ピーコ |
今は、会いたいと思うわよ、母親に。
36歳くらいで死んだのに、その頃の
私はバカで、意識が足りなかったから・・・。
男の子を産んで、その双子が
両方とも孫を見せることもできないっていう。
母には、詳しくは言ってなかったけど、
きっと、わたしたちのことを知ってたと思う。 |
糸井 |
言ってなかったの?
「シスターボーイかしら」とか、思われなかった? |
ピーコ |
言葉をいま話すみたいに使っていたのは、
ちっちゃい頃からだったから。
小学校のときから、こういう言葉なんだから。
直せって誰も言わなかったの。
父も言わなかったし、母も言わなかった。
学校の先生も言わなかったし。
それでいじめられたっていう覚えはないの。 |
糸井 |
ふーん。それはやっぱり、それ以外のところで、
すごく取り返してたんでしょうね。別の要素で。 |
ピーコ |
おすぎもそうなんだけど、
小学校から、どういう事情があるのかは
わからないけど、ずーっと
クラス委員やってたからね、2人とも。 |
糸井 |
この言葉のクラス委員か・・・。 |
ピーコ |
あのね、いじめられるってのが
なかったっていうのは、理由があって。
クラスや学年の中で、
一番不良っぽい子、悪そうって子、
あとは野球や柔道ですごいっていう子と
すぐに友だちになるの。
だから、私に何かをしそうな子がいると
その人たちが、ついていってくれるの。 |
糸井 |
なるほど、
「こいつをいじめるとおいらが許さねえ」
の世界? |
ピーコ |
そう。
だからいじめられたことはない。
もうひとつ、わたし、嫌な奴でね、
職員室に入り浸ってるの。 |
糸井 |
職員室には強いわ、不良にも強いわ、
しかもできる子ね。
どうせ、勉強できる子にも強かったんでしょ? |
ピーコ |
そうよ、勉強できる子しか
お友だちにいなかったもの。 |
糸井 |
じゃあ三権を握っているわけだ。
でも、そういうタイプの嫌な奴だとは、
みんなに思われなかったの?
「取り入りやがって」みたいな。 |
ピーコ |
そういうことはない。
ちゃんとこっち側の意見を、
先生に伝えてあげるんだから。 |
糸井 |
通訳のような。 |
ピーコ |
早く言えば、ね。
今は先生は生徒に
そんなことをさせないと思うけど、
わたしは学校が終わっても
残って先生のお手伝いを
してあげたりしてるでしょ? |
糸井 |
常に相手に何かをギブしているわけだね。 |
ピーコ |
テストの採点もしていたんだから。
今はそんなことをしたらプライバシーだけど。 |
糸井 |
へえぇ。 |
ピーコ |
誰が何点だか、みんなわかっちゃう。
それとあと生徒会もやっていました。
戦後すぐの昭和20年の1月に生まれたから、
中学に行くのが1957年くらいでしょ?
まだ1957年くらいってGHQが強かったから、
中学の生徒会の予算っていうのは、
何でも生徒の自主に任せるっていう時で。
「生徒会の学校からの予算はこれだけです」
という中で、生徒会長は予算委員を作って
各クラブに予算を出せて、会議をするんだけど、
わたしはそういう時には、いつも生徒会長よりは
副会長みたいな子の役をやっていました。
各部が部費を取りにくる会議を仕切ったり。
そういうことばっかりやってたから。 |
糸井 |
幹事長だね、自民党幹事長みたい。 |
ピーコ |
そういう意味ではいやな人だったから、
私に嫌なことをしたら予算削っちゃうとか・・・。 |
糸井 |
(笑)一貫してわがまま放題。 |
ピーコ |
先生とも通じてるし、
悪い子たちとも通じている以外にも
その時々の学校のスターとも通じるの。
小学校だったら1年に入って、
わたしは目立つわけでしょ?
双子で女言葉をしゃべっているから。
でもそういう時に、
こっちがすぐに仲良くなるのは6年生の子。
6年生の子にかわいがってもらってるから
誰も、わたしをいじめられないのよ。
それで先生にべったりでしょ。
昔の私みたいな子がもしそのへんにいたら、
今のわたしだったら、絶対ケンカする。 |
糸井 |
(笑)そういう存在は、
2人いたらダメだよね。
でも、おすぎさんがいたんだ? |
ピーコ |
でもおすぎも同じようなものだったけど、
わたしたちはずっと一緒っていうか、
「御神酒どっくり」みたいなもんだったから。 |
糸井 |
似たようなことをしてたんだ。
あのさあ、ピーコさんのほうが、
お兄さんってことになってんだよね?
それって、ただ単に後から生まれたから? |
ピーコ |
うちは先に生まれたからだって。 |
糸井 |
それいろいろ法則があるんだよね。 |
ピーコ |
日本では、あとに生まれたほうが兄だけど、
アメリカでは先に生まれた方が、なんだって。
わたしたちのお産婆さんは、
アメリカの人のお産もした人らしくて、
「どうして、先に空気を吸った人が弟になる、
そんなくだらないことはないわ」
って、先に生まれたほうを、うちでは兄にしたの。
(つづく) |