ピーコ |
あんた、いま、イチローのことを
一生懸命、丁寧にしゃべってたけど・・・。
わたしだいたい、イチローがキライなのよ? |
糸井 |
(笑)スポーツマンのことを
俺が例に出すと、だいたいこの人、
「キライ」って言うんだよなぁ。 |
ピーコ |
わたしは、
ニューヨークに行った人のほうが好き。
みんなが悪口言って、
「あんな振り方もダメだよ」
って言われてるけど、
通じてるんだからいいじゃん。
なんだか知らないけど、
もう、求道者みたいに、常に
「野球野球野球野球・・・」って、
「打ったタマの転がしかたがどうだ」
とか考えて、若いのにヒゲはやしてさ、
インタビューをされると
皇室の人みたいに話して・・・。
どういうんだろう、って思うわよ? |
糸井 |
(笑)俺はイチローが好きなんですよぉ。
ガンダムとかを好きなように好きなんです!
・・・まぁ、その話は別にしましょうか。
永六輔さんがやってくれた
「ピーコさんの育てかた」
って、父親だと思うんですよ。
「こうするといいよ」って丁寧に育てたでしょ。
だけど、ピーコさんの相手への接し方って、
ちょっと違うと思うんです。
「結果が出ても出なくても、あなたを愛します」
みたいな、そこが「おかあさん」と言うか。 |
ピーコ |
まあ、そうね。
「好き」っていうことは、
伝えることにしているわ。
だて、気持ち悪いじゃない、言わないと。 |
糸井 |
(笑) |
ピーコ |
その人がどう考えるかは、知らないの。 |
糸井 |
「ボクはキライです」と言われたら? |
ピーコ |
「あら、そう、よかったわね」って。 |
糸井 |
ふふふ(笑)。 |
ピーコ |
ほら、例えばわたしが、
「好きじゃない」と言われても
重里のことをものすごく好きになっちゃったら、
もう、あなたのおうちを、
崩壊させなきゃいけないわけじゃない? |
糸井 |
(笑)うわぁ! |
ピーコ |
わたしって、あなたにとって
すごく魅力的だと思うのよ。
・・・自分にない魅力があるでしょ? |
糸井 |
(笑)「でしょ?」って
そんなに強く言えるのがすごい。 |
ピーコ |
だから本なんて作ろうと思ったじゃない。
でも、わたしには、あなたに
わたしにない魅力があるかって言ったら、
それはないのよ。だから、いいじゃない。 |
糸井 |
(笑) |
ピーコ |
ごめんなさい? |
糸井 |
(笑)はいはい、わかったよ。なるほどね。 |
ピーコ |
もう、誰にも愛されなくてもいいと思う。 |
糸井 |
・・・おかあさん!
(※『しっかりして!』みたいな口調で) |
ピーコ |
あ、そうだ。この会場の中で、
おかあさんに向かって、好きだとか
愛してるだとか直接言ったことのある人、
手をあげてみて?
(会場の手を挙げてる人を見て)
・・・そうね、年とってから言うわよね。 |
糸井 |
(笑)こらこら! |
ピーコ |
ごめんなさい?
でも、若い時は言わないわよね。
ある程度、年をとると言える。
わたし、いま
いちばん会いたいのが母親なのね。 |
糸井 |
へぇ。 |
ピーコ |
涙出てくるもん、このごろ。
「会いたい」って、すごく思う。
ホモの子どもを持っちゃった親でしょ。
あのね、ゲイの子どもって、
おかあさんに告白ができないの。
世間にカミングアウトすることよりも、
おかあさんにカミングアウトすることがイヤなの。
おかあさんが、いやがるから。
こんなに女の人って、
美川憲一とかわたしをよろこぶのに、
自分の子どもがホモだと
気が狂っちゃいそうになるの。
そういうことを思うと、
うちの母はそんなこと言わなかったけど、
もうすこしおとなになってから、言いたかった。
「あなたはそう育って、
明治42年に生まれてわたしたちを育てて、
でも、わたしたちのような子どもを持って
しあわせだったでしょ」って。
どうやって、母として女として、
どうやって満足だったのか、それとも
ちょっと悔しかったのか、それを
聞いてみたかったという気持ちはあるの。
・・・わたしたちが36歳の時に死んだのよ? |
糸井 |
あぁ。 |
ピーコ |
36年も顔をつきあわせていたのに
いっさい聞かないで、そのままの状態で
母をなくしてしまったことに、
わたしは、自分がおろかだったなと思う。 |
糸井 |
それでよかった、という気持ちはないの? |
ピーコ |
いまゲイの人たちに
いろいろ言ってあげられることがあるとしたら、
「母親ってこう考えてるのよ」とか、
「うちの母親に話した時には
こういうふうに反応したわよ」とか、
伝えてあげられることがあるとしたら、
すこしは気持ちをやわらげてあげられるじゃない。 |
糸井 |
あー。
そういう考え方も、あるね。
(つづきます) |