ピーコを、チェック。
杉浦克昭自伝的対談。

第9回 ひとりのほうがいい。




ピーコ それに誰かとすぐに
一緒に暮らしたがるホモもいて、
「え?また別の人と暮らしてるの?前のは」
そしたら、「もうやめたの」って
言う人もいるけど、
どうしてすぐ別の人と暮らせるの? 
私はもう嫌。誰かと暮らすのって。

もの珍しいから、2、3日は
いじったり触ったりするかもしれないけど、
同じものばっかり見てれば、2〜3日でね。
それに、触ればすぐに
立っちゃうような男じゃつまんないし。
糸井 (笑)
ピーコ だから、ひとりのほうがいいの。
好みってあるじゃない?
生活感のない部屋で、
好きな絵を飾ってあって、
季節が変われば絵を替えて、
お金がちょっと貯まったら部屋を替えて、
家具も替えて・・・。
自分のごはんは自分で作れるし、
お掃除も上手だし、洗濯も上手だし、
何の苦もないわけじゃない?
糸井 その話、おもしろいです。
自分をものすごく
よく知ってる人の発言ですから。
みんなは、そんなに自分のことを
よくわからないから、
何かをやってみては、失敗してるんじゃない?
ピーコ でも、そういうことってない?
好きだと、相手のことを一生懸命知ろうとするけど、
体を知るよりか、
もっと奥の方を知りたいと思う。
何を考えて生きてるんだろうかっていうことに
興味があったりするっていう。

いまわたしがすごい好きなぼうやは、
仕事のことはちゃんとやってるんだけど、
自分のことは、いっさい口をきかなくて。
そこを話しているのがおもしろい。

人を好きになっちゃうと、
洋服も1年間は春夏秋冬、
ぜんぶ揃えてあげなければダメでしょ。
「私と歩くんだから、変な格好しないで」
っていうふうになると、ぜんぶ作る。
それがどんどん、似あっていく。

私と歩いてるときには、
ふだんの職業の人には見えないの。
私といる時だけは絶対に汚い格好をしないで、
って約束させると、ちゃんと似合う。
それは、とても楽しいわよ。
糸井 ・・・えーっと。
今の話は「おのろけ」なんですか?
ピーコ (笑)じゃないわよ。
さっきの、
「セックスがない」ということを。
糸井 (笑)あ、そうか。
そこから来てるんですか。
だけど、ちょっとそういう
ピーコさんの気持ちって、
聞いていると「来る」ねえ。

うーん、なんていうの?
育っていくところを見ている暖かいまなざしと、
それに応えている姿っていう交歓がさあ・・・。
なんか、ちょっといいね。

つまり、全部が無性になっちゃった感じが
ピーコさんのユートピアなんだね。
「性なし」みたいになっちゃうのが。
ピーコ その彼とも、年中会ってるわけじゃないのよ。
今もひと月に1回しか会えないんだから。
また、電話はかけてこないし、
こっちから電話かけるか、
かけても出ないっていう、とても特殊な子なの。
糸井 あの、映画の中の高倉健みたいなものだね。
ピーコ うーん、似てるかもね。
糸井 本当にいる健さんは別として、
映画の中にいる健さんは
そんなふうな役をするじゃないですか。
ピーコ 私、健さんてって女々しそうで嫌いなの。
糸井 女々しそうな健さんをぼくは知らないけど、
でも女々しくない男なんかいないですから。
ピーコ 女々しいっていう言葉がいけない、
って言われりゃそうだけど、わたしは、
比較的女みたいだって言われていても
決断も早いし、人のいうこと聞かないし。
糸井 ほんとは男性的だよね。
ピーコ そうよ。
いわゆるおかまの方が、
みんな男性的よ。
糸井 そうだなあ。
ピーコ だってさあ、ウジウジしてる男は、
いやだもん。
「何で決まんないの、こんなことが」って。
糸井 俺、どこからそうなったかは、
わかんないんだけど、
ピーコさんが、昔、意識的に
「オカマの双子でーす!!」
ってやってたときと、今と
見えかたが、ちょっと違うよ。

やっぱり、見ていても無性化してるよ。
歳取ったからっていうせいもあると思うけど、
どんどん、生臭さがゼロになっていくじゃない?
ピーコ あの、はっきり言って、
今つきあっているぼうやも、
母親は私よりも下なのよね。
お父さんはもうちょっと上で、
お父さんの年齢に近いんだけど、でも
「年齢が離れていて、嫌じゃない?」って聞くと、
「いやあ、親父とか母親とかとは全然違うから、
 何でもしゃべれるし・・・」
って。


(つづく)

2001-04-26-THU

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