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糸井 |
そういう中で、
徐々にふたりは、仲良くなってったの? |
佐藤 |
例えば、ごはんを一緒に、
食べにいくじゃないですか。
それで、サンドイッチを食べた場合……。
サンドイッチが、
ふたつに切ってありますよ。
そしたら、
両方食べたいじゃないですか、女子は。
だから、半分ずつ食べて、
「とりかえっこしようよ。
そしたら、両方、食べられるじゃん」
って言ったんです。
「あ、取りかえて、くれるんだ?」
「なんで?」
「……こっちに来てから、
そういうことを、
言われたことがなかったから」
それを聞いて、ほろっと。 |
野口 |
……(笑) |
糸井 |
ふたりの心理が、すごいよね。
映画の『真夜中のカウボーイ』みたい。
ジョン・ボイドとダスティン・ホフマンで。 |
野口 |
でも、優しい人が、
ほんと、いなかったんです。
はじめてはたらいてた
あの会社を思い出すと、
涙が出るんだけど、ほんとに。
「イナカモン、帰れよ、仙台に」
「何しに東京に来たんだよ」
みたいなトップだったの、男のひとたちが。 |
糸井 |
力のないヤツに限って、
だいたい、そういうことするでしょ? |
野口 |
そう。
なまってる言葉を、まねされたりとか。 |
佐藤 |
会社の入り口近くに、黒板があるんです。
「今日の予定」とかを、
書くところなんだけど。
ミカちゃんは、アルバイトなので、
早く来ますよね。
そうすると、ミカちゃん、
何をやっているかと言うと、
その黒板に、
会社の人全員の似顔絵だとか、
わたしみたいな
フリーのコピーライターだとか、
いつも出入りしている人の
顔を描いてるの。
そっくりなんです。
お腹が痛くなるほどうまいのに、
CDが消しちゃうんですよ。
似すぎていて、イヤだったのかも。
CDハゲだったし。 |
野口 |
いやな描き方じゃなかったと思うのに。
下品な絵じゃ、ないんですよ。 |
佐藤 |
すごいかわいい、愛があったよね。 |
糸井 |
その素直さが、
ひねくれた人から見たら、
嫌なんだろうね。 |
野口 |
きっとそう。 |
糸井 |
そこのCDとかAD
(アートディレクター)は?
その時何歳ぐらいだったんだろう? |
佐藤 |
わからないけど、
今思えば、意外と
若かったのかもしれないね。 |
野口 |
白い麻のスーツとかを着て、
営業に行っちゃうタイプで。 |
佐藤 |
40歳ぐらいだったんじゃない? |
糸井 |
業界用語、混ぜたりする? |
野口 |
カタカナを半分使うみたいな略語を。 |
糸井 |
今ならソリューションとか言いそうだな。 |
野口 |
(笑)そうー。 |
佐藤 |
兄弟でやってた会社なんですよ。
太ってるハゲの人がADで、
細いハゲの人がCDだった。 |
野口 |
ふたりとも、若ハゲなんです(笑)。 |
糸井 |
(笑)ツルピカ・ブラザーズ? |
野口 |
(笑)ええ。
しかもそこに、また
営業担当の社長というのがいて、
3人で仕事をやってました。 |
糸井 |
3人、ハゲ? |
佐藤 |
(笑)いえ。
社長はハゲじゃなくてチビ、です。 |
野口 |
これぐらい(そうとう小さい)の人。
10人しかいないのに、
3人の権力のある会社で。
わたしはいちばん下っ端だったんで、
みんなの手伝いを
しなきゃいけないですよね。
だから、3人それぞれの、
ほかのふたりに対する悪口まで聞かされて。
「すいません、社長からお電話です」
「今、出れねえって言ってんだろ!」
と言われますよね。
で、社長に
「出れないそうです」と伝えると、
「なんでつながないんだよ、オマエ!」
みたいな。 |
糸井 |
テレビドラマに出る
プロダクションみたいなもんね。 |
野口 |
まあ、
わたしのほうが悪いところも、
もちろんたくさんあって、
実は、わたしのほうが
8割ぐらい悪いんですけど(笑)。 |
佐藤 |
(笑)そう。悪い。
ミカちゃん、会社のお金で
サンドイッチ買って、
食べてましたもん。 |
糸井 |
あはははは。 |
佐藤 |
それ、もらいましたから。 |
糸井 |
リンダも、食うは食うんだ(笑)。 |
佐藤 |
(笑)一応。
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