ピーコ |
いや、でもわたしの
お金の使い方が下手っていうのは、
親が悪いんだと思ってるの。 |
糸井 |
まあ、いわゆる「上手」じゃないだろうね。 |
ピーコ |
邱永漢さんは貯めることが上手でしょ?
でも、私はほんとに見栄を張るし。
この指輪だって、このあいだの暮れに
人のためにブルガリのネクタイを買いに行ったら、
包むのがすごく遅くて・・・。
「じゃあ、このまわりを見ていますね」
そうしたら、これがポンと置いてあるのね。
一見何でもないように見えるけど、
この中、ひとつずつダイヤが入ってる。 |
糸井 |
ほんとだ。 |
ピーコ |
ブルガリのダイヤって、
こんなちっちゃなダイヤの
仕入れ値でさえ、1個2万円なの。
それは裏側を知ってたんだけど。
そこで見て、
「わあ、やっぱりきれいなダイヤね」
って、はめたらピタッと入っちゃった。
「お客様、このリングは
ものすごく人気があって、
たまたまこのリングはサイズが大きくて
どなたも合わなかったから、ありますが、
ほんとうにぴったりですね」
「ああ、そう? これって、
頼むとどのくらいの日数かかるの?」
「いつ入ってくるかわかりません」
そう言っている中で、
チラッと店員さんのほうを見ると、
もう、具合が悪くなりそうなほど、
ハンサムだったの、その人が。 |
糸井 |
(笑)いいねえ!
「具合が悪くなるほど」なんだ? |
ピーコ |
ハンサムだったの。
日本人で、背も高かったし。
へえ、こんな子が宝石を売ってるんだ、
やっぱりすごいわね、ブルガリって、
こうやって買わしちゃうのね、
って思ったんだけど。 |
糸井 |
色仕掛けだね。 |
ピーコ |
女の人で見栄があったら、断れないもの。
私はたまたまホモだったから、
ああそうって言いながら、
いくらって聞いちゃったら、
35万だか35万6000円ですって言われて。
ああそうですかって。
・・・でもね、カードだと
また、買った証拠が残って怒られちゃうじゃない。
うん、でも指輪してれば
わかっちゃうんだけど。
ただ、暮れの30日だから、
ちょっと銀行に行けば、
そのくらいはあるのかもしれないって、
売り場の下の銀行で50万円をおろして、
これ、買ったの。
・・・だから、
見栄っていうのがあると思うのよ。
お金の使い方が下手よね。
こういう時に、ああそうですか、
じゃあこの次にめぐりあえたときかね、
ってその場に置いて来られないの。 |
糸井 |
(笑)置けないのね。
その気持ちは、なんだろうなあ。 |
ピーコ |
それはね、食べ物でもそう言われる時があって。
今ね、一本800円の牛乳を飲んでんの。 |
糸井 |
ああ、あれ、おいしいよね。 |
ピーコ |
うん。
でも、800円の牛乳を飲んでるって言うと、
みんなすごく冷たい顔をするの。 |
糸井 |
それは俺はピーコの味方!
そんなの、冗談じゃないよね。 |
ピーコ |
私は、800円の牛乳、いいと思うのよ。 |
糸井 |
そんなたくさん飲むわけじゃないんだからね。 |
ピーコ |
3日くらいに分けて飲むんだから。 |
糸井 |
(笑)安いとさえ、言おう。 |
ピーコ |
おいしいものがあるのに、
230円の牛乳で間にあわせることが、嫌なの。 |
糸井 |
俺、それはすっごいわかるわ。
別に、そういうものを買うことは、
利口なことではないかもしれないけど、
「他に何を欲しがるんだ?」って言ったら、
そんなにあるわけじゃないんだから、
しょうがないよね。
買いたいものがあるんだから、いいじゃないの。 |
ピーコ |
そうよねえ。
私、愛でも欲しがんないんだから、
そのくらい、いいでしょ?
でも800円の牛乳をすっごく悪いと思いながら
買うのが嫌だったんだけど、いいわ、
今日、重里に「いいじゃん」って言われたから、
それでいいって思うことにする。 |
糸井 |
俺は宝石のことはわかんないけど、
800円の牛乳だとか、仮に魚を買おうとしたら
3000円したって言っても、いいと思う。
他に何が食いたいんだ、っていうんだよ(笑)。 |
ピーコ |
私だって、紀ノ国屋が
いいとか悪いとかじゃなくって、
紀ノ国屋がちょうど、
うちで作るのに手ごろなマグロの柵を、
売ってくれるのよ。
それを私は
生でなんかは食べないわよ。
柵をそのまま、おしょうゆとお酒を
半々にしたものに漬け込んで、
ギュッと口を縛って、冷凍庫に入れとくの。
それで時間があって、
自分のためのご飯を作る時には、
それを焼くの。柵一つと卵とで。 |
糸井 |
わあ、うまそうだなあ。 |
ピーコ |
卵も、6個650円の
名古屋コーチンの卵を買ってるの。
人は「10個100円の卵でも高い」って言うけど、
その味の違いを言っても、わかってくれない。
そうすると、仕方がないから
料理を作ってうちで卵焼きを食べさせて。
みんなが違うっていうのを
わからせる努力をするのも
すごく辛いんだけど。 |
糸井 |
話がもってまわっちゃうもんね。
(つづく)
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