糸井 |
いまの、おすぎさんと
ピーコさんの見ているものの違いだけでも
おもしろいんだよね。
日常生活を共にしている人たちとは、
「同じものを見ている」
と、無意識に想定しているわけだけど、
でもほんとうは、違うわけじゃない?
たとえば、話をしている時だって、
それぞれの人が相手に見ているものって、
かなり違っているわけで・・・。
ぼく個人のことで言うと、
ぼくはあんまり、人と話している時に、
人の顔を見ないんですよ。 |
ピーコ |
いつも寝てるみたいよね。 |
糸井 |
(笑)まあ、そうだね。
・・・実はかなり恥ずかしがり屋を
克服してきたつもりですから、
最近ようやく人の顔を見られるようになったの。 |
ピーコ |
あら? |
糸井 |
だから、昔会ってた人に
「おう!ひさしぶり!」と言われても、
覚えてなかったりするんです、これほんとに。 |
ピーコ |
ふーん。 |
糸井 |
もともと、その人の顔を見てないの。
「・・・じゃあ、俺は何を見てるの?」
と思いはじめると、他の人が
何を見ているのかも、気になって。 |
ピーコ |
じゃあ、若い頃、
あんたは人の何を見てたの?
足もと? |
糸井 |
おしり、かな・・・。 |
ピーコ |
おしりに欲情するの? |
糸井 |
(笑)違う違う。
「欲情」じゃないんですよ。
正面の姿を見ているのは恥ずかしいから、
「うしろすがた」ばっかり
見ていたような気がするんです。 |
ピーコ |
それはちょっと、つまんない人生ねー。 |
糸井 |
(笑)・・・そういう人なんだもん。
何せ、「下働き」の似あう男ですから。 |
ピーコ |
(笑)ウフフフ!
あ、笑っちゃった。
いけない。ごめんなさい?
・・・(あらためて)そうですよねぇ。 |
糸井 |
テレビの場合は、いいんですよ。
いくらこっちが見ても、向こうから
「何見てんねん!」って言われないから。 |
ピーコ |
わたしはね・・・どうしても、
「さびしそうな人」を見ちゃうの。
このごろ、特に。
気がつくと、どこか
さびしそうな人を見ちゃう。
「ほんとはこの場にいちゃいけないのかな」
みたいな人を、見ちゃう。 |
糸井 |
それは、小さい時から? |
ピーコ |
小さい時は何見てたのかなぁ。
あ、思えば、おとなばかり見てたわね。
同年代の子なんか、見てなかったわ。 |
糸井 |
なるほど。
ピーコさんの心のアルバムには、
おとなの姿と、さびしそうな人の姿が、
映っているんだね、きっと。 |
ピーコ |
ま、仮にそういうアルバムがあればね?
でも、心象風景をアルバムにしてみたら、
断面がたくさんある人もいるけど、
ぜんぜんない人も、いるじゃない?
アルバムに全然写真が入ってない人とか。
あなたのアルバムには、
小さい頃からおしりが並んでいるから、
どのおしりがいいとか悪いとか、
あ、これは何年生の時のおしりだとか、
わかるだろうけどねぇ。 |
糸井 |
(笑)・・・そういうことじゃないよぉ。
でも、さびしそうな人に
ピーコさんが興味を持つのは、いつから? |
ピーコ |
いつからか、わからないけど、
けっこう長くそうかもしれない。 |
糸井 |
スーパースターみたいな人、
かがやいている人を、
いいなあ、と思ったりしないの? |
ピーコ |
わたし、そんな人きらいだもん。
だって、つまんないじゃない? |
糸井 |
(笑)そう? |
ピーコ |
だって、世の中でわたしが
いちばんキライな人って、長嶋茂雄よ。
だから、いまの若い人で
スポーツをやっているような人を見て
わたしが、そんなに惹かれないのは、
明るすぎるからなのよ。
わたしは、「さびしげ」な人を好きなの。 |
糸井 |
(笑)複雑だなぁ。
でもおもしろいね、その見方。
ピーコさん独自のものだから。 |