OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.66
- P2P -


元気を出そう!

去年7月にオープンした、
お台場の日本科学未来館には
みなさんはもう行ってみました?

うれしいニュースは
友の会個人会員になると
なんと年会費1000円で1年間入館自由!
これはお得!!!
私もモチ入会してきました。
足繁く通いたいくらい情報いっぱいです。
ITを駆使した展示方法で、
ロボットのことや、コンピュータのこと、
インターネットのこと、メディアアートのこと
触って見て遊べる方式を取っているのが
いいと思いました。
地球オブジェが浮いていたりする吹き抜けの
空間デザインも居心地良し、です。

ちょうどそこで開催されていた
ロボットミーム展」が
終りそうだったので、駆け込みダッシュ!

これは、ロボットを
「21世紀のメディア」と捉えて、
ロボットは「文化的遺伝子(ミーム)」
を運ぶ「メディア」なのである、
というおもしろいアングルの
特別展示イベントだったのでした。

『Cyclops-睥睨する巨人』
『P-noir』(黒いピエロのバレリーナ)
『Orchisoid』(蘭と一体化するロボット)

*1
こういう不思議な存在のロボットと
対峙してると、
科学技術と人間の心理の接触によって、
あるいは技術と有機的なもの(植物)と
融合(フュージョン)するとどうなるか。
そのとき自分の中に何が生れるかみたいな
ロボットと人間の関係性を、
静かに問いかけられているようでした。

それにしても、
未来館の新人解説員のアシモさん。
やっぱりごっつ人気者だわ。
スターの貫禄ばっちり。
お給料高いのかなあ。
歩いて手を振るだけなんだけど…。
ややウチマタ歩きがなんともカワイイので許そう(笑)。
あの電車に乗れないCMのアシモも切ないしね。
ロボットの出番もどんどん広がるようで、
ますます人間社会と融合するときの
影響っていうのが、気になります。

そうやって、
新しい技術の研究を「ふむふむ」と注目して、
「やっぱり未来は明るくてオモシロイ!」と
思ってもらうことは今とても大切なことだと
私なりに実感してます。だから、
日本科学未来館の役割にも期待します。
それを考えると、
世の中このまま暗いわけじゃない。
さあ元気を出そう!日本の人たち。
コンピュータの未来はこれから、です。

で、今日の明るい話題はというと
P2Pというクールな技術のことです。

新技術が普及していくときは、
明るいことばかりが起きるわけじゃなく
暗いことももちろん多々あるわけですが、
これはほんとに今飛び抜けて注目株技術
であることは、ウソじゃないです。

マニアなみなさんには、
もちろんすっかりおなじみの言葉でしょう。
でもこの言葉初めて、という方々には、
ぜひここでお見知りおきを。

”せっかく出逢ったんだから。”

そんな願いが叶うテクノロジーと言えるかも。
あなたの願いと私の願いをビシッと
マッチングさせてくれるような…。

それはなかなかクールでしょ?
一体何者でしょう?

新しいロボットだろうって?
確かに名前はR2D2みたいなノリですね。
スターウォーズの。私の大好きなR2D2。
でもP2Pはロボットではありません。

P2P = peer-to-peer

ピアツーピア
と呼びます。
peerは、仲間とか同僚っていう意味。
しかもこの仲間は知らない人同士である
ケースがほとんど。そしてそれらを
ダイレクトに繋ぐのです。
そういう意味で、時には
people-to-peopleと呼ばれたりします。

これこそ世界を変えていく。
いや、もう塗り替えてる。
インターネットの真髄!!!
フリーダムの世界!
大噴火を起すような地響きを感じるテクノロジー。
とは言っても、インターネットの始まり自身、
このP2Pのフィロソフィーがあり、実際、
そこが技術の原点でもあったんですが。
今、そこに戻っているというのも
不思議な現象のような気がします。

ちゃんとした技術的な解説では、

「不特定多数の個人間で
直接情報のやり取りを行なう
インターネットの利用形態。
また、それを可能にする「Napster」などの
アプリケーションソフト。
多数のコンピュータを相互につないで、
ファイルや演算能力などの情報資源を共有する
システムである(情報・通信事典e-Wordsより)。」

そうです!
ナップスター、グヌーテラです。
これらは、P2Pを使ったサービスを
あっという間にIT世界に浸透させました。

なぜか?

もちろん、便利だから、というのも
あるけど。それよりもっと何かあって、
それは一言でいうなら、
コミュニティがキーワードだと思います。
P2Pのサービスを利用することによって
あるコミュニティの一員になる感覚は、
単に受け身でWebブラウジングしているよりも
より大きいのではないか。

さて、P2Pは一体どんなものか?
ちょっと技術を離れて、
マーシャ流にザクッと言っちゃいましょう。
次の3つのことがイメージできます。

  • 私と、私が会いたいと思う相手は、
    例えそれが知らない同士であっても
    いつでも会いたいときに会って
    話をすることができるの。
    会いたい人(モノ)に行き着くまで
    伝言ゲームのようにつながっていく。
    (コラボレーション機能)

  • 私とあなた(たち)はフラットな関係。
    どちらが上でも下でもないのよね。
    そして私たちの間には誰も入らない。
    (ブローカレス。但し、
    グヌーテラのようなサーバーを介しない
    ブローカレスモデルもあれば、
    ナップスターのような検索ができる
    ハイブリッドモデルもあります。)


  • 私のものはあなたのもの、
    あなたのものは私のもの。
    必要ならいつでも来て使ってね。
    その代わり、あなたのものも使わせてね。
    (分散コンピューティング)
たとえば何かP2Pソフトが、
自分のPCで動いていると、
私のお腹の中で誰かがごにょごにょ動いている感じ。
ひゃ〜、何それ?
もちろん誰なのかは見れば分かるけど、
だいたい誰かが「居候」している感じ。
同様に、私も誰かのお腹の中に入りこんで
作業しているかもしれない。
一応ノックはするけど
鍵が開いていれば自由に上がり込んで
必要なもの(データ)があったら
ちゃっかりいただいて来るかもしれない。
なかったら、手ぶらで出てきて
また次の人のお腹へ…。
みたいな感覚。

あれ〜?ドロボウ?
いえいえ、違います。
昔の長屋みたいな世界かなあ?
「ちょいと上がってくよ。」って
ふらっと他人の家に上がり込む感じ。
もちろん「上がってもいいよ」という許可を
与え合ったコミュニティの中での、
出入り自由。
そういう、ゆるやかなつながり
ネットワーク形成をします。

典型的右脳0型抽象的概念の羅列で
ますます混乱させてしまったら
ごめんなさい。

しかし、これこそ、
「シェア」という感覚の本当の実現。
ザ・シェア!!という気がします。

要するにインターネットの起源に
立ち戻るといったのは、
この「シェア」の精神が実現できる技術こそ、
インターネットの本質だからなんです。

私もかなりお世話になった
ナップスターは、音楽ファイルを、
ユーザ同士が、個々のコンピュータから
直接ダウンロードできる
「画期的な」ファイル共有システム。

扱うデータが「音楽」なだけに
著作権付き音楽データに関して
既存の権利概念とぶつかってしまったわけですが、
P2P技術は、音楽だけでなく
様々な形態のデータを共有するシステムとして
これから商業的にもかなりの可能性を
期待されています。

今、着々と実験されているP2Pサービスの一つ、
「NTT未来ねっと研究所」が開発している
SIONet(シオネット)。
これによって
・パーソナル放送局
・タクシー&屋台の案内サービス
・パーソナル映画館
などなど興味深いサービスを研究中だと
「NTT未来ネット研究所」の研究者の
星合隆成さんに教えていただきました。
今後楽しみなサービスがどんどん
出てくるでしょうから、またゆっくり
”ブローカレスな話”を伺おうと
企画してますから、よろしくー。

「力を集める」「知識を集める」という、
ネットワークだからこそできる特性を
フル活用できるのが、P2Pのおもしろさ。
しかも、コストをかけず、
労力的にも、物理的にも無理なく、
集めることができる。
これもP2Pの恐ろしいところと
言えるかも。いい意味で、だけど。

聞いたところ、
例えばナップスターのような、
世界中のコンピュータ上の
音楽ファイルの膨大なデータを
誰かがどこかで一カ所に集めて配信をする
システムをつくろうとしたら
ざっと数百億円と試算される仕事らしい。

第一、そんな莫大なデータをどこで
どうやって維持するの?
という話になるし。

でもナップスターは
散らばって存在する小さな力の
沢山のコンピュータを繋ぐことで
そのネットワーク全体を
バーチャル・スーパーコンピュータに
みたてちゃったわけです。
そうしたら、
ソフトの開発費くらいで
ほとんどコストがかからないで
実現してしまったのだからすごい!

このバーチャル・スーパーコンピュータを
利用して宇宙人を捜そうという
プロジェクトがありますね。
ご存じ、SETI@Home(セチ・アット・ホーム)。
"the Search for Extraterrestrial
Intelligence "

(地球外知性体探索プロジェクト)

やってますか?
はい、やってまーす。

これは分散コンピューティング
(Distributed Computing)
と呼ばれていて、
超センタンな研究に必要とされる、
気の遠くなるような計算をやるための
コンピュータ能力を
「分散」という形で提供します。
つまり、226ヵ国の3550623人のユーザ
(2002年2月18日現在)が
自分のマシンの使っていないリソースを
この研究プロジェクトに貸しているわけです。
もちろん無償で。

P2Pは、PCだけじゃなくて、
携帯電話とかPDAのような携帯端末に
取り入れられて、どこにいても、
よりカスタマイズされた情報サービスが
できるモバイルP2P
研究も盛んに発表されてます。

現在、P2Pの発展に向けて活動をしている
いくつかの有名なコミュニティをリストすると、 などがあるので、
ぜひのぞいて、P2Pの世界に入ってみてね。
きっとそこには「未来」があるから。
もちろん、セキュリティやプライバシーなど、
ハードルが沢山あるのは事実ですが
P2Pの可能性を考えると、それは乗り越える価値が
大ありだと思います。

いやいや、こうやって書いてみると、
全然全貌を書ききれなくて
P2Pの奥の深さにびっくりですけど
とにかく、注目間違いナシですよん。

そしてなんと!
私は来週「地球シミュレータ」の
研究機関を見学させてもらえそうです。
すごい楽しみです。
また何かおもしろいお話が
できるといいなと思ってます。

では、行って来ま〜す。
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参考文献:『PEER-TO-PEER 』
- Harnessing the power of
Disruptive Technologies -
(Editied by Andy Oram,
Published by O'Reilly & Associates, Inc.)

*1 文中ロボットと画像は無関係です。
marsha
Special thanks to Dr. Takashige Hoshiai

2002-02-25-MON

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