アジオ、アジコ、アジノモト博士
天久聖一の味写入門

第1回
「味写」ってなあに?



アジオ&アジコ
博士こんにちは。

博士
やあ、アジオ君、アジコさんよく来たね。
今日はなんの用だい?

アジオ
実は博士にボクたちの撮った写真を
見てもらいたくてやってきました。

博士
そうかい。どれどれ見せてごらん。

アジコ
どうですか? 博士。

博士
うんうん。どれも良く撮れているじゃないか。
上手だよ。

アジオ
えっへん!

博士
そっちの写真も見せてくれないかい?

アジオ
こっちはダメです。

博士
どうしてだい?

アジコ
こっちは失敗なんです。
とても博士に見せられるような写真じゃないわ。

博士
いいから見せてごらん。

アジオ
イヤだい。博士きっと笑うもの。

博士
じゃあ笑わないって約束するよ。
さあ見せてくれるね。

アジコ
博士もああ仰ってるんだし、見せてあげれば?
アジオ君。

アジオ
本当に笑わない?

博士
ああ、笑わないよ。

アジオ
絶対だよ。じゃあ見せてあげる。はい。

味写No.001「特訓」
写真をクリックすると、さらに大きな写真をご覧いただけます。


博士
ワッハッハッハッハッハッ
ハッハッハッハッハッハ!

アジオ
ああっ! 笑った!

博士
ヒッ〜ヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ!
あ〜苦しい!

アジコ
博士の嘘つき!

博士
いやあ、ごめんごめんおふたりさん。
しかしこれは傑作だよ。

アジオ
傑作なものかい。あんなに笑っておいて!

アジコ
そうよ!ひどいわ!

博士
まあまあ落ち着いて。
確かに笑ったのはいけなかった。
でも傑作というのは本当だよ。
君たちは味写ということばを知っているかい?


アジオ&アジコ
味写?

博士
実はいま私が日夜研究している
新しいタイプの写真スタイル、
それが味写なんだ。

アジオ
へえ、面白そう!
どんな写真なんだろう? 味写って。

博士
いま君たちが私に見せてくれたその写真、
まさにそれが味写だよ。


アジオ&アジコ
ええ〜!!

アジオ
ねえ、博士!
この写真のどこがその‥‥味写なんですか?

博士
じゃあもう一度、君たちの写真を見てみよう。
アジオ君はこれが失敗だと言ったけど、
具体的にどこが失敗だったと思うんだい?

アジオ
だってこれは運動会で
友達のヨシ子ちゃんを撮った写真なんだけど、
なぜか顔が笑ってるでしょ。

アジコ
本当は彼女、真剣に走っていたんです。

博士
でも写真ではなぜか
フザケているようにしか見えない。
他には?

アジオ
ポーズもなんか、
かっこよく走ってる感じじゃないし、
あと手前のおじさんが‥‥。

アジコ
全然知らない人なんです。
なのにこの人まるで先生みたいに‥‥。

博士
全く知らない人が主役のように写ってる。
これも君たちにとっては失敗だ。


アジオ&アジコ
はい。その通りです。

博士
素晴らしいじゃないか!
やはりこの写真は味写として
申し分ない作品だよ。

アジオ
ますます分からなくなっちゃった。
どういうことですか? 博士。

博士
君たちは運動会でさっそうと走る
ヨシ子ちゃんを映したくてこの写真を撮った。
しかし撮れたのは
知らないオッサンから特訓を受ける
半笑いの女の子だ。

アジコ
身も蓋もない言い方だけど、確かにそうね。

博士
間違いだらけの写真が、
結果として全く違うドラマを
作り上げている。
これは味写にとって
とても大切な条件なんだよ。

アジコ
ただの偶然じゃないかしら。

博士
その偶然が難しいのさ。
それに偶然だけで
こんなに面白い写真が撮れたんだ。
これはひょっとするとUFOを撮るより
ずっと大変なことかもしれないぞ。

アジオ
えっ! UFOよりも!?

博士
その通り。
現実には起こらなかったはずの出来事が
この写真の中にだけで起こっているんだから。
そんな非現実を映したという点では
UFO写真よりも貴重だと思うよ。

アジオ
やったー! 大スクープだ!

アジコ
まあ、単純ね。

博士
実は私も持っているんだ。味写作品をね。


アジオ&アジコ
是非見せてください。博士!

博士
ほう。ずいぶん興味が出てきたみたいだね。
ではお見せしよう‥‥はい!

味写No.002「予言」
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アジコ
キャー! 赤ちゃんがっ!

アジオ
し、心霊写真だっ!

博士
とんでもない。
これは私の知り合いが自分の子供たちを撮った
味写作品だよ。

アジオ
じゃあテーブルの下のこの赤ちゃんは?

博士
もちろん幽霊なんかじゃない。
ちゃんと生きてるよ。

アジコ
ホッ。安心したわ。
でもなぜこんな不吉な構図に?

博士
そこが味写の面白いところなんだ。
この写真を撮ったお父さんだって
なにもわざわざ自分の息子を
心霊風に撮ったわけじゃない。
もうひとりの娘さんを撮ろうとしたら、
たまたまテーブルの下に潜り込んでいた
弟さんが顔を出したというわけさ。

アジオ
なあんだ、そうか。
それにしても絶妙ですね。顔の見え具合が。

アジコ
この力強い眼差し。
なにか私たちに重大なメッセージを
送っているように感じない?

アジオ
うん、感じるね。
人類に対する深い問いかけを‥‥。

アジコ
戦争、飢餓、環境破壊‥‥
いいえ、それさえも超えた宇宙のメッセージを!

アジオ
それにしてもなぜテーブルの下になんかに
潜ってるんだろう?

アジコ
ひょっとしてこのテーブル、
この赤ちゃんが支えているのかも。

アジオ
壊れた足の代わりに?
なんてがんばり屋さんなんだ!

アジコ
なにのんきなこと言ってるの、虐待だわ!
いまスグ110番。警察よ!

博士
おやおや、すっかり味写の世界に
入り込んでいるようだね。

アジオ
ハッ! すいません、博士。
つい夢中になってしまって。

アジコ
まあホント。恥ずかしいわ。

博士
いやいや、君たちはカンがいいぞ。
味写を味わうとはそういうことなんだ。

アジオ
味写を味わう?

博士
そう。
この写真だって実のところは
今日君たちが見せてくれた写真と同じ失敗作だ。
でもそんな写真でも
私たちが想像を膨らませることによって、
途端に面白い味写作品になったじゃないか。

アジオ
なるほど。
確かに最初は見切れた赤ちゃんの顔に
びっくりしただけだったけど‥‥。

アジコ
いろんな感想を話し合っているうちに、
どんどん楽しくなってきたわ。

博士
うん、それが味写を味わうということなんだ。
どんな失敗写真だって味写になる可能性はある。
大切なのは私たちがそこに
新しい「味」を発見できるかどうかなのさ。

アジオ
味のことなら任せてよ!
こう見えてボクはグルメなんだぜ。
よーし、じゃんじゃん味わうぞ!

アジコ
ウフフ、食いしん坊ね!

2004-12-26-SUN

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