糸井 |
『ピーチジョン』のカタログの写真は、
時にはシミとか体毛とかを出したり、
化粧をしてない顔もパーッと出したり、
そんなことをしているじゃないですか。
あれは、敢えて体毛が出ていることや
化粧が落ちていることを、
社長たちが知りながらゴーサイン出してる感じが、
すごいおもしろいなあと思うんです。 |
野口 |
ありがとうございます。
他の下着のカタログを見ていて時に、
もともと肌のきれいな人を選んだりとか、
商品を身につけた時にはシワひとつないとか、
そういうのがありますよね?
わたし、それはもともとすごくイヤだったんです。
読んでいて「ウソだろ?」と思うから。
わたしは、リアルなものが好きなので。
だから、掲載しないものといったら、
見苦しくはみでた肉とか、
ビキニラインの毛を抜いた跡とか、
浮きすぎた腕の血管とかです。
タトゥーや、シミやそばかすや、
独特のアクセサリーだとか、
その人の人生を表現しているものに関しては、
カタログに掲載する時であっても、
そのままにしていい、
というようにしているんです。 |
佐藤 |
でも、社長がこうやって考えているんだ、
ということを、ふだんから
さんざん言っているにも関わらず、
スタッフの中には、「におい消し」のように
写真をなおしたり変えようとするヤツもいて。
そんなことをしたら、
真正面を向いた写真しかなくなっちゃいますよ。
そういうものは作りたくないんです。
胸を内側に寄せるブラジャーをつけた時に、
ワキの下の肉にシワが寄るって、
当たり前のことじゃないですか。 |
糸井 |
そうだよねえ。
逆にその時に、
シワもシミも載せた写真にすることで、
「あなたとカタログ上は、地面がつながってるよ」
というメッセージを、読み手は感じていますよね。
写真が空中に浮いた夢物語にはならないから、
逆に信頼できるカタログとして読めますよね。 |
佐藤 |
そう思います。 |
糸井 |
ピーチジョンって、
もともとゼロからのスタートで、
貧乏で忙しいところからやっているから、
カタログづくりにしても、ひとつずつ、
「あ、いけね」の連続で
現実を覚えていったと思うんですよ。
そこがすごい。
シミを残していることだって、
一般的にやっていたら、最初から
「取っとくんじゃないの?」
って、曖昧にすませがちなことですよね。
最初は、貧乏と多忙ゆえに、
そうはできなかったんでしょ・
そんなにのんびりやっていたら
1冊もカタログが出ないわけだから、
すごいスピードでつくってみちゃう。
「あ、ここは、しょうがないや。
・・・というより、そのままのほうがいい」
そう、あとから考えられるんだと思うんです。
だから、思わずやっちゃったことの
いいところだけを残して今日まで来れたんだね。 |
佐藤 |
はい。 |
野口 |
ただ、すごい悔しい思いは、していますよ。
例えば、かっこいいブランドの広告は、
写真がスコーンとあって、
ピッとブランド名だけ、書いてありますよね。
確かにかっこいいけども、それは
私たち通販の仕事ではないじゃないですか。
紙の上だけで商品のよさを伝えて
はじめて、の商売ですから。
だから、まっとうなことをやっていますが、
やはり通販って、なんかブランドとして
「下」に見られがちなんですよね。
センスとして「下」に見られる
コメントをされたりすると、悔しい。
「だったら、
カタログを200ページ作ってみろよ!」
と言いたいぐらいです。
ブランド名だけ入れるなら、
誰だってできるじゃないですか(笑)。
わたしたちが1ページつくるのに、
どれだけ労力を使っているか・・・。 |