アジオ |
なんだ! この静けさは... |
アジコ |
ええ。
カラオケ風景でありながら
この静寂‥‥驚きだわ。 |
アジオ |
聞き取れないよ。彼女の歌声が。 |
アジコ |
耳を澄ますして!
微かだけど聞こえるはずよ。 |
博士 |
さあ、なにが聞こえるかな? |
アジオ |
さだまさしの「防人の詩」‥‥。 |
アジコ |
森田童子の「ぼくたちの失敗」‥‥。 |
博士 |
意外にもオレンジレンジの
「ロコローション」だったりしてね。
それはそれで嫌だけど。
(読者のみなさんも考えてみて下さいね!) |
アジオ |
でもどうしてこんなに
壁際に張り付いているんだろう? |
アジコ |
その分伸びたマイクのコードが、
いと哀れよね。 |
博士 |
あとこれでは歌詞が読めないんじゃないかな。
ひょっとして彼女にとっては
歌を上手に歌うより、
どれだけ離れた場所から歌詞が読み取れるか、
むしろそっちの方が重大なのかもしれないね。 |
アジオ |
みんなが楽しむ宴会の場で?
それじゃ彼女、
あまりにも身勝手過ぎやしませんか。 |
アジコ |
いいえ、早合点かもしれないわ。
客席は映っていないもの。
彼女ひとりぼっちで
挑戦してるのかも知れないわ‥‥。
カラオケを利用した視力検査に。
なんだか可哀想ね。 |
アジオ |
そうだったのか。なんて健気なんだ!
理由は分かんないけどがんばれ〜!
浴衣の人〜! |
博士 |
君たちの応援はきっと彼女にも届くはずだよ。
よし、じゃあ次の味写を紹介しようか。 |
アジオ&アジオ |
はい。博士!
|
アジオ |
なんてオシャレなんだ! |
アジコ |
そうね。
私の趣味とは全然違うけど、
これだけ堂々と着こなされると
センスを超えた説得力があるわ。 |
アジオ |
きっと海外で育ったんだよ。
これは来日したばかりの頃に撮った
思い出の写真なんだ。 |
アジコ |
確かに正面から見ると
後光が射しているようにも見えるあんな帽子、
日本で探すのは大変でしょうね。 |
博士 |
後ろのおじさんとはどんな関係だろうね。 |
アジオ |
親戚のおじさんと言いたいけど、
多分違うだろうな。 |
アジコ |
どうして?
私はてっきりそんな感じだと思ったけれど。 |
アジオ |
身分がちがうんだ。 |
アジコ |
身分?! |
アジオ |
彼女はお金持ちのマダムなんだよ。
あのサングラスがマダムの証拠さ。 |
アジコ |
マダムなの?
あのお祭りの露店に売ってるような
サングラスが。 |
アジオ |
マダムだとも!
それにひきかえこのおじさん、
こんなヨレヨレの甚平じゃ
とてもマダムとは釣り合わないね。 |
博士 |
階級の差が身なりに現れているというわけか。
じゃあなぜそんなふたりが一枚の写真に? |
アジオ |
おじさんのスネに絆創膏が貼ってあるよね。
あれはたぶん暴漢に襲われた彼女を
助けたときに負った名誉の負傷なのさ。
かっこいい! |
アジコ |
じゃあ、おじさんはマダムを
絶対絶命のピンチから救った
ナイト様というわけね。 |
アジオ |
へへへ、ご名答!
ほら、おじさんの腕時計に注目してよ。
あれはきっとマダムが
プレゼントしたものなんだよ。 |
アジコ |
まあ、あんなに素敵な腕時計を。 |
アジオ |
フフフ、マダムからの感謝のしるしさ。 |
博士 |
うん。
そんなロマンチックな一枚が
民家の庭先で撮られたという点も含めて、
なんとも味わい深い作品だね。 |
アジコ |
発砲スチロールのプランターに癒されるわ… |
博士 |
さあ、名残惜しいが今日の味写研究はここまでだ。
ふたりとも存分に味わってくれたかな? |
アジオ&アジコ |
はい、博士。ごちそうさまでした! |
博士 |
よし、いい返事だ。
じゃあまた来年もとっておきの味写を用意して
君たちを待ってるからね。
そうだ。君たちもお家を探してごらん。
大掃除は家に眠っている味写を発見する
絶好のチャンスだからね。
私もこれから実家に行くよ。 |
アジオ |
はあい! 博士も味写探しですか?
|
博士 |
もちろん! それとお年玉の前借りを…
|
アジコ |
まだ、貰ってるんですか?!
|