糸井 |
ぼくは、おすぎさんとピーコさんが
見ている景色が違うというところで、
すごく「あ、おもしろい」と思ったよ。 |
ピーコ |
まあ、もともと、
「メガネが変わってる」というのが、
オカマのいけないところかも
しれないんだけどねぇ。
あの人はあの人の心象映像で
ものを覚えているから。
よくあるのよ、あの人・・・。
「わたしは、3歳の時に
連れられてった映画がわかるのよ?
父親に抱かれて、見てた」
って言うけれども、
わたしは抱かれた覚えは、ないわ。 |
糸井 |
(笑) |
ピーコ |
わたしが覚えてるのは、
『キングコング』を肩車を見たことよ。 |
糸井 |
(「俺に振って」という動作) |
ピーコ |
(笑)あなたも聞いてほしいのね?
・・・あなたは最初に何を見た? |
糸井 |
わたしは、『赤い靴』よ。
(※おすぎさんのマネで) |
ピーコ |
ああ、わかるわ。 |
糸井 |
靴をはいたら、
踊りがとまらなくなって・・・。
あれ、こわかったぁ! |
ピーコ |
・・・ねぇ、おすぎのマネやめて(笑)。 |
糸井 |
(笑) |
ピーコ |
重里のナマの声でしゃべってくれないと。 |
糸井 |
(笑)はい。
いやぁ、でもあの『赤い靴』は、
ほんと、こわかったっす。
・・・・キチガイ映画じゃないですか、あれ。 |
ピーコ |
言葉選んでください。 |
糸井 |
異様な世界に連れられていく映画だったよ。 |
ピーコ |
いくつの時に見た?
あれは、1953年ぐらいの映画よ。 |
糸井 |
じゃあ、5歳かな。 |
ピーコ |
そうですね。
わたしは8歳だった。 |
糸井 |
あれ、父親に連れられていったけど、
退屈だとか退屈じゃないとか
そういう次元の前に、こわかったですよ。 |
ピーコ |
でも、あの踊りかたって、
靴が動いてパタパタパタパタッて
(ここで、ピーコさん席を立って踊る)
クーッて落ちていくみたいなことだけ
覚えてる。 |
糸井 |
(踊る様子を見て)わはははは。
・・・ぼくはね、そんなに細かいところを
覚えていなくって、ただ
「こわかった」ことだけ覚えてたよ。 |
ピーコ |
(踊りおわって)
・・・ハーつかれた。
ハァハァ。やっぱ、年ねぇ!(笑) |
糸井 |
(笑)ふふふ。 |
ピーコ |
動くとこんなんなっちゃうわ。 |
糸井 |
(笑)それで、ぼくがピーコさんに
聞きたかったことは、何を最初に見たとか、
生まれてから今まで、何をどう見てきたかとか、
そういうことだったんです。
「あなたは、いつも、何を見ているの?」
ということって、聞いてみたいんです。
自分のことで言うと、
生まれてはじめて見た映画は、
その『赤い靴』で、
生まれてはじめての記憶って、
「縁側」なんですね。
網膜にはじめてうつった記憶って。
まあ、三島由紀夫は
産湯のタライだったとか言うけど、
ぼくは、縁側なんです。
で、ピーコさんはどうなのかなあ?
と思って。 |
ピーコ |
わたし、小さい時に
はじめて見たものっていうのは、
それはぜんぜん、覚えてない。
そこはおすぎとは違うのね。
わたしはもっとこう、
くだらないことを覚えてる。
ちっちゃな時の、くだらない記憶だったり。
あとは、におい。
コンデンスミルクのにおいだったり、
そんなことは、よーく覚えているわね。
あんまりかいでいると、
かいでいるうちに
具合が悪くなっちゃうようなにおい、
覚えているわね。 |
糸井 |
(笑)「具合が悪くなっちゃう」。 |
ピーコ |
ケミカルなにおいも、わかるわね。
初期の頃の塩化ビニルの
すぐ切れちゃうような素材の
あのにおいとか。 |
糸井 |
へぇ〜。 |