相田さん、だいじょぶか? 「なんとかスタン方面」からの現場報告。 |
#1 何がはじまるのか、見当もつかないけど。 こういうメールが来たとき、 ふつうの雑誌や新聞の編集長なら、どうするのだろう。 _____↓__相田さんのメール___________ ほぼにちは。 私、自称>希代の写真家、本性>なまけもの、 実態>日雇いカメラドカタ、の41才出戻り独身の トシ・アイダと申します。 さて、ワタクシいよいよ金に困り、 近々に中央アジアへいってまいります。 そうです金に目が眩んだのです。なんたって、 あの馬面ビンラディンおぢさんをタイホしちゃうと、 500まんどるくれると、 ぶっしゅじゅにあ、がいってるんです。 作戦は完ぺきです。 もうすでにデルタフォースと同様に アクションは起こされています。 オフレコで作戦内容の一部をお話しますが、 くれぐれもリークはしないでください。 『おヒゲのビンちゃん捕獲作戦』 ●作戦1 ×××××(内容非公開) ××××××××××××××××× ××××・・のようにしてビンラディン氏と面会をする。 ●作戦2 ビンラディン氏と対面したら、すかさず 「馬になれ」と催眠術を かける。 ビンちゃんがよつんばいになって 「ヒヒーン」といなないたところで、 ヒゲをたづなに背中にまたがって パッカパッカと「お馬サンゴッコ」をする。 むろん側近はその時点で私がラディン氏の 52番目の隠し子だと信じているので とめだてはされない。 そのままパカパカと自家用機に乗り込み 日本まで連れてくる。 以上。 すでに今朝、図書館で 「すぐできる催眠術入門」借りてきました。 しかし、このような話を正直に人に言っていては 私が基地外だとバレてしまうので、 上記の話はくれぐれもいますぐお忘れになってください。 さて公式的には、「何で報道カメラマンでも無い私が 中央アジアへおっとりがたなで飛んで行くのか」 と申しますと、私は1993年に写真展の撮影のために ウズベキスタン・キルギスタン・トルクメニスタンの 3カ国に2ヶ月間ほど滞在しており、 各地に知人がいるからです。 特にキルギスでは初めての土地で 言葉もろくろく話せない私を、 自宅に泊めてくれた父母、友人達がおります。 テロ事件報道を見るにつけ、 7頭しかいない羊のうちの 一頭を裁いて歓待してくれたばあちゃん、 よりによってこのワタシに、 「あへんを1キロ買わんか」と持ちかけた いなかの不良にいちゃん達、 ひとづてに好きだと告白してくれた茶店のねえちゃんは、 別れの日にマーブルチョコを渡したらそれをにぎりしめて、 ほほをそめてうつむいたっけ。 うーむ、いてもたってもいられん。 というわけです。 また、ワールドトレードセンタービルに 飛行機が突っ込む映像を見た時、 多くのみなさんと同じように、 「ああ、ついにハルマゲドンが始まっちゃったか。」と 思いまして、このちょんまげ、ぢゃなくて ハルマゲドンてゆーのは、結局、 「一人ひとりの心の中に繰り広げられる戦い。」だと想い、 その戦いの白組に入って お手玉の一つもカゴに投げ入れるのが 私本来の仕事ではなかったのだろうか。 などと考えたのも現地に行く理由の一つです。公式的には。 そんなこんなであそこらへんでうろついて、 「ウズベクのとっつあん達が メッカに向かってお祈りするときには、 まだ穴開きクツシタの行列が見れるのだろうか」 といった重要事項を現地よりメールにて 緊急レポートさせていただければオモシロイかな、と 御連絡したしだいです。 興味が御有りでしたら、ご返報ください。 相田 年一 ___________________________ ご興味、ぼくには、あった。 何がどういうもんだかわからないし、 この相田さんという自称「カメラドカタ」のことを 知らないままなのだけれど、文体とか、照れ具合とか、 けっこう遠慮がちでありながら、アクティブな感じとか、 ぼくのカンでは、おもしろい人だと思った。 どう料理していいのかわからないけれど、 ともかくぼくは返事を書いた。 ________↓_darlingメール__________ ほぼにちわ。イトイです。 ご提案ありがとうございます。 穴あき靴下の行列のような視点で、 もし通信がいただけるなら、 ぼくとしてはぜひ読んでみたいですが、 「ほぼ日」はごぞんじように、 タダなんですが、それでもいいのでしょうか? ひょっとして、もっと野心的な雑誌が、 お買い上げくださるかもしれませんが。 ぼくのほうは、 時事ものは、そのままやってもいままでのメディアと 同じになってしまうので、 アナアキ靴下の行列的なものこそ読みたいのですが、 よろしければ、お願いします。 ___________________________ 「ほぼ日」に連載をしてやってもいい、というメールは、 しょっちゅうじゃんじゃん来るのだけれど、 これを、そのまま「はい」と受け入れることは ほとんどない。 何度かメールを重ねて読んでいるうちに、 その人の、単なる熱心さや野心を超えた、 「なんかしら」が見える瞬間があって、そのときに、 その人がやったらおもしろそうだなという企画が、 ぼくのほうに思いついたときに、 こちらからお願いする。 この相田さん、に関しては、 なんか、最初から、ぼくの嗅覚に感じるものがあった。 (つづく) |
2001-10-30-TUE
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