ピーコ |
なんか、認められるのが、
すごく面倒臭いの。
だから今、歩いていてもすっごく面倒臭い。
だって、私の好きなのは、
地下鉄とか山手線なんだし。
今は、外を歩いてるだけで、
まわりの反応に疲れる。 |
糸井 |
あ、そうか!
ピーコと俺が道端でよく会う理由は、
両方とも、よく道を歩いているからなんだ。 |
ピーコ |
うん。
いま青山に住んでるし、事務所も青山で。
それがどうして青山かっていうと、
渋谷に行くんだって、六本木に行くんだって、
溜池に行くんだって、季節がよければ、
ぜんぶ歩けちゃうから。 |
糸井 |
だから、よく会うんだ。 |
ピーコ |
もう、歩くの大好き。
だから、歩くのも、すごい速い。 |
糸井 |
そこは俺、そっくりなんだけどな。 |
ピーコ |
だって、この歳して運動嫌いなんだから
歩くくらいしかないじゃない?
他に何にもできないから。 |
糸井 |
今は、人気が出過ぎて、その歩くのは
不自由になっちゃったんだ? |
ピーコ |
でもなるたけ歩いてるけど、
すまして歩いてるけど、
何てったって、あなたが最初に言った
毛皮が目立つでしょ? |
糸井 |
(笑)そりゃ目立つよ!
「お、どこのマダムかな?」って。 |
ピーコ |
毛皮着なくったって
こういうふうにしてたって
目立つでしょ。 |
糸井 |
目立つ目立つ・・・
そんなやつぁいないからね、あんまりね(笑)。
すごくおもしろいよなあ・・・。
何がおもしろいか
よくわかんないくらい、おもしろい。 |
ピーコ |
早く言えば、
周りが個性の強い人ばっかりだったでしょ?
そういう人の中でいたわけだから、
そういう意味では幸せだった。
すっごく素敵な人にめぐりあってると思う。 |
糸井 |
やっぱりその、
1人の人が生きてる間っていうのは、
玉突きじゃないけど、
何かを与えあうものが
絶えずあるんだね、やっぱり。
それはきっと、向こうから
こっちに与える影響もあっただろうけど、
向こうもピーコから、
何かをもらってたんでしょうね。 |
ピーコ |
どうなんでしょうね。 |
糸井 |
なんでかはわからないけどさあ・・・
だってそうじゃなかったら
会いたくないじゃない?向こうも。 |
ピーコ |
まあ、みなさんよく会ってくださる。 |
糸井 |
そうだよねえ。 |
ピーコ |
だから芸能界なんて、
ほんとに口だけのお付き合いって多いからね。
でもそうじゃない人ばかりがまわりにいたから。
それはすごくありがたいと思ってる。 |
糸井 |
ああぁ、きっとその流れで
人の名前が順番に出てくるだけでも
おもしろいと思うんですけど、
ぼくとしては、できれば今回、
その都度の誰かの話じゃなくって、
中心軸をピーコって人にすえて、
濃く、土管を通したいんですよね。 |
ピーコ |
ふーん。
・・・いま何時? |
糸井 |
あ、もう、いい時間ですね。 |
ピーコ |
ちょうどいい時間ね。 |
糸井 |
いやあ、おもしろいよ、ものすごく。
もちろん、最終的には
どれをどう載せるかも、
いっしょに作りますから。 |
ピーコ |
うん。
ま。本になっちゃうのは
お任せします。
私はそういう能力はないから。 |
糸井 |
ありがとう。すっごいおもしろかったよ。
聞きたいことがいっぱい増えた。
ありがとうございました。 |
ピーコ |
これは、あとで整理してくれるわけだから、
何をしゃべってもいいわけでしょ? |
糸井 |
整理します。その意味では楽だとは思いますね。 |
ピーコ |
でも、明日も雑誌の取材を、
3時間くれって、言われてるの・・・。
きっと、目を取ってからの話になると思う。 |
糸井 |
それ、泣ける話に
まとめられちゃうでしょう? |
ピーコ |
それは、困ったことなの。 |
糸井 |
そうだよ。美談にされちゃう。 |
ピーコ |
「ガンになりました、
皆さまの力で治って帰ってきました」
っていうのは、嫌なんです。 |
糸井 |
俺もそう思う。正直。俺もそう。 |
ピーコ |
わたしはガンを隠して入院して、
手術しちゃったあとにテレビに出たけども・・・。
スッと入院しちゃって、
ちょっとしたお休みです、みたいにすれば、
みんなの前で改めて言わなくても・・・。
ガンって、きっと、
言っていい人と言っちゃいけない人が、
すごく微妙な分け方になるけど、いると思う。
だれそれが闘病中、と
テレビの中でベラベラ流れちゃうと、
「自分もそうじゃないか?」
と思わされる人が、
いっぱいいるわけじゃない?
それこそ、ガンの患者を持ってる家族には、
ああいうのは、耐えられないと思う。
今はどこのテレビでも、
そういうことを何でもやるんだけど、
あれは、すごく嫌なの。
例えばみんなは
取材をする前に先入観があって、
わたしがガンで目を取るっていうことは
すごい大変なことだと思うらしいんだけど。
そりゃ、大変じゃないこともないけど、
わたしからすれば、そうでもないの。
腎臓とか何とかでおなかを切ったり、
もっとすごいこと言えば、
乳がんで乳房を切ったら、やっぱりそこが
女のアイデンティティだとは思わないけど、
それだって、嫌なわけでしょ。
わたしはある意味では、
目でよかったと思っているところがあって、
でも、そういうことは、
いくら言っても伝わらないんだよね。 |
糸井 |
うーん、伝わらないように聞くね、みんな。 |
ピーコ |
だから、目を取ってよかったこともあるし、
気がつかなかったことに気が付くようになった、
と、ほんとうに思ってるんだけど。
でも、そういうふうに言うと、
今度は偽善者みたいになるじゃない? |
糸井 |
いや、そのさじ加減は
たぶんとてもむつかしいけども、
聞く側としては、がんばりますよ、私たちは。 |
ピーコ |
私はあなたのことを信じてるからいいけど。
・・・でも、いつ頃までに本を作る気?
私のスケジュール、タイトだよ。 |
糸井 |
わかる、わかる。
できればギュッとインタビューしたいなあ。
あと2度話してみれば、
うまくいくんじゃないかと、
ぼくは踏んでるんですけどね。 |
ピーコ |
どうぞ、そちらの才能でやってください、
じゃあ、わたしは帰ります。 |
糸井 |
才能はないんだけどさあ。 |
ピーコ |
あ、そうだ。
あなたね、私がこのコートを着るとね、
そんなに嫌らしくはないのよ、
着方があるの。 |
糸井 |
(笑)嫌らしいとは、言ってないんだけどね。 |
ピーコ |
あのね。着方があんのよ、
パッと着ちゃうの。 |
糸井 |
ああ、わかったわかった。
「おかみさん気分」みたいなものを、
ちょっと入れるわけね。 |
ピーコ |
(笑)まあね。 |
糸井 |
よくわかった。
そのコートは、嫌らしくない(笑)。 |
ピーコ |
(笑) |
糸井 |
じゃあまた。
ほんとにどうもありがとう。
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