
「レコード屋に置くティッシュペーパー」が、
広告の賞をとりましたよね。
あれは、レジの横に置いておかれて、
店員さんもそのティッシュを使うし、
お客さんの目にも触れました。
ああいう、店員さんの
実用性の一部をかすめながらも、
お店のディスプレイとして置きたくなるような、
そんなものが、いいのかもしれません。

「荷造りテープ」とかは、どうかなあ?
書店員さんたちって、梱包することで
一日仕事の何分の1かを使っていますから。
書店員サービスというものは、「あり」ですよね。
毎日すごい数の本が段ボールで届くなかで、
ほぼ日ブックスの荷造りテープを使うなかで、
なぜか書店員さんのあたまに、
刻み込まれるという・・・。
糸井 そういう「便利なもの」っていうのもありますね。
もちろん、大前提としては、そもそも、
本のなかにサービスをできるだけたくさん入れた、
という自信がなければいけないですよね。
商品力を増すことについて、
最もコストをかけるべきことなんですけど、
更に何か、と言うと、何だろうなあ?

・・・あ、そうだ。

スターバックスって、店員さんが自分で
ランバフラペチーノがどうの、とか、
黒板にメニューを自分で書きますよね?
あれって、人によって上手下手があったりして、
いいですよね。

たとえばの話、ホワイトボードの
ちっちゃいやつを置くったらどうだろう?
ある程度のことばは書いてあるけど、っていうやつ。
「あんまりおすすめしません」でもいいから、
そこにいる人に書いていただけるような・・・。
「自分にとってのベスト3冊」なんて
書いてもらっても別にいいわけだし、
それにホワイトボードにすれば、
ほぼ日ブックス以外のもののPOPを
それで作ってもかまわないじゃない?
木村 それなら、本屋さん全体がよろこびますね。
TSUTAYAとかHMVとかで
店員さんが一生懸命書いているPOPも、
書きやすいような
オリジナルの体裁になってますもん。
たくさん書ける余白の多いものは、
歓迎だと思います。使いやすいし。
糸井 極端に言うと、かっこいいワクがあって、
余白があって、「ほぼ日ブックスもよろしく」と
ちっちゃく書いてあるだけでも
いいぐらいですよね。

それでほかの本のPOPを
作ってもらってもオッケーで。
赤井 いいですね!
糸井 よく考えると、こちらの言いたいことも、
書店店頭では最低限でいいじゃないですか。
木村 あんまり深く長く説明をしても、
すでに興味を持っている人が、
更にのめりこむということだけでしょうから。
もっと、本を読まなかった人たちも
手に取ってもらえたらうれしいですよねー。
糸井 だから、短めに、ぼくたちが思う
ほぼ日ブックスに関するいちばん少ない情報を
出そうと思うと・・・。
要するにたぶん、
「本を楽しんで読む<時間>を、売っている」
ということになると思うんです。それを、
表現を変えてみるといいと思うんですけど。
赤井 ほぼ日ブックスの創刊の言葉には、
「テレビを観るような、
 ともだちと雑談するような、
 『読む時間そのもの』を
 サービスしたいと思います」
と、ありますね。


(『ポンペイに学べ』表紙。田中靖夫さん画)

糸井 いただいた感想メールでも
そこに反応してくれた人が多いんですよ。
その文章を短くするのが、
余白つきPOPとしては、
いちばんリアリティがあるかな?

ところで、参考までにだけど、
昔に朝日出版社でやってた
1週間に1冊本を出す企画「週刊本」って、
どういうキャッチフレーズでしたっけ?
赤井 「思考のシンクロトロンが何とかかんとか・・・」
っていう、ものすごい長いものだったような(笑)。
木村 (笑)すごい。
糸井 わはははは。
あんまり長く説明してもなぁ。

それを聞くと、むしろいっそ、
ほぼ日ブックスの内容さえも言わずに、
「何用あって月へ行く。 ほぼ日ブックス」とか、
わけわかんないのをそれだけ書くのも、
ありだなぁ(笑)。
これはパクリだけどさ、山本夏彦さんの。
木村 (笑)いいなぁ、それ。
糸井 ・・・まあ、ただ、
敢えてコピーライターとして言うと、
「90分ぐらいで読めてしまう」ということを、
お伝えしたい気分も、ありますね。

『ほぼ日刊イトイ新聞の本』(講談社)を
出版した時に、みんなが感想のメールで、
「すらすら読めたんですよ!」
ということに関して、すごくうれしそうに
反応してくれたんですよ。
木村 そうそう。
「あっと言う間に読めたわたしって、
 けっこうスゴイんじゃないでしょうか?」
って言ってくれたメールもうれしかった(笑)。
赤井 「理解しながらすらすら読めた自分がかわいい」
みたいなのは、読書体験の中にあるでしょうね。
うれしいですよね、これは。
糸井 あの感動って、
なんか自分でもわかるじゃないですか。
小学生の時に本を一冊読むと、
誰にということでもなく自慢したいような気持ちに、
なりましたもんね。
木村 なったなった。
自分が進歩してる気持ちみたいな。
赤井 そうですよね。
糸井 90分・・・。それ、キーワードだな。

あ、わかった。
『90分を、わたしにください。』
っていうのは?
赤井 いいですねそれ!
糸井 ・・・しかも、700円もください、と(笑)。
赤井 わははは。
木村 (笑)こらこら。
・・・ま、いちお、買ってね、と。
糸井 『90分を、わたしにください。』
これ、いいんじゃないかなあ?

「ちょっとお時間いいですか?」
っていう感じが入っているし、
これ、どうも決まったっぽいですね。


(『金魚人』表紙! かわいい!!!)

赤井 ええ。
『90分を、わたしにください。』
って、すごくいいと思いますよ。
糸井 POPって印刷だけのことですから、
POPカードの大きさにして、
全部のタイトルの入っているものをつくったり、
「すこし詳しめ」のものもつくったりしながら、

『90分を、わたしにください。 ほぼ日ブックス』

とだけ書いた「お役立てください」という意味での
ちいさいホワイトボード的なものもつくって、
ぜんぶで名刺ボックスひとつぶんぐらいの
数のカードを、お店にあげると、いいよね。

これだと、お客さんのためでもあり、
書店のためでもあり、ほかの本のためでもあって
そのうえで、自分の本のためにもなるでしょ?
赤井 うん。できましたね、これは。
糸井 レコード屋さんのように、
先に読んでくださった店員のかたが、
空白の或るPOPに感想を書いてくださっても、
うれしいでしょう?
赤井 ええ。
そうなると、ポスターをつくるとしても、
長々と商品説明をするよりは、
『90分を、わたしにください。』を入れて、
たとえば『個人的なユニクロ主義』の
表紙写真を大きめに出すとかいうほうが、
いいでしょうね。
糸井 そうです、そうしよう。
赤井 写真としてよくできていないと
ポスターって貼る気にならないし、
宣伝宣伝していたら、もう貼ってあっても
見る時に目がよこぎってしまいますからね。
糸井 そりゃ、もう。
赤井 書店にはってあるポスターって、
時には、壁をよごしているだけで
告知になっていない場合もありますから、
そういうのを避けて、
かっこいいポスターにしましょう。
木村 わきわき。
ぼく、この一ヶ月で
10キロ体重が増えたんです。
糸井 筋肉だけで10キロだもんなぁ。
赤井 幸先、いいですよねぇ。
でかくなるって感じで。

(今回は、2日前の話しあいを、
 ほぼリアルタイムでお届けいたしましたっ)



※ほぼ日ブックスの創刊イベントを、
 11月3日(土)の夕方に、
 新宿東口の「紀伊国屋ホール」で
 おこなうことになりましたよー。
 これが、創刊したことを述べる以上に
 「イベントそのものがおもしろい」
 という豪華なものになる予定です!
 後日詳細を発表いたしますし、
 「ほぼ日」の読者のかたも、
 抽選で何百人かご招待いたしますので、
 楽しみにお待ちくださいませ。

「ほぼ日ブックス」のメールマガジンを、
  今週末か来週はじめから、配信しはじめます!
  こちらでさっそく申し込み受けつけしています。
  ほぼ日デリバリー版のような気楽な内容を
  お届けする予定ですので、ぜひどうぞ。
  もちろん、無料ですっ。

※なお、メディア関係者のかたで、
 「取材を何かをしたいんです」
 と思ってくださるかたは、お気軽に
postman@1101.com
 こちらの木村まで、メールをどうぞ。
 もちろんふつうのおたより(感想)もうれしいです。

(つづきます)

2001-10-015-MON


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