糸井 |
カタログをつくる速度の問題はどう?
ものすごい忙しいんじゃないですか。 |
佐藤 |
はい、忙しいです。 |
糸井 |
あのカタログだと、
ビュンビュンやっていかなきゃ、いけないよね。
その恐怖って、なかった? |
佐藤 |
でも、もともと、
わたしがコピーライターになって、
はじめての仕事が、
デパートのカタログだったんです。
その時には、ワープロもなかったので
山ほど原稿を書きましたから、
自分としては、量をこなした自信がありましたね。 |
糸井 |
ああ、そういう経験って、生きますよね。 |
佐藤 |
だから、
「たぶんやればできる」という気持ちがあるし、
「やればできるけど、やっちゃいけないこと」
も、わかりますから。
自分がやらないべき仕事は
まわりに振ったりして、
うまくやってるんですけど。 |
野口 |
こんなに整理して、
仕事をまわせる女の人は、いないですよ。
一日やることなすこと。
仕事したぶんだけ、ちゃんと遊ぶし。
いないよ、こんな人。
いまのカタログをつくる環境に関しては、
わたしはリンダに、
ほんとに悪いことしたな、
と思ってることがあるんです。
さっき、ちょっと言ったように、
彼女なら、作家になるチャンスもあるんです。
いまカタログをつくってる時間で、
たぶん小説とかを書けば、
いいものができるはずで・・・。
その時間をつぶして、
カタログつくってくれているんです、この人。 |
糸井 |
夫が妻に言うみたいなセリフだね。
野口さんがリンダに関して言うことって(笑)。 |
野口 |
(笑)そうですよ、ほんとに。
カタログのジャンルとしては、
英訳して世界中にばらまきたいぐらいです。
いまの野望としては。
それをやるにはどうしたらいいか、
ということを、毎日考えているんだけど。 |
糸井 |
世界進出? |
野口 |
世界進出と言うよりも、
このすばらしいコピーを、
ほんとに世界的に読んでもらいたい。
それで、ものを、買ってもらいたい。 |
糸井 |
泣かせる女だなあ(笑)。 |
野口 |
泣かせるわけじゃなくて、野望、ほんとに。 |
糸井 |
野望の中にさ、心こもってるんだよ、妙に。 |
佐藤 |
そうですよね、すごいなと思う。 |
糸井 |
そこがすごいのよ。
野望ってだけなら、みんなが、
できもしないことを語ってるけど、
あなたの場合は、本気だもの。 |
野口 |
だってほんとに、
作家とかになれるチャンスが、いまないんですよ。 |
佐藤 |
わたしコピーライターのほうがいいです。 |
野口 |
まあでも、商売人にしてしまったわけで、
それほど、彼女のコピーを愛しているんです。 |
糸井 |
『PJ』って、リアルさがいいですよね。
ちょうどいま、ぼくは、
野口さんやリンダから、
リアルな話をそのまま聞いて
そのまま本のかたちに出したほうが、
夢物語を集めた企業神話本を作るよりも
ずっと魅力的に読めると感じているんです。
それと同じように、
『PJ』って、カタログにありすぎな、
ツルツルして無害な写真だけが
掲載されていることには、
絶対になっていないですよね。
それが、すごくいいなあと思います。
「それ、マズいんじゃない?」
ってくりかえすうちに、無難で
人畜無害のものだけができちゃうことが、
世の中でいちばんつまんないことだもん。
人間には体毛があるのに、
そこを無視したツルツルしたつくりものを
いっくら作ったって、いまの時代には、
「やらせだ」って、バレますよね。
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