胸から伝わるっ。
ピーチ・ジョンがふくらんでいく物語。

 
第14回 雑誌に載っていないことを知りたい。

野口 でも夜の世界はいろいろしくみがあって、
そこで、3カ月ぐらい、はたらいたことは、
すごくおもしろかったんですよ。
今でも、とても勉強になったと思ってます。
糸井 へえ。
野口 女のコはシフトで20人ぐらいいて、
そこで初めて指名制ということを覚えました。
佐藤 名前は、何だった?
野口 「みか」
糸井 ああ、そのままだったのね。
野口 それで例えば、
お店の壁にオーナーの名前が
貼ってあるじゃないですか?
でも、その人は、
ほんとのオーナーじゃなくて、
そこらへんの、オヤジだったりする。

絶対に名前は出てこない
オーナーが裏にいて、
何か問題があっても、
ほんとのオーナーは、
ホテルかなんかで悠々と暮らしていて、
つかまらないシステムになっていたり、
そういうことが、よくわかりました。

あとは、どうやって
人を雇っているかとか、
どう女のコを働かせて売上あげるかとか、
そのあたりも見ましたし。

お客さんとしていろいろな男の人に会うから、
その人たちに、仕事のお話を聞いたりとか。
糸井 その3カ月は、濃いね。
野口 濃いですよ、めちゃくちゃ濃くて。
糸井 教科書1冊、丸暗記したみたいなもんだね。
野口 どうやったら男は客になるかとか、
私の場合はぜんぜん美人じゃないから、
もともと、色気を求めてる人は
絶対に、お客につかないんですよ。
糸井 若さとかは、なかったの?
野口 うん。
でもわたしは、
若い時のほうが老けてるんです。

何というんだろう?
不良の男みたいなもんで、
若いけどイキがってる時に
老けてる人って、いるじゃないですか。
糸井 (笑)うん。
暴走族、老けてるよね。
野口 (笑)わざと老けたこと言ったりして。
わたしは、20歳ぐらいの時のほうが、
今よりも、ある意味、老けてたと思う。
糸井 平気で歌舞伎町に勤めちゃってて、
怖いもの知らずなんですね。
野口 ただの好奇心の塊みたいな。

おもしろそうだったら、
なんでも見てみたいんです。

本も読むし、雑誌がとにかく好きだし、
『anan』なんかは、
創刊号から、押し入れに
いっぱいになるくらい持ってました。
仙台で持ってたものなのに、
そばにないと嫌で、わざわざ
東京の狭いアパートに持ってきてたんです。
ダンボールで20個くらい。
糸井 俺も『anan』の編集部、
その頃、入りたかったの。実は。
野口 わたしも。

そういう本が大好きだったし、
メジャーなことを気にしていたから、
「何でわたしは、こういうところで
 仕事をすることができないんだろう?」
と思っていたんですけど。

でも、だんだんわかってくると、
「見ちゃったから、いいや。はいおしまい」
みたいな気持ちになっちゃいまして。

それよりも、
そういう雑誌には書いていないものに、
興味が行っちゃって。
糸井 歌舞伎町とかか。
狩人だねえ。
野口 雑誌でわかったから、いいし、
自分で何をやっても生きていけるから、
まあいいや、と思っちゃったんでしょうね。
糸井 強いことは、強いね。
野口 まあ、無鉄砲だったと思うし、
計画性はないし、行き当たりばったりだし、
誰でも好きになっちゃうし(笑)。
興味があると、
誰にでも会いにいっちゃったし。

(つづきます)

2001-10-11-THU

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