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『MOTHER3』が制作中、ということですが。 |
糸井 |
はい。ただ、まあ、僕は
ゲームの制作については「前科者」ですから、
こういう発表することに対して、
同じことをくり返してしまうんじゃないかという
怖さのようなものを感じてしまうんです。
ものすごく慎重になってます。
本当は、完成してから発表したいくらいなんです。
でも、『MOTHER1+2』が出るというときに、
当然、「『MOTHER3』は出ないんですか?」
という声が上がることになるでしょう。
そこで、制作しているのに、「出ません」と、
いちいちうそをつくのはいやだったんで。
それで、まずは「作っています」ということを、
お知らせすることにしました。 |
── |
いったん開発中止になった
『MOTHER3』が出るということについて、
率直な気持ちを教えてください。 |
糸井 |
たくさんの人をがっかりさせてしまった自分が、
こんなふうに言うと怒られるのかもしれませんが
出るということは、ぼく個人にとっては、
とてもうれしいことです。
出したくて、本当に、出したくて、
作っていたものですから、
出るということ自体は、個人的に、
とってもうれしいことです。
一度、出せなかったという事実がなければ、
もっと気持ちよくお知らせするんですけど、
まあ、なんていうんでしょう、
どうしても、遠慮があるというのが、
正直なところです。 |
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純粋に、待っていた人にとっては、
うれしいニュースだとも思うんですが。 |
糸井 |
ありがたいことですし、励みになります。
でも、まあ、笛や太鼓をどんどこ鳴らして、
にぎやかにお知らせすることは、
やっぱりしないつもりです。
本当は、連載の中で、『MOTHER』の話と、
『MOTHER2』の話を読んでもらったあとで、
『MOTHER3』について知ってもらうほうが
いいと思ったんですけど、やはり、この話を、
先に一度しなくちゃいけないですよね。 |
── |
順々に聞きますが、まず、プラットホームが
ゲームボーイアドバンスになりました。 |
糸井 |
はい。たぶん、
あきらめずに待ってくださっている多くの方は、
はたして『MOTHER3』が
ゲームボーイアドバンスというサイズの中に
収まるのだろうかとお思いになるでしょう。
たしかに、ぼくの最初の構想としては、
そういうサイズで発想したものではなかったです。
だから、「シナリオを本にしませんか」とか、
「映画にしてみたい」という話もあったんですけど、
検討していくうちに、無理だということがわかった。
やっぱり、サイズというか、
大きさのようなものが違うと思ったので、
けっきょく、どれもあきらめたんです。 |
── |
それが、なぜ? というのが、
いちばん気になるところです。 |
糸井 |
もっとも端的に言うと、あるとき、
「ゲームボーイアドバンスで出すという方法は
ありえないのですか?」という提案を受けました。
それで、ぼくには、思いもつかないことだったので、
その場では「わからない」と答えたんです。
ほんとにわからなかったんで。
それから、じっくりと考えてみたんです。
そこで感じたことは、自分が知らず知らずのうちに、
大作主義に陥っていたということです。
当時のぼくは、
すごく肩に力の入った作りかたをしていて、
なんていうか、極端にいえば、
「世界をびっくりさせてやろう」みたいな、
「自分が想像できる全部を入れ込もう」
みたいな感じで、それこそ大作を出そうとしていた。
大作を出してやろうとして、挫折したわけです。
でも、もっと、違う求められかたが
ほかにあるんじゃないかとやっと思えてきた。
そういうふうに思えたということが、
まあ、すべてとはいいませんけど、
『MOTHER3』がゲームボーイアドバンスで
出ることになった、理由のひとつだと思います。 |
── |
そういうふうに考えかたが変わった
きっかけのようなものはありますか。 |
糸井 |
いろいろあるとは思いますが、
そのうちのひとつを挙げるとすると、
『MOTHER1+2』が
ゲームボーイアドバンスで出ることになって、
テストプレイをしてみたことです。
3Dのキャラクターが動かなくても、
こってり描き込まれた絵が続々と出てこなくても、
ぼくの考えたものっていうのを
味わっていただけるんじゃないかっていうふうに
思えるようになったんです。
だから、ゲームボーイアドバンスという
ハードの力も影響しているといえるし、
もっと大きな枠でいうと、
ゲームというものを取り巻く
時代の気分みたいなものが変わったことも
影響していると思います。
仕事を放り出してでもプレイしようとか、
徹夜を続けてでもゲームにかじりつこうとか、
そういう時代ではなくなっていると思うんです。
なにせ、自分も含めて、いまいちばん難しいのは、
他の人の「時間をもらうこと」ですから。
だから、ゲームボーイアドバンスという
ハンディなハードを使って、
毎日ちょっとずつ楽しむような、
そういうゲームになればいいなと思って。
そういうふうに考え方を切り替えて、
『MOTHER3』を作り始めたということですね。 |
── |
『MOTHER3』がどういうゲームになりそうか、
話せる範囲で教えてください。 |
糸井 |
お話は、基本的には、
ぼくのシナリオに基づいて作られています。
開発自体は、着々と、進んでいるところです。
以前は日本シリーズの優勝決定戦のようなつもりで
作ってたんですけど、
いまは開幕第一戦に向かうみたいなつもりで
肩の力を抜いて取り組んでいこうと思っています。
「今日はここまでやったら寝よう」みたいな感じで
ちょっとずつ、休み休みプレイして、
「けっこうおもしろいよ?」って言ってもらえる、
そんなゲームにしたいと思いますので、
そういうものなんだという感じで
のんびり待ってていただけると幸いです。
あの、こんなふうに言うと、
「なぁ〜んだ」って思う人もいると思いますけど、
思われちゃうことは、まあ、
しかたがないのかなとも思います。
けれど、そもそも、
『MOTHER』も、『MOTHER2』も、
そういう軽さを持っていたんじゃないかと思います。
だから、もしも『MOTHER3』ができたなら、
あえて「あんまり期待しないでね!」って、
笑いながら平気で言えるような、
そんな、楽しいゲームにしたいと思ってます。
「いつ出ますか!」、「どんなゲームですか!」
って聞きたいでしょうけど、作ってる最中なんで、
発表はこれくらいにさせてください。
もう少し詳しい経緯なんかは、
たぶん、このあとに掲載されることになる、
連載のほうで読めると思いますので、
そちらのほうも読んでもらえるとうれしいです。
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