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最新の記事 2006/03/20
 
 
「南極観測隊斎藤さんへ」という題名のメールが
数多く届いています。
感想も、はげましも、そして見たことのない
「南極」という地で暮らす斎藤さんに
訊いてみたいことも
たくさんつづられていました。

遠い世界のことではなく、
ちょっと仲良しのお兄ちゃんに
南極のことを訊いてみようかな、
という感じでしょうか。

本日は「ひとりひとりのメールにお礼を言いたい」
と言っていた斎藤さんから届いた
回答の第一弾をお届けします。


オンタイムとオフタイム。

メールをいただき、ありがとうございました。
毎回毎回、いろんな人に関心を持っていただき、
ありがたいことです。

=
南極で生活(仕事)するって
どんなふうなのかは
なかなか想像がつかないです。
ぜひ教えてください!!
(音の虫)

ドームふじ基地では
昨年末から2006年1月まで
大陸を覆った氷を3000mまで
掘ることに成功しました。

私が担当している仕事はこの計画の最終段階で、
今年の終わりから来年にかけて
3000mより深いところの氷を採取することです。
(この掘削した氷は日本に運ばれて、
 掘削を進めているプロジェクトの研究者によって
 解析が進められる予定です)


ドームふじ基地の掘削場。
金属の台に乗っているのが掘削ドリル。
これで3000m、掘りました。


ドームふじ基地までは南極用に作られた
「SM100」という2tのソリを7台も引ける雪上車で、
おおよそ3週間かけて移動します。

このように昭和基地を離れて行動することを
「旅行」といい、
越冬中は「ドーム基地旅行」や
「ペンギンセンサス旅行」など
多くの調査旅行が行われます。


内陸旅行の様子。
SM100大型雪上車が橇を引いています。


ピンとこないと思いますが、
出張のようなものですね。

それで昭和基地にいる間は
雪上車が引いていく荷物、
主にドラム缶に入れた燃料などをソリに積んだり、
食料の用意などいろいろな準備と、
旅行にはどれだけ日数がかかるか、
燃料はどれくらい必要かなど
具体的な旅行計画を立てています。

こうした仕事は天気をみながら作業を進めます。
ここの天気は突然変わることがあって、
天気が悪いときはデスクワークをしますが、
時には休むこともあります。
臨機応変に対応することが大切ですね。


2月11日、内陸旅行を終え、
昭和基地に戻るヘリから見下ろす雪上車。
この車で往復2000km走ります。


昭和基地の生活についてですが、
仕事と生活が一体になっているように感じます。
今年は36人が越冬します。
隊員は皆それぞれの道の専門家ですので、
ここには36人の社長がいて
36の会社があるような社会です。

ただし、どの会社も社長一人社員一人ですね。
そうすると時には一人ではできない作業もでてきます。
そのときは手の空いている人たちが一時、
そこの社員になって手伝います。

例えば燃料の入ったドラム缶を移動しようとすると、
燃料担当の人に加え、
調理師も医師ももちろん研究者も手のあいている人が
一緒にドラム缶の大移動です。

研究者が昭和基地を離れて調査に行くときには、
雪上車を担当する機械部門の隊員や、
長期にわたる場合は医師も同行します。

また、ここには医師はいますが看護師がいません。
もし怪我などで看護師が必要になった場合に備え、
医師によって看護講習が越冬中に何度か行われます。

この仕事の手伝いばかりは避けたいですが、
万が一のためですね。

このほかに基地の掃除、
調理の手伝いなどの当直があり、
自分の仕事と合わせていろいろなことをしています。
でも、ぜんぜん大変なことじゃないですね、
私にとっては。

日本ではできないこともできることが南極生活のいいところ。
なんでも興味津々でいると本当に面白いです。

さて、仕事の質問と同時に
オフのときのことについて質問をいただきました。


=
家族はみんな理系で
父も姉も研究職についているのですが、
なぜか私だけ文科系に進んでいます。
それでもなんとなく親近感が湧いて
メールをしてみたりしているのは、
やっぱり気にはなるのでしょうね。

ただ、斎藤さんには父や姉のイメージというより
宇宙飛行士の毛利さんのようなイメージを
抱いています。

私は、オフの時間がとても大切で、
バーやクラブだったり、カフェや家だったりと
友達と会う時間がないとだめなのですが、
斎藤さんはオフの時間はどんなことをして
過ごされるのでしょうか?
インターネットは繋がっているのですよね?
やっぱりインターネットを見て
過ごされたりするのでしょうか?
(晴)

毛利さんとは、少々、いやいやかなり恐縮します。
前の観測隊との交代は2月1日です。
47次隊の生活が始まって一ヶ月がたちました。

越冬に向けた外の作業がほぼ終わり、
2月のとある日曜日に
昭和基地があるオングル島一周の遠足をしました。

大の大人が遠足? なかなか面白いでしょう。
でも、これからいろいろな調査で島の外に出て、
海氷の上から島を見たときに
基地の様子を知る大切な知識になります。
遊びと仕事を兼ねたオフの過ごし方です。


ある日の遠足。
左に見える金属はソーラーパネルです。


基地の中にはバーがあります。
なかなか洒落た雰囲気で
一見すると南極とは思えません。

お酒好きの隊員がバーテンになり
週に3日、開店します。

今のところ落ち着いたバーですが、
きっとそのうち趣向を凝らした店が
登場することでしょうね。
たとえば女形とか‥‥。
それはまた別の機会に。

昭和基地には
仕事とは別の生活を楽しむ係りがあります。

バーの係りもそうですし、
ほかには新聞、農協、漁協、ミシン、木工などがあり、
自分の得意分野ややってみたい係りに入って
仕事以外でも楽しんでいます。
もちろん、参加は個人の自由です。

インターネットは
基地内ではどこでも使える環境にあり、
これは日本とあまり変わりません。

あと、観測隊員が36人もいると
中には楽器ができる人がいて、
最近は持ってきた楽器をもちより
南極バンドをはじめました。
できのほうは今後の楽しみですが、
今のところ酔った人の前でしか演奏できません。

このような感じで
観測隊生活のオフタイムを楽しみ、
そしてまた観測に戻っていきます。

2006年3月16日
今日は曇りです。
気温はー5度前後。
まだ厚着はしないで大丈夫です。

昭和基地 斎藤健

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回答を読んでいると
また訊いてみたいことが浮かんできませんか。
「それはまた別の機会に」という言葉にも
非常に心をくすぐられます。

「こんなことも訊いてみたい!」と思いついたときは
件名を「南極観測隊斎藤さんへ」として
postman@1101.comまで
ぜひメールをお寄せください。
一通一通のメールが
南極でパソコンに向かう斎藤さんに
勢いをつけています!

南極観測について、
さらに知りたいという方は
こちらの「極地研究所」のホームページ
ぜひご覧ください。
 
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