ピーコ |
自分でも、
なぜだかわからないけど、どうしても、
さびしそうな人のほうに心が動いちゃうわね。
「心が明快な人」には、目が行かないよ。
ぜんぶが完璧であるような相手を
求めてしまう人が、多いじゃない?
わたし、そういう完璧さは、大キライだもん。
なんでこんなに若くて美しいのに、
なんでこんなに暗いんだろう、っていうか、
その暗さは、どこから来ているんだろう、
とこう思ったりするわけです。
わたしのことは、
受け入れてもらわなくったっていいのよ。
それはいつでも、受け入れられなくても大丈夫。
好きだと思われないと愛じゃない、
みたいなのがキライなの。
何にも思われなくったっていいけど、
ずうっとわたしが一方的に
ともだちでありつづけたいとか、
そこは答えがないままでいいと思うの。 |
糸井 |
わかるなぁ。
ぼくも、男じゃない部分が
どうもあるみたいだから、よくわかる。 |
ピーコ |
でも、絵にかいたような男っていないよ。
頭の中が筋肉のような男って、イヤじゃない? |
糸井 |
(笑) |
ピーコ |
キャパシティの狭い人を、
すこしひろげてあげられると、うれしいかな。
若い人って、
だいたいキャパシティが狭いでしょ。
でも、教えてあげたりして
少したってくると、
だんだん広くなってくるじゃない。
わたしは、そういうことを
教えてあげられる人になりたい。
わたしも、そうやって
みんなに手をさしのべられてきたから。 |
糸井 |
あぁ、そうなんだ。 |
ピーコ |
いっぱい、いろんな人に会って、
いろいろなことを学んできたから。
永六輔さんも、
理由はわからないけれども、
おすぎとピーコをすごくかわいがってくれて。
以前は、沖縄で年に4回、いつでも、
ジアンジアンというところで、
「おすぎとピーコ、そして永六輔」
という会を開いてきたのね。
いろんなことをやって、最後に
1時間ぐらい、永さんとわたしたちふたりで
話すんだけども、それが終わったあとで、
必ず、いろいろ教えてくれたわね。
自分ひとりで話しちゃったようなところは、
「あそこは削りなさい」とか、あとは、
「あそこはおもしろかったから、
もうちょっとふくらましてしゃべりなさい」
とか、丁寧に、ずっと言ってくれたの。 |
糸井 |
それは、大きいねぇ。 |
ピーコ |
永六輔さんは、40代の時に、
そうやって、わたしたちをはじめとして
いろんな人を育てていたのね。
だけどわたしは今、
50代なかばになっても
誰を育てただろう?という意味では、
誰かの役に立っていないんじゃないか、
と思う時がいっぱいあるの。
わたし、何にもない・・・。
そういう時に、
誰かに何かをしてあげることは、
自分の中では、大事なことなんです。
いっぱいいろいろな人にしていただいたことを、
わたしはまだ、返してきていないと思うから。
だからちょっとさびしかったりする人を
見ちゃったり、するのかなあ。 |
糸井 |
なるほどねー。
やっぱりピーコさんは
「日本のおかあさん」って感じがするわ。 |
ピーコ |
あんた、いつもそう言うけど、
わたし、「おかあさん」なの?
あんたのおかあさんにはなりたくないけど(笑)。 |
糸井 |
(笑) |
ピーコ |
オカマでいいわよ、ただのオカマで。
ごはんを炊く「オカマ」でもいいわ。 |
糸井 |
おかあさん、っていう役割ってあるじゃん。
イチローの父ってよく言うけど、
イチローの母とは言わないじゃん。
母は、たしかにいるはずなのに。
「おかあさん」の像って、あっていいかなと思って。 |
ピーコ |
そうね。
「岸壁の母」とかしか、言わないわね。
・・・だけどわたし、
イチローの父、って、きらいなのよ? |
糸井 |
そう?
俺、ちょっとあこがれなんだけど。 |
ピーコ |
そういう父になりたいの?
星飛雄馬みたいなのになりたいの? |
糸井 |
うーん。
どう言ったらいいのかな。
息子の試合を見てうなずいてるような。
そういうのがいいんです。 |
ピーコ |
わたし、自分の息子が活躍しているのを
ニコニコ見ているような親になるぐらいなら、
オカマでよかったと思うわ。 |
糸井 |
(笑)そうかなあ?
・・・あ、でもそういうところが
「おかあさん」なんですよ。
「おかあさん」は、イチローの母とか
そうやって、まわりから数えられることを
拒むじゃない。黒子に徹するでしょ。
だけど、母の存在って大きい。
そういうようなものなんじゃないかな、
ピーコさんのありかたも。
(つづきます) |