野口 |
でも夜の世界はいろいろしくみがあって、
そこで、3カ月ぐらい、はたらいたことは、
すごくおもしろかったんですよ。
今でも、とても勉強になったと思ってます。 |
糸井 |
へえ。 |
野口 |
女のコはシフトで20人ぐらいいて、
そこで初めて指名制ということを覚えました。 |
佐藤 |
名前は、何だった? |
野口 |
「みか」 |
糸井 |
ああ、そのままだったのね。 |
野口 |
それで例えば、
お店の壁にオーナーの名前が
貼ってあるじゃないですか?
でも、その人は、
ほんとのオーナーじゃなくて、
そこらへんの、オヤジだったりする。
絶対に名前は出てこない
オーナーが裏にいて、
何か問題があっても、
ほんとのオーナーは、
ホテルかなんかで悠々と暮らしていて、
つかまらないシステムになっていたり、
そういうことが、よくわかりました。
あとは、どうやって
人を雇っているかとか、
どう女のコを働かせて売上あげるかとか、
そのあたりも見ましたし。
お客さんとしていろいろな男の人に会うから、
その人たちに、仕事のお話を聞いたりとか。 |
糸井 |
その3カ月は、濃いね。 |
野口 |
濃いですよ、めちゃくちゃ濃くて。 |
糸井 |
教科書1冊、丸暗記したみたいなもんだね。 |
野口 |
どうやったら男は客になるかとか、
私の場合はぜんぜん美人じゃないから、
もともと、色気を求めてる人は
絶対に、お客につかないんですよ。 |
糸井 |
若さとかは、なかったの? |
野口 |
うん。
でもわたしは、
若い時のほうが老けてるんです。
何というんだろう?
不良の男みたいなもんで、
若いけどイキがってる時に
老けてる人って、いるじゃないですか。 |
糸井 |
(笑)うん。
暴走族、老けてるよね。 |
野口 |
(笑)わざと老けたこと言ったりして。
わたしは、20歳ぐらいの時のほうが、
今よりも、ある意味、老けてたと思う。 |
糸井 |
平気で歌舞伎町に勤めちゃってて、
怖いもの知らずなんですね。 |
野口 |
ただの好奇心の塊みたいな。
おもしろそうだったら、
なんでも見てみたいんです。
本も読むし、雑誌がとにかく好きだし、
『anan』なんかは、
創刊号から、押し入れに
いっぱいになるくらい持ってました。
仙台で持ってたものなのに、
そばにないと嫌で、わざわざ
東京の狭いアパートに持ってきてたんです。
ダンボールで20個くらい。 |
糸井 |
俺も『anan』の編集部、
その頃、入りたかったの。実は。 |
野口 |
わたしも。
そういう本が大好きだったし、
メジャーなことを気にしていたから、
「何でわたしは、こういうところで
仕事をすることができないんだろう?」
と思っていたんですけど。
でも、だんだんわかってくると、
「見ちゃったから、いいや。はいおしまい」
みたいな気持ちになっちゃいまして。
それよりも、
そういう雑誌には書いていないものに、
興味が行っちゃって。 |
糸井 |
歌舞伎町とかか。
狩人だねえ。 |
野口 |
雑誌でわかったから、いいし、
自分で何をやっても生きていけるから、
まあいいや、と思っちゃったんでしょうね。 |
糸井 |
強いことは、強いね。 |
野口 |
まあ、無鉄砲だったと思うし、
計画性はないし、行き当たりばったりだし、
誰でも好きになっちゃうし(笑)。
興味があると、
誰にでも会いにいっちゃったし。
|