ポケットに『MOTHER』。 〜『MOTHER1+2』プレイ日記〜 |
会社へ向かう電車のなかで、 僕はいつものように ゲームボーイアドバンスSPを開いている。 僕と僕の仲間たちは あちこちで炎が噴き出している 蒸し暑い地底の洞窟を進んでいる。 『MOTHER2』のダンジョンは 完全に一本道になっていることがあまりない。 前作ほど途方もない広がりを持っているわけではないが、 分岐のどちらが本道であるか、容易にはわからない。 道中に巣くうモンスターは手強い。 1体ずつならさほど苦労せず倒せるけれど いやな組み合わせで登場するから 戦闘にはある程度の戦略が必要だ。 苦労しながら進むうちに、 僕と僕の仲間のレベルは少しずつ上がっていく。 レベルの上がりが早いということは、 付近のモンスターが それだけ強いということを意味している。 蓄えたアイテムを消費することを 最近はためらわなくなっている。 目の前にきらきらと輝く場所があるということは そこが8番目の場所であるということである。 長い長い旅の果てに、 ようやく僕は8番目の場所にたどり着いた。 全員の体力を回復させて、 8番目の場所を守る番人に話しかける。 戦闘。 これまでにない長い戦いの末に、 僕と僕の仲間は8番目の番人に勝利した。 そこで、電車が僕の降りるべき駅に着いた。 8番目の場所へ続く道に張られていた 結界のような光がなくなっている。 入口をくぐればそこが8番目の場所だろう。 僕はとりあえずホームに降りて、階段を上り、 少しだけ続きをプレイすることにした。 8番目の場所を訪れたあと、 手近な場所でセーブするつもりだった。 なんとなく、改札に向かって歩きながら、 僕はそこを訪れた。 8つ目のメロディーを聴き終えたとき、 「おとのいし」が勝手に鳴り始めた。 これまで、7つのメロディーを集めたときは、 そういうことはなかった。 何か大切なことが始まるという ささやかな予感が僕のなかをせわしなく駆け抜けて、 思わず改札の前の太い柱のそばに身を寄せた。 緑色のつるつるした柱に肩をあずけて、 僕はゲームボーイアドバンスSPの液晶画面に集中する。 またしても、思いがけない映像。 ここでまたこの日記は不鮮明になる。 せめてその代わりに記すとすれば、 改札の前の太い柱に身を寄せる僕の手には アズライトブルーのゲームボーイアドバンスSPがあって、 そのプラスティックのボディに ぽつりぽつりと数滴が目から落ちたということである。 完全に不意をつかれて、僕は動けなくなっていた。 都営三田線の白金高輪の改札の前にある 緑色の太い柱のそばで、僕はしばらくそのままだった。 そこで強く感じたことがある。 けれど、いまはそれを書かない。 たぶん、そう遠くないうちに、 この日記は終わってしまうと思う。 そのときに、僕が今日感じたことを書こうと思う。 エンディングまで泣くんじゃない、と、 前作のコピーにもあったのにな。反省。 |
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2003-09-02-TUE
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