ピーコ |
私は『ピーコ伝』でも何でもいいけど。
まあそれは、私の問題じゃなくて、
本を作る重里の問題なんだから、どうぞ。
そのタイトルで、いいんじゃない? |
糸井 |
俺はこのタイトル、とてもいいと思うんです。
「『ピーコ伝』ってどう?」と知り合いに聞くと、
みんなが喜ぶわけよ。みんな、読みたいって。 |
ピーコ |
わたし、おでんの鍋に入ってるみたい。 |
糸井 |
(笑)あははは。
もう、どんどん走るねぇ。オッケー。
今日ここで話すぶんというのは、
「どういう本にしましょうか」の打ち合わせを
そのまま載せちゃおうと思ってるわけです。 |
ピーコ |
これ、何回もやるの?私の。 |
糸井 |
今日、1回やってみて、
そのあとで、何回か話せば、本になると思います。
好きなようにしゃべってくださって、いいですよ。 |
ピーコ |
重里からの質問で、いいの。
わたしは、
人からインタビューされることがないので。
橋本龍太郎に似てて。
・・・この前、
橋本龍太郎のことを竹下登が書いていて、
それを読むと、橋本龍太郎は頭がよすぎるから、
相手が何かを言おうとしてあまりうまく言えないと、
それを先にとって言っちゃうんだって。
私もどっちかって言うと、
この人の言いたいことがわかっちゃうと、
わかったわかったこうでしょって言っちゃうから、
インタビューにはならないんです。
インタビューしてくれる人がいないから、
ちゃんとしてくれる人がいると
うれしいなあと思ったの。 |
糸井 |
なるほどね、そういえば一般的にも、
そういう役割で考えるいいインタビューアーって、
そうはいないね。 |
ピーコ |
わたしの口調なはずなのに、
誰かが書くと、わたしの口調じゃなくなって。 |
糸井 |
そりゃそうだ。 |
ピーコ |
どこかの頭の中で、
いつもわたしが「そうなのよ」って
言ってるように書かれちゃう。
ほんとはそうじゃないけど、
それを言うと面倒臭くなるから、
インタビューを、
あまり受けたくないんです。 |
糸井 |
わかるわ、それ。 |
ピーコ |
「こんな口の利き方したっけ?」
って、読むと思うんですけど。
なんかまず作る人の側に先入観があるから、
語尾をこういう風に書けばいいとか、
そういうふうになるみたい・・・。
ほんとはそうじゃないけど。 |
糸井 |
東京に住んでて、
普通に会話してる男の人たちのしゃべりを
そのまま書くと、女言葉を
たくさん使ってるように見えるもんね。
「・・・そーなのよ」とか。 |
ピーコ |
わたしは
「わたくしは」って、言ったりするでしょ。
それを「アタシはさぁ」って書かれたりするの。 |
糸井 |
そりゃ、やだね。 |
ピーコ |
「アタシ」っていうのは、そうとうに
質の悪い女が、言っているってことなのに、
いつも「アタシは」って書かれたりするわけ。
・・・わたしは子守りの女じゃないんだから、
自分のことは「わたし」って言うけど。
だから、清原が「ワシ」とか「ワイ」って
書かないでくれっていうらしいんだけど、
それ、すごくわかる気がする。 |
糸井 |
カギカッコの中の文章って、
その人の責任の発言になるから
本人がOKしない限り、
いじったら、だめですよね。
カギカッコの外に書かれるぶんなら
勝手にバカがまとめたんだと言えば済むけど、
カギカッコの中はまずいよね・・・。
野球選手、みんな怒ってるよ、
「ワシ」と書かれることについては。 |
ピーコ |
そうでしょ?
でも、わたしたちの中にも、
野球選手に対する先入観ってあるじゃない?
頭の中は筋肉で、何を食べるって話と
あそこに行けば女を抱けるって話しかしてなくて、
あと、ちょっとお金の話をするとか・・・
で、あとは全然なんの話しても
おもしろくない、っていうような。 |
糸井 |
うわあ。 |
ピーコ |
だってだいたい、
世の中で何が嫌いかって言うと、
長嶋をあんなにうれしがっている人を見ると、
具合が悪くなるの。
わたしは、もともと自分のことはさておいて、
バカな人が嫌いで・・・。
だからまず、長嶋をよろこぶ人が嫌いだから、
野球ってそんな好きじゃないのね。
・・・野球はスコアブックを
付けられるくらいには、知っていますけど。 |
糸井 |
え?
いま、大どんでん返しを入れたね、
だって、野球を嫌いな人で、
スコアブックを付けられる人って、あんまりいないよ。 |
ピーコ |
それは、話すと少し長くなるんですけど。
(つづく) |