── |
さて、今日は『MOTHER』を語るうえで
絶対にはずせない、音楽というものについて
たっぷり語っていただきたいと思います。 |
鈴木 |
よろしく。 |
田中 |
よろしくお願いします。 |
糸井 |
今日はもう、ふたりに語ってもらうよ。
なにしろ音楽座談会だからね。
オレは聞いてるだけ。おとなしくしてるよ。 |
── |
ええと、『MOTHER』シリーズと音楽は
切っても切り離せない関係にあります。
そもそも、これほど音楽に
ウェイトがかかるというのは
当初から計画していたことだったんでしょうか。 |
糸井 |
おっ?!
いきなりオレの出番じゃないですか!
なになに、もいっぺん質問して? |
── |
つまり、音楽を、ゲームのなかで、
これほど重要に扱うと決めたのは……。 |
糸井 |
オレに決まってんじゃん! |
一同 |
(笑) |
── |
じゃあ、ぜひお願いします。 |
糸井 |
あのね、あの当時、
一部の名作はともかく、
ゲームにとって音楽っていうのは
かなりオマケ的だったじゃないですか。 |
鈴木 |
ああ、そうだねえ。 |
糸井 |
で、『MOTHER』をつくるとき、
オマケの音楽はダメだって決めたんです。 |
鈴木 |
そうそうそう。 |
糸井 |
で、具体的な例を挙げて言うと、
まず、当時のRPGにありがちだった
クラシックみたいな音楽をつける必要はない、と。
「ありがち」じゃできないものが欲しかった。 |
鈴木 |
それは、それ以前にもあったしね。 |
糸井 |
うん。要するに『ドラクエ』がそうだったから
みんなそれにならっちゃったんだけど、
まえのインタビューでも話したように
『MOTHER』は、そういう、
「ゲームのお約束」みたいな部分を
どんどんひっくり返していきたいと思いながら
つくっていったわけ。 |
── |
なるほど。
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糸井 |
ぼくはぼくが聴いてきたぼくの好きな音楽を、
やっぱり使いたいなと思ってたし、
音楽をキーにしてゲームを作るっていうのも、
企画のなかに入ってたんです。
だから、とにかく「音楽は大事だなあ」と。
わかりやすくいってしまうと、
『MOTHER』にとっての音楽って、
映画のサントラだと思ったんだよね。
それは、ものすごく大事なんです。 |
鈴木 |
うん。 |
糸井 |
音楽にこだわったのには
もうひとつ理由があって、
「耳からの刺激」というものが
非常に大事なんだっていうことを
ずっと思っていたんですよ。
それはもう、感覚というよりも理屈で知ってたの。 |
── |
理屈、ですか。 |
糸井 |
うん。何かというとね、たとえば、
恐怖映画で、目に向かって杭が飛んできて
それがバーンと刺さる場面があるでしょう。
たしか『サンゲリア』だったかな? |
鈴木 |
ああ、なんかあったね。こう飛んでくるやつだね。 |
糸井 |
それって、ものすごい怖いんだけど、
音がないと、あんまり怖くないんです。
なぜかっていうと、
刺さる瞬間まで音楽盛り上げて、
ジャン! って怖い音を急に鳴らして、
要するにビックリさせるんですよ。
ビックリして、心臓がドキドキするわけ。 |
鈴木 |
音でね。うん。 |
糸井 |
「ワッ!」って言われたのとおんなじだから。
それでドキドキしたのを、自分の脳は、
「あー怖かった」って認識するんですよ。
ほんとうは、ビックリと怖いは、違うんです。
で、怪談噺でもそのやりかたがあって、
「見たなっ!」って言うときに、
お客さんの胸をドーンと突いて飛ばすような
しゃべりかたがあるんです。 |
鈴木 |
突然「この顔かっ?!」って言うやつとかね。 |
糸井 |
そうそう。「この顔かっ?!」ってやつ。
あれで、「なんでこんな怖いんだろう?」
っていうのを、若い私は研究してたんです。 |
── |
お若いときから、おかしな研究を。 |
糸井 |
いえ。それほどでも。
「音」がどれだけ大事かということですよ。
それは恐怖の演出にかぎった話じゃなくて、
たとえば時間軸を急に展開させるときなんかも、
やっぱり重要なのは音なんですよ。
それ、視覚だけではできないんですよ。
カット変わりだけじゃ、
時間軸が入れ替わったことがわかんない。
つまり、ずーっとおんなじ次元で
刻まれていた音が、急に変わったりすると
ぜんぶ景色が変わるってことです。
だから、『MOTHER』をつくるとき、
好みとして音楽が好きだからという以上に、
どちらかといえば理論的に、音は非常に大事だから
重要視しようって決めてたんです。 |
── |
なるほど。 |
糸井 |
で、そのくらい大事なものをどうするか。
考えは、実現して成果をあげなきゃいけないわけでして。
候補としてまず挙がったのが慶一くんだったわけ。
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