OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.160
- zukan 1 -


ベリーベリーラジカル!
──『図鑑に載ってない虫』その1



©2007「図鑑に載ってない虫」製作委員会
テアトル新宿ほかにてロードショー中


□どこまで行くんだ〜、おぃ〜。

あんなに待ちわびたテレビドラマ、
「帰ってきた 時効警察」が終ってしまい、
友だちと“霧山&三日月”遊びをやりながら、
なんだかセンチメンタルになっていたけど、
まだ秋は来ない‥‥。

そうだ、その前に夏だ!
夏といえば、三木聡の映画だ!
なんかお約束になってきた感じしませんか?
しませんか‥‥。

いや、もうそういうことですよ。
これを観ないと夏は来ない。
逆に言えば、これを観れば夏になる。
ほら〜、こんなに早く夏になっちゃったじゃないですか〜、
三木さ〜ん!

ますます“くだらなさ”はヒートアップ!
三木さん、どこまで走るんですか〜!?
と、追いかけるのに必死です。ヘトヘトですよ。
そんな「ドライブ感」たっぷり(宣伝文句です)な
新作が公開されたばかりです。

前に『ダメジン』で、
三木聡監督に長〜いインタビューをして、
そのときに聞いた次回作は、なんと、
「仕事の前にシンナーを吸うな」
というタイトルでした。
なんだその不謹慎なタイトルは〜!
と思ったけど、さすがに変更されて、
『図鑑に載ってない虫』になりましたね。

そのとき、4作目(次回作)は、
1作目の『ダメジン』っぽいですかって
聞いたんですが、三木さんは、

「うん。原点回帰というわけじゃないですけど、
 気持ちとしては“走りきりたい!”
 という感じの映画です。
 テーマは、1回死んだらどうなるか、っていう、
 “1回死ぬ薬”があって、それを飲んだらどうなるか
 ということを追うライター2人組の話です。」

とおっしゃっていました。
ここでおさらいしてください。

美人ドSな編集長(水野美紀)に、
「一回死んで生き返る“死にモドキ”について、
 一回死んで記事を書け」と命じられた、
ルポライターの“俺”(伊勢谷友介)は、
相棒のエンドー(松尾スズキ)と一緒に、
赤いスポーツカーに乗って、虫探しの旅に出ます。
元SM嬢で自殺願望のあるサヨコ(菊池凛子)も、
加わって“臨死体験の旅”が始まります。

今回は、三木作品には無くてはならなくなった
黄金コンビ(?)。
岩松了さん&ふせえりさんが、
「ヤクザ(目玉のおっちゃん)&その舎弟チョロリ」
というインパクトあるコンビを演じられていたので、
さっそくお話を伺ってきました。

ご存じ、「時効警察」シリーズでも、
抜群のコンビネーションを魅せてくれたお二人。

ふせさんは長年三木さんと一緒に
作品を作ってきたコメディ女優。
天才的でユニークな呼吸を持つ笑いと、
岩松さんとの絶妙な掛け合いで
最高に楽しませてもらってます。

岩松了さんは「ほぼ日」でもお馴染みの、
じつはスゴイ劇作家。
岸田國士演劇賞、紀伊国屋演劇賞個人賞など、
数々の賞に輝くマジメな方で、
私も舞台の岩松了さんをシリアスに拝見してました。
もしかしたら、「時効警察」の熊本部長としての
オヤジギャグな岩松了さんしか知らない人も
いるかもしれないですが、ほんとは、
“コワイ人”‥‥だとふせさんが暴露‥‥。
最近は、俳優としておもしろい映画に
引っ張りダコな岩松さんに迫ってみました。

どうぞ、あじわってお読みください。
まず、ふせえりさん編です。



── ふせさんと岩松さんは、
   前からのお知り合いだったんですか。


ふせ そうそう、岩松さんとはけっこう前から‥‥。
   厳しい演出の舞台もやらせていただいて。
   だから『ダメジン』で一緒になったとき、
   けっこう緊張して「岩松さんか〜」って。
   「あの岩松さんとやるんだあ‥‥」って
   感じはありました。


── お芝居の厳しい岩松さんと、
   共演するときの岩松さんの印象は、
   やっぱり違うんですか。


ふせ 岩松さんは、三木さんの作品に来るときって、
   役者さんとしていらっしゃるので、ぜんぜん、
   演出家の顔はありませんでしたね。


── 人が変わるんですかね‥‥。

ふせ まあ、そうですね。
   演出のときはかなり厳しいし、コワイですからね。


── 目ですかね。

ふせ 雰囲気も。この辺のオーラがもう‥‥、
   だってね、舞台の演出のときは、
   ほんとに冒頭10分のシーンに
   1ヵ月くらい稽古をやるんですよ。
   「はい、もう1回、はい、もう1回、ダメ〜、
    はい、もう1回〜」って。
   「他の役者さんはもういいですよ、1ヵ月、
    この稽古しかやらないんで、
    その間、来なくていいです」って。
   そういうのがあるんで、
   「はあ〜」って思ってたんですけど、
   ほんとにいい感じにいらっしゃって。


── 画面を観るかぎり、コワさは無いですが、
   なんか不穏な空気はいつも漂ってますね。


ふせ ねえ‥‥、やっぱりね‥‥。
   いま、どういう演出をされてるか、
   「もうやんないいよ、そんなこと」って
   おっしゃってるんで。
   「そんなにねばらない」って。


── 岩松さんの舞台はシリアスですから、
   テレビとかで観てる岩松さんとのギャップには
   「え〜!」って感じですけど。


ふせ そうですよ。私もなんとなく。
   岩松さんの魅力を三木さんが引き出している
   から、いいなーと思いますね。


── 三木さんは、そんなに
   ふせさんと岩松さんのコンビを
   考えていたわけじゃなかったと。
   でもやってみたらおもしろくて、
   っていうことをおっしゃってました。


ふせ そうかもしれないです。
   三木さんも岩松さんに出演を頼むとき、
   「やってくれるかな、
    劇作家の岩松了がOKしてくれるかな」
   って思ったみたいなことをあとで聞きました。
   最初は、ドキドキだったけど、
   「あ、いいよ」みたいな。
   岩松さんはよく知らないで「いいよ」って
   言ったみたいですけど(笑)。
   それが縁ですね。


── 三木さんの岩松さんへの申し入れも大胆ですよね。
   目の付け方が凄くて。
   そしてふせさんとコンビを‥‥。
   あれ? コンビなんでしょうか、お二人は。


ふせ そうなんですよ、困っちゃって‥‥。

── 困っちゃってますか(笑)?
   主旋律があるけど、必ず副旋律を
   岩松さんとふせさんが奏でてて、
   それが無いとなんかさびしくなります。

   ところで、『ダメジン』もラジカルだと
   思ったんですけど、
   『図鑑‥‥』はさらにラジカル度が
   増してるというか、尖ってるというか。
   それぞれのキャラが、
   すごい次元に行ってるなあと思いました。


ふせ 私のなかでは、
   べつにぜんぜん極めてないんですけど、
   どうなんでしょうね。


── いや、チョロリはスゴイと思います。
   チョロリキャラの作り方は、
   三木さんのアイディアなんですか。


ふせ 脚本に、チョロリという役で
   「角刈りをしたチンピラ」って書いてあって、
   それですね。


── それにしても角刈りは潔かったですね〜。

ふせ いまやっと伸びました。

── 撮影のあと「帰ってきた 時効警察」があったと。

ふせ そうです。
   だからなんか髪が意外と伸びるシャンプーとか
   使ったりね。


── うわ〜、そんなのあるんですか(笑)。
   チョロリの衣装もおもしろいですよね。


ふせ ベースは監督とスタイリストの勝俣さんとで
   ある程度出来てて。
   スカジャンは、私がちょっと提案したんです。
   そのほうがチンピラっていう、わかりやすい感じ
   じゃないですか。ま、いいかなーと。


── 動きも、歩き方とか、おもしろいし。

ふせ もしこれが大好評で、
   「パート2」とかになったとき、
   困るんですよね(笑)。
   チョロリをクローズアップみたいなね。


── チョロリ主演! いいなあ〜。

ふせ チョロリも憧れますよね。
   何して生きてるかわからない人ですから。
   なんかジジイをくすぐって収入得てるわけでしょ。
   謎ですよね。すごい憧れますね。


── チョロリは目玉のおっちゃん(岩松さん)が
   好きなんでしょうか。


ふせ 兄貴として好きだと思いますよ。
   そこに男と女は無く。ホントに舎弟というか、
   兄貴として尊敬しているんだと思うんです。


   つづく。

そうか〜。
チョロリはひたすら謎で(男?女?)、
ふせさんにとって憧れの人だと。
ふせさんもかなりの部分、謎ですけど、
それだけにものすごく憧れます。
謎は謎のまんまがいいんですね‥‥。

次回は、つづけてふせえりさんに、
三木監督のこと、オダギリ監督のこと、
伺っちゃいます。

お楽しみに。

****

ところで先日、日本で唯一の試写会に、
三木監督、伊勢谷友介さん、
テーマソングのナイス橋本さんが
登場して、爆笑の時間を過ごしました。


伊勢谷さんと三木さん、なんでこんなに離れてるの〜?

そのとき披露された三木画伯の
「図鑑に載ってなさそうな虫の絵」は
“耳むし”でした。


絵の横でうつむく三木監督(照れ屋ですよね〜)

ナイス橋本さんのエンディング曲
「夏の手紙」は、
謎だらけの不条理な煙を吹き飛ばす爽やかさ。
ちょっと山崎まさよしさん似な気が‥‥。
もっか私のiPodヘビロテ曲です。


ナイス橋本さん、ナイス!

『図鑑に載ってない虫』
ナイス橋本
カメイが行く


Special thanks to Eri Fuse,
Nikkatsu and Unplugged. All rights reserved.
Written by(福嶋真砂代)

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2007-07-01-SUN

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