ピーコ |
好きになった子と付き合ってると、
あまり年上って思われないみたい。 |
糸井 |
それは、ちょっとわかるわ。
ピーコさん、そうだもん。 |
ピーコ |
でもね、56歳の人と話してれば
56どうしの話になるし、
無理に年下の人に合わせることもないよ。 |
糸井 |
みんながそういうふうになったらいいよね。 |
ピーコ |
どうなんだろう、
おもしろくないんじゃないの? |
糸井 |
いやあ、そうなったら、ラクだと思うよ。 |
ピーコ |
何で?
わたし、大変よ。
ラクじゃないのよ、いま、こうやっていても。
それは大変なんだから。
・・・人に大変だと思わせないことが、大変なのよ。 |
糸井 |
ピーコさん、大変? |
ピーコ |
大変よ、お金もかかるし。 |
糸井 |
そりゃそうかあ。 |
ピーコ |
いい人でいなきゃいけないし、
ウソも・・・いい人であるためのウソも付くし。 |
糸井 |
いま喋っていても、そこまでの本音を、
ピーコさんなら言えちゃうじゃん。
そのラクな感じは、あるよ。 |
ピーコ |
そういう意味では、
わたしははじめから
「オカマよ―っ!」
って言っているから、ラク。
隠していないから。
これは隠してる人は大変だと思う。
それも男が好きだっていうのを
隠してるだけじゃなくって、たいがい
セックスも男としたいっていう欲望も
隠してるわけだから。
そこがわたしはないわけだから、
ちょっとラクだとは、思う。 |
糸井 |
おかまを隠してるっていうのは
わかり易い例だけど、
違うところでは、
みんな何かを隠してるじゃない? |
ピーコ |
でも、隠してない人なんか、
つまんないじゃない。 |
糸井 |
ああ、なるほどねえ。
そりゃそうだ。
いやあ、おもしろいです、やっぱり。 |
ピーコ |
これ、座りにくい椅子ねえ。 |
糸井 |
(笑)ごめんね。俺も思ってた。 |
ピーコ |
あ、大丈夫、大丈夫。
はいそれで、今日はどうすればいいわけ? |
糸井 |
今日はこんな話が
きっと1冊にまとまるんだなあっていう、
予告編みたいなもんをやろうと思ってて。 |
ピーコ |
こんな話って、今みたいな話でいいの。 |
糸井 |
すごくいいじゃん! |
ピーコ |
全然、わたしはいつも、
わたしの人生には
波乱万丈はございません、って言うけど、
誰も信じないの。
「さぞ、波乱万丈がおありでしょう」とか。 |
糸井 |
いや、わかるよ?
ピーコさんって、波乱万丈がなくったって、
なんかおもしろいじゃない。
何がおもしろくさせてるのかな? |
ピーコ |
顔? |
糸井 |
いや、顔って、
長いことおもしろがれるわけじゃないし。
何だろう・・・?
やっぱり、クールだからなんじゃないの?
自分への視線が、もうひとつあるっていうか。 |
ピーコ |
それはね、努力したの。 |
糸井 |
身につけていったって感じですか? |
ピーコ |
それは訓練です。
もう、目を取ってから
12年なんだけど・・・。 |
糸井 |
あ、そんなになる? |
ピーコ |
早く言えば、
目を取るっていうことより、
悪性のガンというのが軸になってて。
ものすごく悪性で、脳と体全体の骨と、
それから内臓全部と
ありとあらゆるところに転移する
そういうガンの一種だったから、
まずなるたけ日に焼けないとか、
あと、ほくろがすごくたくさんあるのは
体質なんだろうけど、
ほくろが活性化してきたらどうとか。
そういうことを考える必要があって。
30万人に1人しか発生しないガンだったし、
ちょうどお医者さんもそれをみたことがないから、
だいたい見過ごされちゃうことがあるんだけど、
・・・まして目の中に
皮膚ガンができるっていうのはつくづく珍しい。
うちのホームドクターが連れてってくれた先生は、
たまたまわたしと同じ病気を
前に診たことがあった人なので、すぐにわかったの。
幸運があるでしょ?
30万人に1人しか出ないガンの時に、
ちょうど私と同じ時期に、
ちょっと私より上の人で、同じ病気で、
先生のところにかかった人がいたの。
その人は、確実に2年で死んじゃったけど・・・。 |
糸井 |
そっか。 |
ピーコ |
ということは、確率から言ったって
死んじゃうほうが強いのに、
まあ2分の1みたいにして助かったわけね。
・・・そういうふうに考えると、
「なんで自分が助かったのか?」とか、
「何のために生きてるのか?」とか、
そういうことってすごく・・・。 |
糸井 |
考えるようになるわけか。
なるほどなあ。
でも、それまでも、
けっこう、考えてる素地はあったでしょ? |
ピーコ |
私ね、霊感が強いこともあったし、
霊をたくさん見ちゃったり、
聞こえないものが聞こえたりっていう人だったの。
今でもそうだけど。
変わってる人でね、匂いでも分かる。
何がいるじゃなくって、変な悪いものがあるって。
それから、音はね、
金属音で教えてくれたりする。
耳鳴りみたいに。 |
糸井 |
感じちゃうわけ? |
ピーコ |
それから目はね、
感じて見えちゃうこともある。 |
糸井 |
おいおい?
それはもう、昔から? |
ピーコ |
普通は子どものうちにあって、
だいたい高校生くらいになると
なくなるんですって。
でもそれが、わたしの場合は、
高校卒業してから強くなって、
目を取る前はすごく強かったわね。 |
糸井 |
12年前から、そこは弱くなったんだ。 |
ピーコ |
いえいえ、
今日は、ああ、とか、
場所だとか、人も、わかる。 |
糸井 |
ふーん、巫女なんだね。 |
ピーコ |
やっぱり、寄ってこないもん。
私がだめって思う人は。
まあ、人に恨まれることはあるけど。 |
糸井 |
きっと、生き抜く力が強いんだね。
(つづく)
|