
サカベ |
この時期、花街は華やかになりますよ。 |
── |
先日、イギリス人の方に
「都をどり、観たことないの?」
と、仰天されまして。
あれは観たほうが、どうやらいいらしいですね。
恥ずかしさを圧して訊きますが、
都をどりって、何なんですか。
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サカベ
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都をどりは、春と秋に行なわれる、
京都の花街の舞妓さんや芸妓さんの、
盛大な踊りの舞台です。
彼女たちの舞の鍛錬の結晶を
一気に観ることができるんですよ。 |
── |
ついでに、もうひとつ訊いていいでしょうか。
はなまち、って何ですか?
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サカベ |
(こら、あかんわ)
ほな、今回は京都の花街の
スペシャリストである竹内吉一さん(81)に
ご登場いただきましょう。
祇園の街のいちばんええ通りに住んだはる、
まあゆうたら、舞妓さんの
町内の親方みたいな方です。
京舞の人間国宝の
先代の井上八千代さんの時代からよう知ったはる、
「LOVEぎをん」な、おじいさんです。 |
竹内 |

はいどうも。花街のこと知りたいやて?
花街ゆうたら、ものすご簡単に言いますと
舞妓芸妓がいてお茶屋がある、
華やかな一帯のことで、
京都には ●祇園甲部
●先斗町
●宮川町
●上七軒
●祇園東
の五花街(ごががい)
ゆうのが
おして(註:ありまして)
このうち「祇園東」は秋のおどりだけ。
あとの4つの花街で、
春の都をどりをしますわ。
4つの花街で、ゆうても
いっぺんにやるのとちゃいますで。
それぞれの花街が、それぞれの歌舞練場で
それぞれの流派の特徴を生かし工夫を凝らして
やりますわね。
●祇園甲部のおどりを「都をどり」
●先斗町のおどりを「鴨川をどり」
●上七軒のおどりを「北野をどり」
●宮川町のおどりを「京おどり」
といいますわ。

竹内さんが中心となって町内を盛り上げて
建てたという祇園の有楽稲荷。
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それぞれの花街が競い合うかんじがして
いいですね。
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竹内 |
こわい「おかあはん」にしごかれて、
がんばってて、ええかんじやよ。
都をどりのはじまりは、といいますとね、
東京に都が移ったときに
京都に住んでるもんみんなが、
「これでは京都がすたれてしまう」
という、一種の危機感をもったんですわね。
なんか、盛り上げていかなあかん!
京都に来てくださる方を
小粋に華やかにお迎えしよう!
と、そういうことから、はじまった、
ゆうたら町おこしですな。
戦争で中断したこともありましたけど
そこからずーっと、123年
続いてるんでっせ。
そういや平安神宮もできましたなあ‥‥。
それぞれの花街で毎年テーマを変えて
やりよる。
ほんま、花街ごとに特徴があって、
おもしろいですわね。 |
── |
ちなみに、竹内さんはどの「おどり」が
おすすめで? |
竹内 |
そら、好きずきでっしゃろ。
まず、都をどりは、人数がそろってて盛大やわ。
井上八千代さんが代々伝える、
静かで厳粛なおどりや。
品がええ。伝統がある。
京都の伝統をおさえるには、これやなあ。
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── |
まずは、伝統の都をどりですね。
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竹内 |
ほんで、やっぱり鴨川をどりはええなあ。
元気なおどりやわ。あれは楽隊ですねえ。
楽隊という言葉がぴったりくるねえ。
鴨川おどりは派手で楽しいなあ。
洋楽が入っているように思うわ。
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── |
楽隊‥‥洋楽‥‥?
詩のような言葉の羅列ですが
あさってのほうへ夢見るように語る竹内さんに、
どうしてもツッコめません。
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竹内 |
北野をどりは何たって、芸が達者や。
話がおもしろい。
華やかで、いうたら、宝塚や。
ストーリーがしくまれていて、
場面場面の展開があって、
おどりもはっきりしている。
10年前くらいから、ええわ、ここ。
昔ながらの花街のよい雰囲気が
あじわえますにゃわ。
渋さがあって、ええなあ。 |
── |
宝塚でありながら、渋く、昔ながら‥‥。
10年という具体的な数字が
竹内さんのウォッチャーかげんを
にじみ出させています。 |
竹内 |
ほんでまた、京おどり。
こりゃ、がんばってるおどりやな。
題目が歌舞伎仕立てや。
若いおどりの師匠が一所懸命やってはって
ますますよろしい。
舞妓さん芸妓さんもぎょうさんいやはる。
若いのから、お年を召した方まで
いやはるね。
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── |
お年を召した芸妓さん、というと?
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竹内 |
80すぎとる。現役やで。 |
── |
筋金入りのおどりが観れそうですね。
さいごに、あとひとつ、
気になっていることが。
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竹内 |
何でも、訊いとくれやす。 |
── |
舞妓と芸妓のちがいは、なんですか。
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竹内 |
ごくごく簡単に言いますと、
舞妓はだいたい20歳そこそこまで。
着物は季節感のある柄のもので、
「だらりの帯」という
後ろに垂れ下がるような帯をまきます。
いっぽう芸妓は、
紋が入った黒の着物で、帯も短め。
あ、そうそう、
舞妓は、自毛を結って
季節感のあるかんざしをしてますが、
芸妓はカツラや 。 |
── |
そうなんですか。
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竹内 |
舞妓から芸妓にあがるときは、
そら、旦那衆がお金をかけて
仕度しはるんですわね。
昔は、赤い傘をさしてもうて
「お母さんよろしゅうお願いします」
と姉さんやらとあいさつに来たはったでぇ。
とにかく、いっぺん観てみなはれ。
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