糸井 |
双子って不思議だなあと思うんだけど、
同じ素材で、同時期に生まれたのに、
やっぱり、
自分がお兄さんだという意識はあるの? |
ピーコ |
それは、そう育てられちゃうからね。 |
糸井 |
お兄さんとして? |
ピーコ |
それはもうそうよ。それは親の育て方よね。
「あんた、お兄ちゃんなんだから」って。 |
糸井 |
俺、そんな基本的なことを知らないわ。
双子って、対等だと思ってた。 |
ピーコ |
だから、おすぎは全然わがままよ。 |
糸井 |
(笑)そういう差があるんだ。
おかしいなあ、そういうの。 |
ピーコ |
あの人は母親に
相当甘やかされて育ったから。 |
糸井 |
双子で一緒の時間を共有してて、
なんで「あの人は」ってなるのかが、
わからないなあ。おもしろい。 |
ピーコ |
母親というものは、この子は1人でも
やっていけるって思う時には、突き放すでしょ?
だからほんとに、あの子にべったりだったもん。 |
糸井 |
ちょっとは悔しかったりするの? |
ピーコ |
母親には聞いたわよ、「どうして?」って。
おすぎには言わないけど・・・。
そうしたら
「あの子はちょっと心配だけど、
あんたはいいでしょ」
っていうことを、母親は。 |
糸井 |
同じ日に生まれて、ほんのちょっと
先に空気を吸っただけで、そんなに役割が違うの? |
ピーコ |
それは、明治時代に生まれて育った父母だったから。
やっぱり、昭和20年くらいに生まれても、
母も父も明治生まれっていう人は
あんまりいなかったから、珍しいかもしれないね。 |
糸井 |
お父さんはどういう人でした? |
ピーコ |
戦争前はすごくいい暮らしをしてたみたい。
横浜に工場があって、父はその工場があったために
戦争に行かなかった人だから、軍の工場で。
軍需工場みたいな下請けのほうだと思うけど。
だけど焼け野原になって、
わたしたちが生まれてからは、ずっと貧乏だった。
経営の能力があまりなかったんだと思う。
借金取りが来てたことを知ってるから。
それは、戦争前のお金だったかもしれない。
父親はずーっと自分の家っていうのを
持たないで借りてたからね。
ひどいときは間借りだったし、
あとはお家を借りても自分の物じゃなかったし。 |
糸井 |
なるほどなあ・・・。
あ、ちょっと話を止めていい?
おれ今話を聞いていてだいたいわかったんだけど、
このインタビューは、
時系列で聞いていったほうが、
流れとしておもしろいと思った。
どうもピーコさん、
俺が思っていたよりも何十倍も記憶力もいいんで。 |
ピーコ |
(笑)「俺が思ってた」って、
どのくらいで思ってたのか教えて。 |
糸井 |
いやあ、
うすうす記憶力系の人だとは思ってたけど、
全然その上の上をいってるね。
話の再現性がすごい高いからさあ。
映像が出てくるもん。
だから、こうなったら、
オギャーと生まれた時からの話を
順番に聞いていくかたちにしない? |
ピーコ |
(笑)オギャーって生まれた時は、
わたしは知らないわよ。 |
糸井 |
(笑)また、そういうことを。
三島由紀夫じゃないんだから。 |
ピーコ |
三島由紀夫でも淀川長治でもないんだから。 |
糸井 |
最近、ぼくの知りあいで、
精子のときの記憶がある奴がいるの。
親父の金玉の中で、ぶらぶらしてたって。 |
ピーコ |
私はあなたのおともだちを、
まともだと思ったことがない(笑)。 |
糸井 |
(笑)まあねえ。
でも、時系列に聞くのが一番いいでしょ?
いろんな作り方があるとは思うけど。 |
ピーコ |
でもさあ、私の自伝みたいなものを聞いて、
おもしろいの? |
糸井 |
それはすごく、おもしろいよー!!!
何か、ぜんぶが入ってるもん。 |
ピーコ |
じゃあこれからは時系列にして、
どんどんウソ言っちゃおうかしら(笑)。 |
糸井 |
いいよー。
ウソを言ったら、もう1回、
そこのところに立ち止まるから。
それに
「これは言ったけどもう一度話しておいて、
あとで活字にまとめる時には省きましょう」
とか、そういうところは、調整できますけど。 |
ピーコ |
早く言えば、関わった中で、
まだ生きてる人の話は、
できにくいかもしれないです。 |
糸井 |
当然、そうですよね。 |
ピーコ |
まあ、「生きてるから」っていっても
何もないといえばないんだけど。 |
糸井 |
例えば、さっきの
「仕事の相棒のいい男」なんかは
仮に深い関係があったりすると、
活字にしたら困るだろうけど、
ピーコさんの場合は、
ただ楽しく遊んでくれた人ですよね。 |
ピーコ |
深い関係なんて何にもないわよ。
あの人の場合・・・どうなんだろう?
わたしの気持ちは、わかってたんじゃないの?
わかってなきゃ、ああいう親密さにはならないから。
周りでは「私はあの人を好き」ってことを、
みんなに認めさせちゃっていたし。
それは、今でも。 |
糸井 |
(笑) |
ピーコ |
私は好きよって言って、周りはみんな
「あの人はピーコさんが好きな人なんだ」
っていうふうになっちゃうの、今でも。 |
糸井 |
言いまくるの? |
ピーコ |
言いまくるじゃないけど、
一番困るのは、スタジオに
タイプの子がいると落ち着かないけど、
いないとほんとによく仕事が出来る(笑)。 |
糸井 |
(笑)はあ……。 |
ピーコ |
おすぎはね、タイプの子がいれば、
もう、テレビカメラのコードを引っぱったりして、
失敗してもいいんだって。
どうしてって聞いたら、
「すっごいつまんない仕事でも
その子見てれば時間が過ぎる」って言うのよ。 |
糸井 |
ふたりは、ぜんぜん違うんだ。 |
ピーコ |
いやあ、私は・・・。
いたほうがいいわよ、かわいい。 |
糸井 |
(笑)やっぱり、うれしいんだ? |
ピーコ |
もちろん。
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