
アジコ |
不思議の国の‥‥アリスだわ! |

アジオ |
え?! どこにアリスが? |

アジコ |
ホラ。
ウサギちゃんの隣にいるじゃない! |

博士 |
ずいぶんお年を召されたアリスじゃな‥‥ |

アジコ |
和製アリスよ。
本名は有栖川木久蔵さん(72歳)、
現在は貯蓄と年金で
悠々自適に暮らすおじいさんよ。 |

博士 |
その有栖川さんがまたなぜこんな所に? |

アジコ |
きっと近所の接骨院に向かう途中、
この不思議なウサギちゃんを
見つけたんでしょうね。
そしてその後を追ううちに気がついたら‥ |

博士 |
東海道をワープして、
富士山の裾野に到着というわけか。 |

アジオ |
なんて渋いファンタジーなんだ! |

博士 |
大人には見えないんじゃろうな。
このウサギさんは。 |

アジコ |
ええ。
感受性の高い子供と老人にしか見えないはずよ。
一種の妖精だとお見受けしたわ。 |

アジオ |
でもずいぶん困ってるね。
このウサギさん。 |

アジコ |
誤算だったのね。
まさか相手が70過ぎの和製アリスとは
思わなかったのよ。 |

博士 |
少女を不思議の国に誘うつもりが、
お年寄りと一緒に観光旅行じゃな。 |

アジオ |
ルイスキャロルのつもりが、小津安二郎だもの。 |

博士 |
いまさら後には引けんしな。 |

アジコ |
とりあえずいまは宿の手配と、
土産物の買い出し‥‥
ファンタジーとはかけ離れた
現実的な問題に直面してるはずよ。 |

アジオ |
最終的には最寄りの観光センターも
視野に入れてるだろうね。 |

博士 |
しかし有栖川さんは鷹揚に構えておるな! |

アジコ |
そこが少女とお年寄りの年季の差ね!
戦後日本の激動と比べれば、
この程度の非現実なんかどうってことないのよ。 |

アジオ |
妖精を尻目に命の洗濯か‥‥頼もしいね! |

博士 |
しかしいったいどうなるんじゃ?
この和製アリスの結末は。 |

アジコ |
そうねえ、この調子でいくと‥‥現地解散かな! |

アジオ |
えっ~! 現地解散!? ここで終了? |

博士 |
意外な結末じゃな!
夢の世界から自費で戻ってくるファンタジーとは! |

アジコ |
さすが経験豊富な年金生活者ね。
困ってるウサギちゃんを見かねて
自らこのファンタジーに幕を引いたのよ‥‥ |

博士 |
なんと切ない夢物語じゃ。
しかしなぜか心は晴れやかじゃぞい。
高齢者の分別あるファンタジー…
有栖川さんの器の大きさに脱帽じゃ!
よしではこの爽やかな感動を胸にアジオ君、
次の作品…といいたいところじゃが
ここで緊急のお知らせじゃ!! |

アジオ |
なんだよ! 博士!
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アジコ |
そうよ!
実際の連載ではこの後、
ちゃんと次の作品を紹介できたはずよ!
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博士 |
なんとここからはこのバックナンバーを
読んでおられる読者のみなさんだけにお届けする
スペシャルエディションじゃ!
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アジオ |
なんでそんな必要があるのさ!
さっさとあのバカ殿を‥‥
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博士 |
シャラップ! 黙らっしゃい!!
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アジコ |
な‥‥なによ!
そんな大きな声出して!
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アジオ |
こ‥‥恐くなんかないぞ!
無職の中年の大声なんて!
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博士 |
オホン!
とにかく写真投稿という性格上、
当コーナーにはときとして
思いがけないハプニングが起こるものなんじゃ。
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アジオ |
それはひょっとして‥‥
ボクたちの天真爛漫な無邪気さが‥‥
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アジコ |
ある意味、味わい深い見解の相違を
生んでしまった‥‥みたいな?
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博士 |
ま、そんなところじゃ。
読者のみなさん、大人の事情を察しられよ。
ではこのスペシャルエディションでは
そんな反省とお詫びの意味を込めまして‥‥
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アジコ |
味写研究所の秘蔵コレクションをご披露します!
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アジオ |
奇跡のシャッターチャンスがとらえた、
4人の園児たちのスリルと感動を、
手に汗握って御味わい下さい!!
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