ピーコを、チェック。
杉浦克昭自伝的対談。

第13回 似合う、似合わない。




ピーコ やっぱり食べ物っていうのは・・・
ひとりで暮らしてるわけじゃない?
好きなものを食べることぐらい、
許してもらいたいわ。
糸井 俺、まったくそれは、さっきからの
「他に何が欲しいんだよ」
っていう一言で大丈夫すよ。
別に、高い車を次々に買うわけでもなし、
家が欲しいわけでもなし、
食いものはだいじだよ。
ピーコ わたし、4畳半に住んで、
シャネルのくつとかバックとか
洋服を買ってる女よりは、罪はないよ。
糸井 俺もそう思う。
でも俺、実はシャネルの女のほうも、
そっちはそっちで、
「欲しいんだろうな」って思うから
いいんだけどね。
ピーコ わたしは、嫌なの、
「似あわないんじゃないの?」って。

悪いけど、似あわない洋服を着て
いろんなところに出てきて欲しくないわ。
ちょうど似あうのが、あるはずだから。

さっきの話に戻るんだけど、
何にも知らないぼうやに、
洋服を着せていくたびに、
慣れない感じが、そのうちに・・・。

あなたの生活習慣と違うところが
世の中にはあって、
そういう生活をしているということが
徐々にわかってくる。
糸井 だんだん板についてくるって感じ?
ピーコ 今日も、ウィリアム王子を
ピーコはどう思う?って言うから、
「そりゃね、家柄のいいお家の人は、
 ブスだろうとなんだろうと
 きちんときれいなものなのよ。
 あれは育ったところがだいじなんだ」
って言いたいんだけど、
氏とか育ちとかって
言っちゃいけないじゃない、テレビって。
糸井 あっ。いけないんだ?
ピーコ だから「家柄」って言っちゃいけないの。
第一級の差別語になんの。
糸井 だったら、「クラス」っていうのはだめ?
ピーコ 「クラス」はいいんだけど、
私クラスって言っちゃうけど。
・・・「上流階級」はいいのよ、
「家柄」っていうのがいけないのよ。
糸井 ふーん。
ピーコ だから、ちゃんとした家には
ちゃんとした子が育つって言ったけど、
みんなには、伝わったかどうかなあ。
糸井 別の苦労をしょってるっていう重みも、
ぜんぶが入るからね。
ピーコ そうだよ。
はっきり言って、彼は彼で
王様になりたくなくたって、
ならなきゃなんないわけじゃない?
糸井 背負ってるんだよね。
ピーコ 自由じゃないんだもん。
それで、もしホモだとしても、
結婚をしなかったり子どもを作らなかったら、
いろいろことを言われちゃうわけでしょ?
糸井 そうそう。
ピーコ 辛いじゃない?
そりゃもう、大きな声で
「自分はこういう嗜好ですよ」
って言えちゃうほうが、ラクなわけだから。
糸井 でも、自由と王様と、どちらかを
譲らなきゃいけない立場にいるわけだから
しょうがないよね。
ピーコ でも、ほんとうはみんな、そうじゃない?
何かを捨てないと、
自分がやりたいことって
できないようにできているでしょ?
似合わないドレスを着て、
テレビに出てくる女とか、ダメ、
どっちかしかないのよ、って
言いたくなるわよ。
糸井 ただ、似合わない人にとっての洋服は、
その人にとっては、仮装パーティーなわけよ。
だから、お絵かきの時に女の子が
お姫様の絵を描くように、
自分も1回着せ替え人形にして
夢を叶えていると思えば、
ぼく、それにはすごいやさしいよね。
いいんじゃないかって思う。
ピーコ わたしは意地悪だから、
人の目に見られてるんだったら、
鏡を見た時に、似あわないとか似あうとか
わかればいいと、思うわけ。
糸井 「もう一回、考えなさい」というの?
ピーコ 似あわない人には似あわないと
言ってあげて、鏡の前で、
ほらこっちよりもこっちの方が
あなたがとても素敵に見えるでしょ?
本来のあなたの良さが出るけど・・・。
そうやって言えるじゃない。
お手伝いがコスチュームプレイを
しているようには見えないように
してあげることが、スタイリストですから。


(つづく)

2001-05-14-MON

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