
サカベ |
ええ季節になりましたなぁ。
賀茂なす、えびいも、聖護院だいこん。
いまのいままで黙っていましたが、
京都は野菜がおいしいんです。 |
── |
以前から思っていましたが、
京都の人は、それを
秘密にしている一面がありませんか? |

サカベ |
いいえ、めっそうもない!
17年前に、故・今西慧先生の教えで
「京の伝統野菜を広めよう」という企画で
市場に雑誌取材に
行ったことがあるくらいですよ。 |
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奇妙なヒョウタン型の鹿ヶ谷かぼちゃ、
砲丸投げの球のように丸い賀茂なす、
にんじん(金時にんじん)も、
だいこん(聖護院だいこん)も、
とうがらし(万願寺とうがらし)も、すぐきも、
ねぎ(九条ねぎ)も、
京都の野菜は何かと独自路線でしょう?
おかしい、おかしい、とは思っていたんです。
さては、広める気がないのだな、
ひとりじめする気なんだな、と。 |

サカベ |
そんなことないですよ。
京都の人はみんな、野菜がものすご好きで、
外でも家でもぎょうさん食べる、
ただそれだけなんです。
魚や肉が豊富にあるわけではない京都では、
畑で採れたものを、工夫をこらして
炊いたりあえたり飾ったりして
たのしんで食べようとしてきたのでしょうね。
では、今回もサカベの母、清子の炊きました
なすびから、ごらんください。 
サカベさんのお母さん作「なすの炊いたん」。
京都では"煮る"ことを"炊く"と言います。
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── |
なすの煮つけ。おいしそうですね‥‥。
これは「揚げ」といっしょに
煮つけてあるんですか。 |

サカベ |
だし、酒、しょうゆ、みりん、砂糖少々、
お揚げ、なす、です。
このくらいは家庭でいつもやっております、
ということです。
野菜に関しては、京都の人は、みな
それはそれはうるさいんです。
季節に合わせて味わいますので、
これからは大根、栗、さつまいも
あたりがよろしいです。
清子が炊きましたのは、なすびはなすびでも、 京なすというやつです。 |
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賀茂なすとは、ちがうんですね。 |

サカベ |
京なすは、ふつうのなすびの形に近く、
京都の山科あたりで採れます。
が、そこいらでも採れます。
焼きなすにするとあまくておいしいです。
大きくて歯ごたえのある賀茂なすのほうは、
田楽がおすすめです。
賀茂なすは、まんまる。揚げものにしても美味。 |
── |
なすは初秋がおいしいですから、
いまがいちばんですね。
今週にでも食べたいところです。 |

サカベ |
そして、この時期から冬にかけて
もっともおすすめなのが、ねぎです。 
グラタンに入れたり豚肉と炊いたり
お鍋に入れたり、あとはそうそう、
なんと言っても、ねぎ焼きやね! 
「かな」というお店のねぎ焼きです。
京都のお好み焼き屋さんには、たいてい
メニューにねぎ焼きがあるんですよ。 |
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京都でねぎと言えば、
あの、万能ねぎにも似た青いねぎ、
九条ねぎですね。

1300年前から栽培されている、九条ねぎ。 |

サカベ |
万能ネギより太く、食べごたえがあって
内側にヌルヌルが
ぎょうさんついているんです。
あのヌルヌルのとこが、あまい!
ビタミンBやカロチンが豊富で
からだにいいですよ。 |
── |
葉ものの野菜は、あまり日もちがしないので、
京都の八百屋さんで買って帰っても
すぐに傷んで、もったいない気が
ちょっぴりします。 |

サカベ |
自宅にお帰りになったら
新聞紙で巻いて冷蔵庫の野菜室に入れてください。
買ってから3日くらいのあいだに食べると
新鮮でおいしいのですが
だいたい1週間くらいは日もちはしますよ。 |
── |
葉ものでいうと、
京都はやっぱり水菜がおいしいですね。 |

サカベ |
さて、この方は、水菜と壬生菜(みぶな)を
持っておられます。
どちらがどちらかわかりますか。
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── |
私の落としたのは金の斧‥‥
ではなくて、
この方はどなたですか。 |

サカベ |
京都の中央市場の八百屋さんの、
小西社長さんです。
水菜と壬生菜は似て非なるものなんです。
ギザギザの葉っぱのほうが水菜、
ヘラみたいに丸い葉っぱをしているのが
壬生菜です。
水菜はあえものや鍋ものに
使うことが多いです。
だしをきかせた鴨肉のしゃぶしゃぶ鍋に
入れるのは、超おすすめですよ。
水菜のシャキシャキ感が残るくらいに
サッと鍋に入れて火を通し、
シャブシャブした鴨肉といっしょに
山椒をふって食べます。
琵琶湖の鴨猟が解禁になる11月が
私はいまからほんまに待ち遠しいんです!! |
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そして、壬生菜は? |

サカベ |
一夜漬けやいためものにします。
壬生菜を細かく切ったものを一夜漬けにして
かつお節と合わせ、細巻きにして
お酒をのんだあとに食べる‥‥どうでうすか? |
── |
おなかが真剣に空いてきました。 |

サカベ |
お酒といえば、おすすめなのが 万願寺(まんがんじ)とうがらしです。 |
── |
あの、大きめのとうがらしですね。

大ぶりの万願寺とうがらし。実は天ぷらなどに、
若い葉や茎は佃煮にするそうです。 |

サカベ |
そうそう。肉厚で、あまいです。
オーブンで焼いて、
花がつおをかけて、ポン酢で食べてみてください。
オーブンで焼くときは、焼きすぎるとダメですよ。
ちょっとの量を、生っぽさが残るくらいに
焼くんです。
素揚げにしてもいいよ。 伏見とうがらしは、ちょっとだけ辛味がありますが
きつく辛うないから、
天ぷらや佃煮にピッタリです。
?? なんだか、無口になってきたね。 |
── |
いや、昼休みが近いんで、おなかが‥‥。
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サカベ |
上賀茂特産の漬物にすぐきがありますが、
これも独特の野菜です。
材料であるすぐき菜は、
380年ほど前に、上賀茂神社の近くに
かぶらのような植物が自生していたものを
神職者が自分の庭で栽培したのが
はじまりだそうです。 |
── |
私は、冬に京都に行くと必ず
すぐきのお漬物を買って帰りますよ。 |

サカベ |
すぐきの漬物は、すぐきの里
上賀茂で買うてくださいよ。
六郎兵衛さん、なり田さんなどがおすすめです。

すぐきを買うなら六郎兵衛へ。
なり田もおすすめ。店員さんが
手に持っているのが、すぐきの漬物です。
それから、京の伝統野菜で
いちばんめずらしいかもしれない根菜は、
堀川ごぼうです。
ビタミンCやミネラルが豊富な堀川ごぼう。
まるで杖みたいでしょう?
これは、畑で3年くらい
横に寝かせて大きくするんです。 |
── |
3年もかかるんですか。 |

サカベ |
堀川ごぼうは、畑にあるあいだに
お料理屋さんが先約してしまうので
市場にはなかなか出まわりません。
八百屋さんで見かけたら
そのときはぜひ買っていただきたいのですが
持って帰るのに勇気が要ると思いますので、
やっぱりお料理屋さんで味わってください。 |
── |
どっちなんですか(笑)。 |

サカベ |
とにかく大きいんです。
肉詰めにするくらいですから。 |
── |
ごぼうに肉を詰める?
写真だと、そんなに大きくは見えないのですが。 |

サカベ |
小さめのセロテープくらいの太さがあります。
そして、ごぼうの内部に
ス(空洞)が入っているんです。
そこに肉を詰めたりして、
蒸したり炊いたりします。
ふつうのごぼうとちがって、やわらかいし
味がしみやすい。
堀川ごぼう1本あったら
家族全員で食べられますよ! |
── |
ふ、ふしぎな食べもので‥‥。 |

サカベ |
料亭で有名な根菜といえば、ほかに えびいもがございます。
あれもまあ、かわった形をしていますね。
曲がった姿がえびに似ているから
そう呼ばれているそうなんですが、
あれは、ばっつぐん!においしい。 |
── |
えびいもは、ほんとうに
おいしいですねぇ。 |

サカベ |
湯がいて、おだしとおしょうゆを
かけていただく、
かたくり粉をまぶして素揚げをし、
ゆかりと塩をかけていただく。
‥‥ウットリします。 |
── |
ところで、これらの京の伝統野菜は、
どういったところで
購入すればよいのでしょうか。 |

サカベ |
ごくふつうの、「これぞ八百屋さん!」
というようなお店がいいですね。
錦市場にもありますし、
三条や七条の商店街に行っていただいても
よろしいと思います。
ヘニャヘニャになっていない、
シャキッとしたものを選んでくださいね。
京のブランド産品マーク。
優れた京都の農林水産物のうち、
特に品質や生産地などを厳選した109産地
21品目に添付されたマークなのだそうです。
京都の円町(えんまち)交差点には、
大原女のようなおばちゃんがふたり、
野菜を売っていることがあります。
手ぬぐいを頭に巻き、もんぺ姿で
リヤカーに野菜を積んでいます。
と、ここまではふたりとも同じなのですが、
ひとりはすぐに売り切れて、
もうひとりはなかなか売り切れません。 |
── |
どうしてですか? |

サカベ |
売り切れないおばちゃんのほうは、
値切れないしおまけもつかないんです。 |
── |
ごくふつうに商売をしている、と。 |

サカベ |
売り切れおばちゃんは、気前がよくて
「ほな、トマトもつけとこか。
500円でええわ」
などと、せんでもええサービスを
次々とするんです。
そのせいで、アッという間に売り切れですわ。 |
── |
長年、隣でそのようすを見ているのになお
サービス内容を変えないもうひとりのほうにも
何かを感じますね‥‥。
京都はやっぱり、怖いところです。
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