ピーコ |
よく考えたら、好きになって、
その人とお話をしたい時に、
何の話をするのが
いちばんうまくスムーズにしゃべれるか、
特に口が重い人と話すためには、っていうと、
その人が一番好きなものを
まず自分が知らなければ覚えることでしょ? |
糸井 |
うん、そりゃそうだ。 |
ピーコ |
だけど、釣りとかそういうのは
ちょっと嫌だけど。 |
糸井 |
(笑)ああ、それはねえ。
俺は別にそういう関係じゃないから、
別にピーコが釣り好きじゃなくても、いいけど。 |
ピーコ |
釣りとかそういう
実践的なのはダメなんだけど。 |
糸井 |
ふーん。
でもともかく、その姿勢は、
今の仕事になることができるように、
もう昔から、運命が向いてたね。 |
ピーコ |
どうだろう?
だってこの仕事になってからは、
好きな人って、できないから。 |
糸井 |
そういうふうなかたちで、
世界を共有したいなっていう気持ちは、
その後に、ないの? |
ピーコ |
若いお友だちは、いるけれど。
昔もそうだけど、どうしても
女の人を好きな男の人が好きだから。 |
糸井 |
はあ・・・。ふられる運命なんだ。 |
ピーコ |
ふられるっていうか、わたしのほうも、
できれば変な感じにはならないで、
お友だちでいたいって思うわけだから。 |
糸井 |
あ、そのへん、難しいところだね。 |
ピーコ |
そういうところ、男の人って面白くて、
本当に女が好きで、男が好きじゃなくっても
こっちが「好きだ」って言っていると、
人の見てないところでは手をつないでくれたり、
腕組んでくれたりは、するのよ。
まあ、もう35年も前にそうだったわけだから、
私なんか「変なもの」みたいなものだったわけでしょ?
その当時は。
・・・ま、今でも変なものとして
面白がられているけど、ある意味では。
例えば、そういう感じでは、
わたしの好きだった木場で材木問屋の
次男坊さんのおうちのお母様は、
すごくかわいがってくださった。
そこのお家に行けば私のごはんもあるし、
お布団まで敷いてあるし、
妹さんとお友だちになって、
お姉さんと2人で
洋服を作る時の
お客さんになってくれたり、
っていうのをしてくれたから・・・。
今でも何かあれば、連絡をとってます。 |
糸井 |
「かわいがられること」の天才なんだよね。 |
ピーコ |
かわいいかどうかは、わからないわよ? |
糸井 |
まあ、いわゆるかわいいかどうかは別としても。 |
ピーコ |
いやな感じ。
こんな感じのインタビューが
長く続くとは思わない(笑)。 |
糸井 |
(笑)まあ、正直にやりましょうよ。 |
ピーコ |
(笑)正直にやってるわよ。 |
糸井 |
いわゆる「かわいい」っていうのと、
「かわいがられる」っていうのは別で、
でも「かわいがられる」って、あるじゃないですか。
この子とは、もっといたい、とか、
そばにいたらいいだろうなあ、と、
ピーコはいつも、
思ってもらえるわけじゃないですか。 |
ピーコ |
わたしは自分が
その場所にいたいからいるんで、
いたくないところだったら
さっさといなくなっちゃう人だから。 |
糸井 |
そうか、相手にしてみれば、
ピーコさん側に選ばれているわけですよね、
逆に言えばね。 |
ピーコ |
そう、私のほうが
選んでるってことになるんだけど、
ただ、お金目当ての「じじい転がし」
みたいなことは、しない。
どうしてこんなに嫌われるのかと思うくらい、
いわゆる、ただ金持ちなだけのじじいとは、
縁がないわね。そういう金目の話はない。 |
糸井 |
金持ちの人って、
もっと、ほめて欲しいわけでしょ?
ピーコさんに。 |
ピーコ |
わたしは、そういう人を、ほめないもの。
そうか。お金持ちのおじいさんは、
限りなくほめることのできる人がいいのね。 |
糸井 |
たぶん、力のある人って、
「お前もおれを好きなのか?
じゃあおれもお前を好きになってやろう」
っていうタイプなんじゃないの? |
ピーコ |
わたしはその反対なのよ。
こっちが好きって言ってるのに
向こうはあんまり好きじゃないっていう
態度をしてる人を、ずーっと追っかけていたいの。 |
糸井 |
(笑)むつかしい人だなあ。 |
ピーコ |
こう、振り返ってもらっちゃったら、
わたしは、さっさと逃げていくというか。
ずーっとわたしを好きじゃないっていうか、
どこか冷たい人が好きなの。
なんかすごく「好き好き好き」って、
一人で言っていたいの。 |
糸井 |
でも、その気持ちは、
誰にもちょっとあるのかもね。 |
ピーコ |
そう?
好きって言われていたい人も、いるでしょ。
でもわたしは、好きって言われると、嫌。
だって、面倒臭くなるんだもん。
それだったら、
自分は何もしなくてよくなるじゃない?
わたしは、その逆で
「好き好き好き」って言いながら、
いろんなものを買ってあげたりするのが、
好きです。 |
糸井 |
親と子の関係なんかもそうかもしれないね。
親は子どもを好きじゃないですか。
でも子どもは離れていくじゃない。
ピーコさん、もしかしたら、
「お母さん」なんじゃないの? |
ピーコ |
・・・うちには、そういうのがなかったけど。
うち、離れていくとこがなかった。
離れたときは死別だからさ。
父親はどうでもいいんだけど、
母親のことは、すごく好きだった。
マザコンじゃなくて・・・
どう言えばいいんだろう?
(つづく) |