ピーコ |
このごろ、仕事で
イヤなことがあっても、
そんなにヘンな顔してないよ? |
糸井 |
へえー。 |
ピーコ |
若い人に、わたしが何か言っちゃったら、
どうしたって、その子があとで
怒られちゃうじゃない?
だから、そういうことは、しないの。
いい人になったでしょ?
このごろ、毒舌じゃないですねぇ、
って言われる。 |
糸井 |
(笑)え?
言いたいことは、言ってるのにねぇ。 |
ピーコ |
でも、こないだすごくイヤなおばさんがいて、
好きな彼と久しぶりに会ってて手をつないでたら
おばさんが来て「ね、握手してよ!」って。
「いや、いま好きな人と手をつないでるから、
握手できない!」
こういうふうに言ったの。そしたら、
「しなさいよ!」って、手を出してるの。
|
糸井 |
(笑) |
ピーコ |
「わたし、この人と手をつないでるから、
あなたとは、握手できないのっ!」
って言ったら、
「なーーによっ!!!」
って怒っておばさん、帰っちゃったの。
そしたら、あとで
ああ、握手してやればよかったかな、とか、
ちょっとは思うじゃないの。 |
糸井 |
ピーコは悪くないけど、一応思うのね。 |
ピーコ |
・・・でも、忙しくて、
好きな人と会ってる時間なんて、
ほんとに、こんなに短い時しかないのに、
そんなババアの手握るのなんて、イヤでしょ! |
糸井 |
ふふふ(笑)。 |
ピーコ |
そういうことではイヤだけど、
最近、あんまりイヤなことはないわ。 |
糸井 |
いまのなんて、ほんと、
ピーコさん、何も悪くないよ。
でもさ、「人にさらされている側」って、
常に、いいひとであるしかないっていうのが、
なんか悲しいよね?
がまんしているわけじゃない? |
ピーコ |
考えたら、まあ、
「それで食ってる」
っていうのがあるかもしれないけど。 |
糸井 |
でも、矢沢エーちゃんが昔、
「矢沢永吉であるということで、
大根一本まけてもらったことはない!」
って言ってたけど、そのとおりじゃない? |
ピーコ |
まあ、まけてもらわないけど・・・。
タダでもらっちゃうこと、あるのよねぇ。
・・・ほしくないものも、ほしいものも、
向こうからいただく場合が、あるからさ。 |
糸井 |
でも、そのぐらいなら、
どこの係長でももらってますよ。
|
ピーコ |
でも、もらっちゃうというか、
あるものをわたしにくれようとして、
誰かが買ってきてくれるという
その買ってきたものじゃなくて、
買った気持ちが、ありがたいと思うのね。
どんなにわたしが好き好きって言っても
相手が好きじゃないという場合が多いのに、
なんか買ってきてくれる時もあるじゃない。
そうしたら、わたしのことを
好きじゃないにしても、
買う時ぐらいは思い出してくれたんだわ、
と涙が出てきちゃったりするの。
まあ、歳とって、
涙もろいっていえば
涙もろいんだけど。
でも、わたしはほんとに、
自分はいつでも好きになるけど、
愛されたことがないような
生き方をしてきたから、
そういうことが、ちょっと
ありがたくなっちゃうっていう
今日このごろなの。 |
糸井 |
(笑)今日のこのごろ。 |
ピーコ |
あなた、愛されてると思うでしょう?
何かで確認できているわけでしょ、愛を。 |
糸井 |
愛されてると思いたいね。 |
ピーコ |
「思いたい」ってのは、
また、別の問題だけど(笑)。 |
糸井 |
ピーコさんみたいに、
そういうことを言って
似あう人と似あわない人がいるじゃない?
俺が「どうせ・・・」って言ったら、
ただの苦労人じゃないの。 |
ピーコ |
(笑)
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糸井 |
それは見た目なのよ。
「あんたいつも寒そうだねぇ」って、
俺、言われることがあるの。 |
ピーコ |
(笑)それは、なんでだろう? |
糸井 |
(笑)いやぁ、なんでだか。
何人にも言われたことがある。
夏にさえ。 |
ピーコ |
(笑)アッハッハ!
・・・あ、ごめんなさい。
あなたの着物も、落語の人に見えたわ、
っていうのを思い出して。
すごくいいところの、お着物なのにねえ。 |
糸井 |
それよそれ!
いつでもこうただよう、
ほら、「目下感」って言うの? |
ピーコ |
(笑)あははは。いいじゃないの? |
糸井 |
そうかなぁ・・・。 |
ピーコ |
絶対、トクだよ? |
糸井 |
いやぁ、でも、確実に
目下だと思われたらさあ・・・。
そんな俺が、「愛されてない」って
言ったら、もう終わりじゃない? |
ピーコ |
あら、でもあなたは、こう、
肩とかそういうところに、
愛されてるっていう自信がただよってるわよ? |
糸井 |
そうかなぁ?
|
(つづきます。)