糸井 |
仕事は、何をやっていたんですか。 |
野口 |
ダンナは、卸売をして浮いたお金で、
少しずつ広告のスペースを買ってきて、
オリジナルの通販を、『週刊宝石』とか
そういうところではじめようとしていたんです。
いわゆるピンク商品から、やろうとしてましたね。
例えば、腰にひくクッションで。 |
糸井 |
あ。
ケツに敷くとちょっとあがる、みたいな。 |
野口 |
ノリがよくなるとか。 |
佐藤 |
そんなの、あるんだ? |
野口 |
あるんです。
でも、ダンナに
「ピンク商品を売るんだ」
と言われて、「ええ?」と思いましたよ(笑)。
いや、広告つくるのは、やりたかったんだけど、
でも、わたし的には、もう、
「『anan』の編集部に入るはずが、
何で、こんな浮き輪みたいなものを、
9800円で売る広告を考えなきゃいけないの?」
と思っていまして。
広告費、7万円でした。
版下まで、自分でつくってくれ、と言われて。
近所の写植屋を探して、コピーも自分で書いて。
「ナイトクッション」とか(笑)。 |
佐藤 |
テレるね。 |
野口 |
テレるよ。
でも、これもまたよい思い出。
コピーも描いて、版下を持っていって、
広告が雑誌に載るじゃないですか。
それで、注文の電話が来ると、
コンピュータなんかなかったから、
台帳をつくって、発送伝票を書いて……。 |
糸井 |
おお。ぜんぶやるんだ。
役に立つ女だねぇ。 |
野口 |
そうなんです(笑)。
今、ピーチ・ジョンには、
500人ぐらいスタッフがいますけれども、
わたしがみんなに威張れるのは、そこですね。
広告もつくるし、電話受けも、
発送もひとりでやっていたわけだから。
お客さんからの注文が、
1日1件くらいしか来なかった時からやっているので、
そこは、誇りですね。 |
糸井 |
商品は、どのくらい売れてましたか。 |
野口 |
不思議なんですけど、
通販の広告って、私の経験から言うと、
広告費相当の売り上げしか、ないんです。
7万円かけたら、9800円のものが7個売れる。
だから、原価も含めると、
ぜんぜん採算あわないんですよ。
まあ、ダンナにいろいろ仕込まれたので、
だんだん、通販のことも、覚えるようになりました。
はがきの申し込み用紙のひな型も、
ぜんぶ、つくらなくちゃいけないじゃないですか。
細かい所まで、徹底的に教えてもらったし。
でも、最初の2年間はケンカしましたね。
彼は、それまでのドロドロした通販広告
のイメージを捨てないから、
「白いところに文字を入れろ。
とにかくもったいないから何でも書きこめ」
みたいなことを言うんです。
それがノウハウでもあるとは思うのですが、
「どうしてそんなに汚いものを、
つくらなきゃならないんだろう?」
と思って、ほんとに、しょんぼりしちゃって。 |
糸井 |
「ナイトクッション」から連続して、いくつも? |
野口 |
もう、いろんなものをやってますよ。
シークレットシューズもやりましたし、
最終的には、
さまざまなピンク商品のカタログまで、つくりましたもの。
バイブレーターとかもぜんぶ集めた
オトナのおもちゃのカタログもつくりました。
でも、巷の汚いカタログをわたしはつくれないし、
女の人にも売ったほうがいいと思っていたから、
あたりさわりなく、女の人にもイメージがふくらむ、
オトナのおもちゃのカタログを制作しました。 |
糸井 |
そろそろ、出てきたね。
「今までどおりじゃイヤだ」
みたいな気分は。 |
野口 |
何かをきっと、変えたいんです。 |