vol.201
- Tengoku ha mada toku 1
●なんちゃないから…。
──『天国はまだ遠く』その1

□「最終回シリーズ」です。
長らくお待たせしました。
最終回をどうしようかと悶々と悩みつづけてこんなに
日が経って‥‥って、ウソですけど(笑)。
せっかくの最終回なので、
わたし自身のことを書いてももったいないし、
いまいちばん会いたいひと、
ふたりの方のお話をご紹介して
10年間の幕を閉じたいなと思っています。
もう少しだけ、おつきあいのほどお願いします。
ちなみに私の近況はシネマクロニクルブログで
映画のことからくだらな~いことまで、
まあ、いろいろ書いていますので、
そちらもよければ遊びにきてください。
さて「最終回シリーズ」第1弾は、
『天国はまだ遠く』主演の徳井義実さん。
今日はチュートリアルの徳井さんじゃなくて、
「スイッチオフ」状態の“素”の徳井さんっぽい感じで、
「俳優」として、いろいろお話うかがいました。
あのはんなりした京都弁で、
やっぱりすごく笑わかしてくれるし、
マジメでもあり、影もある‥‥。
映画の原作の瀬尾まいこさんの本を読んだときから、
私は登場人物の「田村さん」のファンで、
こんな人が理想の結婚相手だなあって思いました。
“森”みたいにただただそこにいてくれる人。
寡黙だけど、なにかとても温かくて、
主人公の千鶴が仕事や恋に疲れてしまって、
辿り着いた旅先の、
山奥の民宿「たむら」のご主人、兼、農業。
なにやらわけありの“影”がある人‥‥。
この役を徳井さんが演じるって聞いて、
すごくうれしかったのは、
役者、徳井義実を見たいと思ってたから。
こんなに静かな映画のなかで徳井さんを観られるって
ほんとに幸せだなあと思いました。
さてどんな方ですかね。
チュートリアルの徳井さんは「変態でエロ」
なんてよくおっしゃってますが、
きっとなんか違う徳井さんであってほしい(笑)。
またプチ連載で、ほぼ全文をお届けします。

(ハンサムバージョン>次回につづく)
□田村さんは“素”の僕にすごく近い‥‥。
── じつは芸人さんにお話聴くのは、
板尾創路さんに次いでふたり目です。
『人間椅子』っていう乱歩映画のときに
雑誌の仕事でお会いしてて。
徳井 へええ。光栄です。
── わあ~「ハンサム芸人」さんだ~。
徳井 いやいやとんでもないです。
チロルチョコ食べていいですか?(食べる)
── どぞどぞ。
今日は何本も取材受けてるんですね。
徳井 そうですね~。
映画ってこういう感じなんですね。
僕、よくわからないんで。
── 初体験ですね。
徳井 僕は初めての経験やし、
「あ~こういう感じなんや」って、
つねに発見があって楽しいんですけど。
ずっとこういう感じの毎日がつづいたら、
映画いっぱいでてる人なんかは、
そりゃ~キレるわ(とある女優さんのこと)って。
── (爆笑)そんな感じですか。
居心地はいいですか、悪いですか?
徳井 いや僕は楽しんでますけど。
でも毎日やったらね‥‥。
── まあ、映画は沢山の人がかかわってるし、
そんな作品のこと考えると‥‥。
徳井 最大限、ちょっとでも宣伝して、
観てもらえる人が増えるんやったら、全然、もうね。
── 徳井さん、マジメなんですね。
人のこともちゃんと考えてて。
徳井 ハハハ。でも仕事はね、マジメにやらんとね。
── 私はこの映画に徳井さんが出演される
って聞いてすごいうれしかったんです。
映画に出てほしいなってずっと思ってて。
徳井 えへへへ。ほんとっすか。
── でもテレビつけると毎日出てる人で、
朝から晩まで出てる日もあるし、
そんなイメージがあって‥‥、
徳井 あ~、たまにそんなこともありますね。
── そんなにすごいスケジュールのなかで
映画に出るって、
どうやってやりくりしてたんだろうって。
どっぷり専念できたわけじゃない‥‥?
徳井 そうですね~。
ほかのスタッフさんとかは、
この(ロケ地の)京都の宮津に1ヵ月とか、
ズドンと行ってたんですけど、
僕はほんまに4日来ては東京に戻ってとか、
最大でも1週間おらへんかったんとちゃうかな、
連続では。行ったり来たりしてましたね。
── じゃあ「田村さん」になるときは、
意識の切り換えをやるのは、
スイッチを入れる感じなのか、
それとも宮津に行けば自然に入る感じだったのか、
どんな感じでしたか。
徳井 けっこうこの役は“素”の僕にすごく近いんで。
芸人さんにもいろんなパターンがあると
思うんですけど、
僕、仕事のときは、完全に
スイッチをONにしないとできないんですよね。
で、スイッチをOFFにすると、
けっこう「田村さん」の状態になるんで、
バラエティの番組終って、スイッチを切ったら、
もうすーっとこっちに入っていける感じでした。
── へえ~~、ONはチュートリアルの徳井さんで、
OFFは田村さん、なんですね。
徳井 けっこうそうですね。
だから、きっとさんまさんとかはずっとONで、
ずっと「明石家さんまさん」でしょうけど、
でも僕は、けっこう普通のときは、
ほんとに普通の男なんで‥‥。
── そうそう、芸人さんで俳優やってて、
ちょっと二枚目な感じでドラマに出てた方って
誰かなあって思ったら、さんまさんなんですよね。
徳井 そうですよね。芸人がドラマとかに出るのって、
さんまさんが切り開いた感じですかね‥‥。
── さんまさんは、ドラマのときは、
二枚目のさんまさんで出てらしたけど、
でもやっぱり「芸人さん」のさんまさんだなあ
って観てた感じがしてたんです。
徳井 うん、うん。
── だけど、徳井さんって、
芸人さんじゃなくて、俳優さんが出てる~、
って気がする人なんです、私にとっては。
徳井 あ~そうですか。
でも僕、けっこうネタなんかでも、コントでも、
ウチのコントは、なんていうんですかね‥‥、
── エンギ系?
徳井 けっこう、エンギ系だから、
キャラクターに、その人に入るんで‥‥、
── ほんとにすぐ入りますよね。
その切り換えが、瞬時というか‥‥。
徳井 ハハハ。
── 一拍おいてとかそういうのナシに、
フッと入っていかれますから。
徳井 まあ、ねえ、漫才なんかでも、
フッと入るときって、自然に入らんと、
お客さんが違和感感じてしまったら
もう終わりなんで。
── アキバのオタクをやってるのを見たんです。
徳井 オタク?
── 秋葉原に俳優さんたちと遊びに行って、
どうのこうのっていう‥‥。
徳井 相方とふたりでしゃべってるやつ?
YouTubeの。
── そうそうそう。
すっごいおもしろくて。
メイドカフェの妹系とか、
ツンデレお姉さんの役とか、
けっこうすごい数の役をババババーッと続けてやる、
それもすごい速さで。それ見たら、
あ~、田村さんになるのは早いはずだわ
と納得して。
でも、そうか、スイッチ切ってるんですね、
田村さんは。
徳井 そう“切る”って感じですね、これは。
── ふ~ん‥‥。
それだけに、田村さんを観てたら、
徳井さんってこういう人なのかなあ~、
って思っちゃったんですよ。
徳井 僕、ほんまにこういう人です。
── 錯覚じゃないのか‥‥。
いや、錯覚かなあとも思ったんですけど、
錯覚じゃないんですね、じゃあ。
徳井 そうですね。
ま、この田村さんよりはエロイですけど。
田村さんがちょっとエロくなったら、僕。
── (笑)だって、田村さんは、
ふたりで同じ屋根の下で女性と何日も暮してて、
ナニゴトも無いし‥‥。
徳井 ですよね、僕は手を出します。
── しかも、加藤ローサちゃんですよ、相手。
徳井 ハハハ‥‥。
── それは、相手によりけり?
徳井 まあ、相手によりけりです。それは‥‥。
いや、ほんとにすごく似てます、田村さんと僕は。
(田村さんの)考え方がすごくわかります。
セリフとかも「あ~、そう言うな~」って思って。
── また京都弁だから、ほんとに自然ですよね。
宮津だと、地域的に少し違うとこもあるんですか、
徳井さんの話し方と。
徳井 ちょっと微妙にちゃうから、僕の話す京都弁とは。
リアルなこというと若干違うんですけど、
それでもやっぱり大阪弁になると
もっと違いますから、
かなりほんとにここの土地の言葉に近いです。
つづく。
いいですよね~。
徳井さんが持ってる独特の空気とか、間とか。
すごいおもしろいのに、どこか淋しげなとこ。
いや、そこがちょっと謎であり、
俳優として惹かれる魅力なんですけど、
徳井さんのなかにちらちらと見え隠れする「闇」。
そこ、聞いてみたいなあ~と思ってました。
聞けてるのか‥‥。
次回をお楽しみに。
★『天国はまだ遠く』

©2008『天国はまだ遠く』製作委員会
11/8~シネセゾン渋谷ほか全国順次ロードショー
Special thanks to Yoshimi Tokui,
Rie Kajita, Yumiko Yamazaki(Media Box).
Stylist:Chika Miura, Hair&makeup:Hajime Ito(Crollar)
Interview, writing, and photos
by (福嶋真砂代). All rights reserved.
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