ピーコ |
わたしは、重里みたいに、
人から愛されてる自信、ないもん。
いろんな人を好きだけど、あ、そうだ、
会場のみんなも、愛されてる自信、ないでしょ?
はい、自信ある人、手ぇあげて!
・・・ほらね? |
糸井 |
(笑)・・・誘導尋問だよ。 |
ピーコ |
(笑)まあ、でも、
4人ぐらいしかいなかったでしょ?
愛されてるっていうのが、ないのよ。
そういうところを持ってる人を、
わたしは好きだけど。
でも、やっぱ、さびしいのよ。
「さよならだけが人生だ」よ。
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糸井 |
(笑)わはは、いきなりそんな言葉を。 |
ピーコ |
(笑)ふふふ。 |
糸井 |
でも、誰もが、安定しないで生きているから、
どこかで誰かが自分のことを考えている、
と思っていないと、生きていけないじゃない? |
ピーコ |
そう?
いまの状況みたいな
世界の状態だと、たぶん若い人は、
いままで生きてきた中で、こんなに
心が不安になることはなかったと思う。
なんだか、小さなおき火みたいなもので
チリチリチリチリあおられている中で、
じゃあ、どうやって自分を持って
生きていこうというのを、
考えているんだと思う。
そういう時には、わたしは、
ありがたいことに、ほかの人よりは
いろんな仕事の中で、
自分はどうやってお話をしたり
生きていったらいいのか、ということを
考えざるをえなかったからね。 |
糸井 |
あ、思い出した。
ぼくがこの本を作るうえで
ピーコさんに話を聞いていて
おもしろかったのは、
「どういうのも、ありなんだ」
というのがわかったというか。
もともと、ピーコさんに
話を聞こうと思った動機というのが
あったんです。
みんな、
「ああいうのがよくない」
「こういうのがよくない」って、
ほんとによく言うじゃないですか。
でも、ピーコさんの場合は、
「いいかわるいかは、自分が決める」
っていう感じがあったから。
それを伝えたかったっていうのもありました。 |
ピーコ |
わたし、そんなにずうずうしく見えてた?
それ、おすぎじゃない? |
糸井 |
(笑)でも、その自分で決めてる感じが、
気持ちよかったんですよ。
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ピーコ |
今日はそう言ってくれて
どうもありがとう。
そうやって言ってくれる人が
ひとりでもいるなんて、
ありがたいなあと思います。
ちょっと言葉につまっちゃったけど。 |
糸井 |
『ピーコ伝』は、
いい気になっていた時も、
ちゃんと考えている時も
ぜんぶ入ったまっぱだかの本なんだけど、
その間にたとえ失敗しても、ピーコさんは
いつも「あとがある」と思ってやってきたかな、
というように見えたんですね。
「みんなも、あとがあるのよ」って
言っているように見えた。 |
ピーコ |
それは、持続してるわけ?
インタビュー終わった瞬間に、
「なーんだ、ピーコってこの程度?」
ってなっちゃわないわけ? |
糸井 |
持続してるよ。
まだまだだって感じもあるし。
よく物語で語ろうとする時は、
みんな、目の手術のことを
ピークに持っていこうとするでしょう?
でも、本を買った人はわかると思うけど、
もっと淡々とのりこえてるんだよね。
クライマックスをそこに置かないで、
もっと先のほうのことを考えてるから。
なんかね、若者の本みたいなの。
あの本を読んだあとに、
「さあ、これからどうなるの?
ピーコさんとわたしの将来は」
みたいに思うんじゃないのかなあ。 |
ピーコ |
それはわたしの本質みたいなもんだけど、
手術をした本とか闘病記って、
出したくないの。
わたしは、目の病気って、
そんなに大変だとは思ってないから。
みんなは、目だから大変だと思うみたいだけど。
でも、好きなものは食べれるし、
目でよかったぐらいに考えているんです。
だから、ほかの人がガンになったと聞いたら、
ああ、わたしの目の時はああだったんだから、
たいへんだろうなあ、と思うわけ。
もっと言うと、
目は、もうひとつ失ったって大丈夫なの。
生きていると、
目って、80%ぐらいの情報量じゃない?
すごく目に頼ってると思うわけ。
だから、両目を失うとすごく自殺願望が
出るらしいけれども、わたしは、
それでも大丈夫かなあと思うところがありますね。
きっとわたし、ガンになる前は
あんまり目にばかり頼りすぎて
えらそうなことを言ってたので、
「目だけに頼っちゃいけないよ」と
神様がひとつなくしたのかもと思ったから。
そうすると目にあんまり頼らなくなった。
目を完全に失ったら、
見かけに惑わされることもないでしょ?
・・・今度は、触って気持ちいい男を
好きになるのかもしれないけど(笑)。 |
糸井 |
(笑)ふふふ。
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