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最新の記事 2006/03/30
 
 
斎藤さんからメールが届くようになってから
南極で活躍する日本の観測隊が
どんどん身近になっているのですが、
実は南極大陸には
世界中から人が集まっているんですよね。
今回も知っているようで知らない
南極の話が送られてきました。


南極はどこの国のもの?

=
子供のころ「南極物語」という映画を見て
すごい生活だと思いました。
極寒の地で観測任務を行なっておられる方々に
敬意を表します。

普通の生活を送っている者として、
想像もつかない世界ですが‥‥
外国のクルーとの交流はあるんですか?
(たか)

=
南極には色々な国の観測隊が
滞在していると思うのですが
それら、他の国の観測隊との交流とかって
あるのでしょうか?
共同で研究したりとか、
はたまた一緒にイベントを計画したりだとか。
遠くの親戚より近くの他人的に
南極隊同志も密なやりとりがあるのかしら‥‥なんて。
(もっち)

今、研究は個人単位ばかりではなく、
国や分野を超えた共同研究が増えてきました。

第47次観測隊の夏隊では
中国の研究者が「しらせ」に乗船し、
そしてドイツの研究者が
昭和基地で日本の研究者と合流し、
2ヶ月間観測をしていました。

また、「しらせ」とは別に
飛行機で内陸に向かったドームふじ航空隊は
ロシアのノボラザレフスカヤ基地で数日待機してから
ドームふじ基地近くの航空拠点へ向かいました。


ノボラザレフスカヤ基地の飛行場。
いろいろな国の研究者と一緒に
このイリューシンという飛行機で
ケープタウンから飛んできました。



ノボラザレフスカヤから
ドームふじ基地近くの飛行場に向かう
機内からみた大陸です。
ヌナタクと呼ばれる
近くの山脈から孤立して突き出た岩峰が
見えています。


こうして夏の間は外国の基地や研究者と
少ないながらも交流がありますが、
残念ながら越冬中の交流はありません。

南極では40〜50の基地で
観測が行われていますが、
なにしろ南極の面積は日本の約37倍。

一番近い基地でも数百キロ離れていて、
冬の間の往来は少々難しいです。
ただし、どこかの基地で何か起こった場合は
各国が連携し、
最大のレスキューが行われるようになっています。

また、南極では、
国際的な取り決めがなされています。
1959年に国際的科学協力体制を維持、
発展させるため
南極に関係する12カ国が南極条約を採択しました。

内容は平和的利用、
領土権主張の凍結などで、
結果、南極はどこの国にも属さない
科学研究の場となりました。

では南極に入るときは、
パスポートはどうなるのか?

日本の観測隊は
日本〜オーストラリア
(もしくは南アフリカ共和国のケープタウン)を経由し
南極に行きます。

観測事業は国の出張であるため、
隊員たちには南極に行くことと、
どこの国を経由するかが記載された
公用パスポートが発給されます。
パスポートは最後に出国する
オーストラリアまで必要で、
あとは翌年、
オーストラリアに戻ってくるまで必要ありません。
それは南極条約が今も守られ、
南極はどこの国にも属さないからなのです。

2006年3月25日
今日の昭和基地は−10℃前後、
15m/sほどのやや強い風です。

昭和基地 斎藤健

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「国」というくくりに属さなくて
パスポートがいらなくて
お隣りさんは数百キロというところは
やはり想像を超えています。

なにも疑問を持っていなかったことも、
「南極」というフィルターを通すと
違ったことが起きているかもしれません。

観測隊員の人たちは
こういうときはどう思っているんだろう?
なにを持っているんだろう?
そんなふと思いついた質問や
斎藤さんのメールへの感想などは
いつでも件名を「南極観測隊斎藤さんへ」として
postman@1101.comまで
ぜひメールをお寄せください。
「ふつう」と思っていることが
簡単に「ふつう」ではなくなるかもしれません。

南極観測について、
さらに知りたいという方は
こちらの「極地研究所」のホームページ
ぜひご覧ください。
 
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