OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.70
- game and art 1 -


ICO に出逢う。

「この人の手を離さない。
 …ボクの魂ごと離してしまう気がするから。」

ico
こんなドキドキするセリフが聞こえる
ICO のテレビ CM が、
このごろ再びオンエアされていたので
ゲームの雰囲気はみなさんにも
届いているでしょうか…。

* * * *

ある日のこと、
ミュージシャンでもあり、
ゲーム会社にも勤めている
奇抜な友人のマサ斎藤くんが
「マーシャ、これ絶対やってみて。
 ゲームというよりアートとして、
 きっと気に入ると思うよ。」
と強力に推薦してくれたのが
ICO(イコ)』というゲームでした。
アドベンチャー RPG(*1) に属するものらしい。

「うーん、あたしはゲームやらないんだけどなあ、
 しかも RPG 系はどうも気短かな性分に合わないし。
 でも、昔はといえば、
 フライトのステイ先のホテルのベッドの中、
 ヒマに任せて8時間も9時間も
 テトリスとかドクターマリオとか
 没頭してたこともあるんだ。
 それに聞くところ、
 ICO はゲームらしくないゲームらしい。
 やってみようかなあ…」とだんだんその気に。

センタンにいたころは、
コンピュータグラフィクスにおける
先端技術の研究者の話を
聴講する機会が何度かあって、
やはりその分野のトップランナーは、
ゲームや映画制作であることと、
その現場ではどんな技術がコンピュータ性能の
発達と共に育っているのか、とかを
見聞きしてきたことだし。
それに ICO の人工知能の使い方も
すごく興味があるし、「やってみる!」と
ゲームを受け取ったのでした。
そういえばピクミンの、 そしてマリオの父の宮本氏にも
いつぞやお会いしたっけ…。
うん、ゲームに縁がありそうな気もしてきました。

だからいつもとは違う話になるけど、
ICO というなんだか「幽玄」を感じる
ゲームテクノロジー&アートの世界に
飛び込んでみようと思ったのでした。

というわけで、早速、
南の島でバカンス放浪中のフランス人、
フィリップ(ストイコビッチ似)の留守宅へ走り、
プレイステーション2を借りてきました。
「ワールドカップが始まったら、きっと
 プレステどころじゃないから大丈夫、大丈夫。」
なんて奥さんも言ってたし。
結局、予定の1週間じゃクリアできなくて
1ヵ月以上も借りてしまいましたが…。
(フィリップ、ごめーん。)

(*1) ロールプレイングゲーム。
プレイヤーは頭に角のある少年イコを操作し、
古城に囚われている謎の少女と一緒に、
城からの脱出をめざすアドベンチャーゲーム。


心に残る「絵」

ところで、話はワープしますけど、
先日シアターコクーンで上演された、
ギリシャ悲劇の「オイディプス王」。
そのカーテンコールの
野村萬斎さんと麻実れいさんに、
心臓をつかまれてきたところです。

もちろん、お芝居全体がすごかったために
カーテンコールが盛り上がったのですよ。
カーテンコールだけが凄かったのではなくて。
念のため…ですが(笑)。

共演者の挨拶が全て終った後に、
ステージ上のギリシャ神殿の奥に
純白の衣装で登場する二人の神々しさ
と言ったら、もう、あなた、って感じです。
オイディプス王役の野村萬斎の傍らに
王の母であり妻である(ぎょ〜)
イオカステ役の麻実れいが寄り添ってひざまずく。
このひざまずき方がまた優雅で芳しくて。

役者の美しさはもちろんのこと、さらに、
二人が立っているというその「風景」に、
客席からどよめきと共に起こる怒涛の拍手。
私も思わず手が痛くなるほど拍手。
「ひえ〜、うつくしい〜〜!」

舞台で、身体がどう動けば最高に美しく、
「絵」として魅せることができるのかを知り尽くし、
鍛え抜いた二人だからこそ描けるシーンであり、
それを知っている蜷川幸雄氏のニクイほどの企み。
その「絵」に、やられちゃいました。

で、実はそのとき、ICO のことを思い浮かべて
ゾクゾクしていました。

頭に角を持つ小さい男の子と
少し背の高い女の子が並ぶ構図。
バックグラウンドとのバランスの美しさ。
女の子の手を男の子がひっぱるときの
しなやかに動く女の子の身体の美しさ。

実際、コンピュータ性能が高くなればなるほど
グラフィクスの追求は激しくなるばかり。
そんな今のゲーム界の流れがある。
でも追いかけることでリアリティは保てるのか。
何が美しくて、何が美しくないのか。
それを追求しようと思った上田さんの感性と、
表現するための緻密な計算と能力。
そういうことが、「オイディプス王」の
カーテンコールを見ているうちに、
オーバーラップしてきて、涙。

何度も何度も見たくなる「美しさ」とは
どんなものなんだろう。
しかも、いつか見たような懐かしさや
つかむと壊れてしまいそうな切なさは
どう表現されたのだろう。

ICO の魅力

RPG なんてさっき言ってしまったけれど
実は ICO には、
セリフのテキストもなければ
武器を選んだり経験値を示すような
メニュー画面も無いのです。
登場する様々な道具や風景を
よくよく観察してヒントを探す。
そしてパズルを解いていく。

やってみると、ほんとに、
ゲームをやっているという感覚が
だんだん希薄になってしまうほど、
ゲームの枠を飛び越えているような、
なんというか、「異質さ」を感じるんです。

ゲームに取り掛かってからずっと、
それから終ってしばらく経った今も、
何かに胸をキュンとつかまれているような
切ない想いが刻印された余韻を楽しんでます。

たとえばミニシネマ上映の、
密度の高いヨーロッパ映画とかを観たあとに
じ〜んわりとやってくる充実感とか、
それからそれから、
なんだかよくわかんないけど
この人じゃないとだめなの、みたいな運命的感覚。
漠然と、でも確かな想い。
それはもしかして「恋?」みたいなそれ。

あるいは、人間の心の奥底に潜む、
誰もが共有している透明な感覚、とでもいうか…。
マクルーハンプロジェクトの
デリック・ド・ケルクボブ教授言うところの
「コネクテッド・インテリジェンス」つまり、
「集合知」に近いものを感じるということか…。

それを話すと、あっさりと
「それはきっと原体験と呼ばれているものでしょう。」
と説明してくれた、
ICO 制作ディレクターの上田文人さんと
プロデューサの海道賢仁さん。

このお二人にお話を伺うために、
マサ斎藤くんのお招きで、
ソニーコンピュータエンターテイメントを
トコトコ訪問することになりました。

さて次回から、このときのお話を
ご紹介しようと思います。
熱きワールドカップの興奮のあとは、
ちょっとなつやすみな気分で、
クールトーンな『ICO』を
お楽しみくださいね。

* * * *

ブロードバンド対応のこのサイトで
SCEI の広報の井上さんのICO の解説を
たっぷり聞けます。
http://www.d-levelup.com/softalk/200111/28/20011128.html

こちらはICOオフィシャルサイト。
映像を味わってみてください。
http://www.i-c-o.net/

***********************
今日のお知らせ〜

★ひとつめ。
「かれんちゃん」への
ご協力ありがとうございました。
かれんちゃんの手術が無事成功!!
といううれしいお知らせがここにあります。
http://homepage3.nifty.com/save-karen/about_policy.html

★★ふたつめ。
夏といえば「ウエノジャズイン」。
またビールとジャズを楽しみましょう!
SALTさんはじめ豪華な顔ぶれです。
詳しくはこちらで。
Ueno Jazzinn homepage


marsha
Special thanks to Ueda-san, Kaido-san, Koji-kun
and Sony Computer Entertainment Inc.

2002-07-25-THU

BACK
戻る