ピーコ |
でも私は、好きだからって
体をくれとか言うわけじゃないし。 |
糸井 |
へえ。そこ、聞いてみたいなあ。
そういうところは、やっぱりストイックなんですか? |
ピーコ |
セックスって・・・
こういう話はあんまり好きじゃないけど、
この歳になって、もし何にも知らない、
女の人しか好きじゃない人が
初めて男の人と寝るとするじゃない?
そうすると、やっぱり気持ちがいいほうが
いいと思うじゃない。
・・・でもわたし、
ちゃんと誰にも教わらなかったし、
そんなにいろいろとしたことがないから、
もう「寝べタ祭り」だと思うのよ。
だからその人とそうなっちゃうのは、嫌なの。 |
糸井 |
苦手なジャンルのことなんだ。
得意じゃない? |
ピーコ |
早く言えば、好きな人と何かがあったとして、
「何だ、下手じゃないか」とか、
「歳とって太ってるじゃないか」とか、
そういうふうに思われるかもしれないと
想像するだけで、もう、萎えちゃう。
だから、セックスはしなくていい。
せいぜいキスくらいでいいの。
だいたい、手を握ってくれたりしただけで、
1週間くらいポーっとしてられる人なの。 |
糸井 |
わあ。それはそれで、もう幸せだよね。 |
ピーコ |
でも、紳助がさあ何年か前にわたしに聞いたの。
「セックスしてないの?」
「うん、あんまりね」
「じゃあ、オナニーは?」
「疲れてさあ、
そんなことするような余力があったら
別のことをするわよ」
そしたら紳助が、
「ふーん、じゃあ体にある精液が
全部固まって、チーズみたいになってんだ?」
そう言われてから、
チーズ食べられなくなるくらい気持ちが悪かった。 |
糸井 |
それは、想像すると嫌だね。 |
ピーコ |
嫌でしょう?
そういうことを言う人も、いるのよ。 |
糸井 |
それは、世の中には、いわゆるお金だけを
崇拝しているお金教の人もいるけど、
それと似たような「性教」の人もいるからさー。
性もある種の宗教だからね。 |
ピーコ |
わたしは、下手なら、
セックスをしないほうがいいと思うわけ。
やっぱりわたしみたいな性格だと、
自分が気持ちよくならなくっても
相手に気持ちよくさせたいと思うわけじゃない? |
糸井 |
サービスが、「命」なんだね。 |
ピーコ |
フェラチオが上手とか、
そういうのならいいけど、
そういうこともちょっとしたことないし・・・。
確かに、男を好きな人で
それに命をかけている人も知っているし、
まわりにはホモもいるんだけど・・・。
ホモの雑誌を読んでると、すごいじゃない? |
糸井 |
ホモの雑誌は、読むの? |
ピーコ |
だって送られてきたりするんだもの。
『薔薇族』とか。 |
糸井 |
多少は好きなの?読んだりするの。 |
ピーコ |
送られたら読むくらいだけど、
純愛路線物ばっかりなのとか、
ホモのSMみたいなのとか、
それからデブ専だとかそういうのがあるの、
それを片っ端から見ると、
「ああいろいろあるんだわ、
太ってても年寄りでもセックスするんだ」
と思いながら、それでも自分はしないと思うのね。 |
糸井 |
冷めてるわけではなくて、いつもぽかぽかと
暖かい気持ちで恋心は抱いてって感じ? |
ピーコ |
でもね、体にはいかないから、
きっとこのまま、
ドライフラワーのようになって死ぬのね。 |
糸井 |
すごいバーチャルな恋愛だね。 |
ピーコ |
誰かとセックスをする夢を見る、
とかっていうのもあんまりないの。 |
糸井 |
それはたぶん
「スポーツ嫌い」みたいなもんですよね。
こんなにお互いに好きあっているんだから、
別に試合しなくったっていいじゃないか、みたいな。 |
ピーコ |
スポーツは、嫌いよ。
そういう人って、いるの? |
糸井 |
あると思うよ。
ぼくなんかはきっと、ピーコさんから見て
すっごいスケベな人だと思われてると思うけど、
その気持ち、半分くらいわかるよ。 |
ピーコ |
え? わたし、あなたのことを
スケベだとは思ったことないわよ。
ちょっと変わってる趣味の人だとは思う。
普通は女優のだんなさんなんかに
なるのは、面倒臭いもん。 |
糸井 |
いや、なかなか楽しいですよ。 |
ピーコ |
それは、あの人がいい人だからよ。 |
糸井 |
まあ、いい人ですけどね。 |
ピーコ |
だからそれだけよ。
私はいっぱい見てるじゃん?
だいたい女優さんと結婚をして
うまくいってる人って、あまりいないもん。
みんな女優さんのほうが我慢してるか、
男のほうが我慢してるかですから。 |
糸井 |
そうだよね。
(つづく) |