ピーコ |
やっぱり食べ物っていうのは・・・
ひとりで暮らしてるわけじゃない?
好きなものを食べることぐらい、
許してもらいたいわ。 |
糸井 |
俺、まったくそれは、さっきからの
「他に何が欲しいんだよ」
っていう一言で大丈夫すよ。
別に、高い車を次々に買うわけでもなし、
家が欲しいわけでもなし、
食いものはだいじだよ。 |
ピーコ |
わたし、4畳半に住んで、
シャネルのくつとかバックとか
洋服を買ってる女よりは、罪はないよ。 |
糸井 |
俺もそう思う。
でも俺、実はシャネルの女のほうも、
そっちはそっちで、
「欲しいんだろうな」って思うから
いいんだけどね。 |
ピーコ |
わたしは、嫌なの、
「似あわないんじゃないの?」って。
悪いけど、似あわない洋服を着て
いろんなところに出てきて欲しくないわ。
ちょうど似あうのが、あるはずだから。
さっきの話に戻るんだけど、
何にも知らないぼうやに、
洋服を着せていくたびに、
慣れない感じが、そのうちに・・・。
あなたの生活習慣と違うところが
世の中にはあって、
そういう生活をしているということが
徐々にわかってくる。 |
糸井 |
だんだん板についてくるって感じ? |
ピーコ |
今日も、ウィリアム王子を
ピーコはどう思う?って言うから、
「そりゃね、家柄のいいお家の人は、
ブスだろうとなんだろうと
きちんときれいなものなのよ。
あれは育ったところがだいじなんだ」
って言いたいんだけど、
氏とか育ちとかって
言っちゃいけないじゃない、テレビって。 |
糸井 |
あっ。いけないんだ? |
ピーコ |
だから「家柄」って言っちゃいけないの。
第一級の差別語になんの。 |
糸井 |
だったら、「クラス」っていうのはだめ? |
ピーコ |
「クラス」はいいんだけど、
私クラスって言っちゃうけど。
・・・「上流階級」はいいのよ、
「家柄」っていうのがいけないのよ。 |
糸井 |
ふーん。 |
ピーコ |
だから、ちゃんとした家には
ちゃんとした子が育つって言ったけど、
みんなには、伝わったかどうかなあ。 |
糸井 |
別の苦労をしょってるっていう重みも、
ぜんぶが入るからね。 |
ピーコ |
そうだよ。
はっきり言って、彼は彼で
王様になりたくなくたって、
ならなきゃなんないわけじゃない? |
糸井 |
背負ってるんだよね。 |
ピーコ |
自由じゃないんだもん。
それで、もしホモだとしても、
結婚をしなかったり子どもを作らなかったら、
いろいろことを言われちゃうわけでしょ? |
糸井 |
そうそう。 |
ピーコ |
辛いじゃない?
そりゃもう、大きな声で
「自分はこういう嗜好ですよ」
って言えちゃうほうが、ラクなわけだから。 |
糸井 |
でも、自由と王様と、どちらかを
譲らなきゃいけない立場にいるわけだから
しょうがないよね。 |
ピーコ |
でも、ほんとうはみんな、そうじゃない?
何かを捨てないと、
自分がやりたいことって
できないようにできているでしょ?
似合わないドレスを着て、
テレビに出てくる女とか、ダメ、
どっちかしかないのよ、って
言いたくなるわよ。 |
糸井 |
ただ、似合わない人にとっての洋服は、
その人にとっては、仮装パーティーなわけよ。
だから、お絵かきの時に女の子が
お姫様の絵を描くように、
自分も1回着せ替え人形にして
夢を叶えていると思えば、
ぼく、それにはすごいやさしいよね。
いいんじゃないかって思う。 |
ピーコ |
わたしは意地悪だから、
人の目に見られてるんだったら、
鏡を見た時に、似あわないとか似あうとか
わかればいいと、思うわけ。 |
糸井 |
「もう一回、考えなさい」というの? |
ピーコ |
似あわない人には似あわないと
言ってあげて、鏡の前で、
ほらこっちよりもこっちの方が
あなたがとても素敵に見えるでしょ?
本来のあなたの良さが出るけど・・・。
そうやって言えるじゃない。
お手伝いがコスチュームプレイを
しているようには見えないように
してあげることが、スタイリストですから。
(つづく)
|