ピーコを、チェック。
杉浦克昭自伝的対談。

第12回 お金の使いかたは。




ピーコ いや、でもわたしの
お金の使い方が下手っていうのは、
親が悪いんだと思ってるの。
糸井 まあ、いわゆる「上手」じゃないだろうね。
ピーコ 邱永漢さんは貯めることが上手でしょ?
でも、私はほんとに見栄を張るし。

この指輪だって、このあいだの暮れに
人のためにブルガリのネクタイを買いに行ったら、
包むのがすごく遅くて・・・。
「じゃあ、このまわりを見ていますね」
そうしたら、これがポンと置いてあるのね。
一見何でもないように見えるけど、
この中、ひとつずつダイヤが入ってる。
糸井 ほんとだ。
ピーコ ブルガリのダイヤって、
こんなちっちゃなダイヤの
仕入れ値でさえ、1個2万円なの。
それは裏側を知ってたんだけど。

そこで見て、
「わあ、やっぱりきれいなダイヤね」
って、はめたらピタッと入っちゃった。
「お客様、このリングは
 ものすごく人気があって、
 たまたまこのリングはサイズが大きくて
 どなたも合わなかったから、ありますが、
 ほんとうにぴったりですね」
「ああ、そう? これって、
 頼むとどのくらいの日数かかるの?」
「いつ入ってくるかわかりません」
そう言っている中で、
チラッと店員さんのほうを見ると、
もう、具合が悪くなりそうなほど、
ハンサムだったの
、その人が。
糸井 (笑)いいねえ!
「具合が悪くなるほど」なんだ?
ピーコ ハンサムだったの。
日本人で、背も高かったし。
へえ、こんな子が宝石を売ってるんだ、
やっぱりすごいわね、ブルガリって、
こうやって買わしちゃうのね、
って思ったんだけど。
糸井 色仕掛けだね。
ピーコ 女の人で見栄があったら、断れないもの。
私はたまたまホモだったから、
ああそうって言いながら、
いくらって聞いちゃったら、
35万だか35万6000円ですって言われて。
ああそうですかって。
・・・でもね、カードだと
また、買った証拠が残って怒られちゃうじゃない。

うん、でも指輪してれば
わかっちゃうんだけど。
ただ、暮れの30日だから、
ちょっと銀行に行けば、
そのくらいはあるのかもしれないって、
売り場の下の銀行で50万円をおろして、
これ、買ったの。

・・・だから、
見栄っていうのがあると思うのよ。
お金の使い方が下手よね。
こういう時に、ああそうですか、
じゃあこの次にめぐりあえたときかね、
ってその場に置いて来られないの。
糸井 (笑)置けないのね。
その気持ちは、なんだろうなあ。
ピーコ それはね、食べ物でもそう言われる時があって。
今ね、一本800円の牛乳を飲んでんの。
糸井 ああ、あれ、おいしいよね。
ピーコ うん。
でも、800円の牛乳を飲んでるって言うと、
みんなすごく冷たい顔をするの。
糸井 それは俺はピーコの味方!
そんなの、冗談じゃないよね。
ピーコ 私は、800円の牛乳、いいと思うのよ。
糸井 そんなたくさん飲むわけじゃないんだからね。
ピーコ 3日くらいに分けて飲むんだから。
糸井 (笑)安いとさえ、言おう。
ピーコ おいしいものがあるのに、
230円の牛乳で間にあわせることが、嫌なの。
糸井 俺、それはすっごいわかるわ。
別に、そういうものを買うことは、
利口なことではないかもしれないけど、
「他に何を欲しがるんだ?」って言ったら、
そんなにあるわけじゃないんだから、
しょうがないよね。
買いたいものがあるんだから、いいじゃないの。
ピーコ そうよねえ。
私、愛でも欲しがんないんだから、
そのくらい、いいでしょ?
でも800円の牛乳をすっごく悪いと思いながら
買うのが嫌だったんだけど、いいわ、
今日、重里に「いいじゃん」って言われたから、
それでいいって思うことにする。
糸井 俺は宝石のことはわかんないけど、
800円の牛乳だとか、仮に魚を買おうとしたら
3000円したって言っても、いいと思う。
他に何が食いたいんだ、っていうんだよ(笑)。
ピーコ 私だって、紀ノ国屋が
いいとか悪いとかじゃなくって、
紀ノ国屋がちょうど、
うちで作るのに手ごろなマグロの柵を、
売ってくれるのよ。

それを私は
生でなんかは食べないわよ。
柵をそのまま、おしょうゆとお酒を
半々にしたものに漬け込んで、
ギュッと口を縛って、冷凍庫に入れとくの。

それで時間があって、
自分のためのご飯を作る時には、
それを焼くの。柵一つと卵とで。
糸井 わあ、うまそうだなあ。
ピーコ 卵も、6個650円の
名古屋コーチンの卵を買ってるの。
人は「10個100円の卵でも高い」って言うけど、
その味の違いを言っても、わかってくれない。

そうすると、仕方がないから
料理を作ってうちで卵焼きを食べさせて。
みんなが違うっていうのを
わからせる努力をするのも
すごく辛いんだけど。
糸井 話がもってまわっちゃうもんね。


(つづく)

2001-05-07-MON

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