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  2006/03/03/FRI
 
Vol.2
ニューオリンズでの暮らしと研究生活の始まり



ニューオリンズでの最初の滞在先は、
ギリシャからの移民であるマリアおばさん宅でした。
多民族国家であるアメリカに暮らすのだから、
10カ国以上、100人ぐらい友達作るぞ!
という目標を掲げ、
その第一弾として早速マリアさん宅の
一室を間借りすることに。
ギリシャ人は元来人懐っこい性質なのか、
そこに夜な夜なニューオリンズ在住の
ギリシャ人のおじさん、おばさんが集まり、
飲めや歌えやの大賑わい。
熟年離婚したマリアさんは、
若い頃なかなか端麗な顔立ちなのもあってか、
わけアリ独身おじさんらに何人も言い寄られ、
まんざらでもない様子。
今が青春とばかりに日々を謳歌しているのでありました。

私はといえば、日本人の一人もいない
新しい職場で多国籍の同僚に囲まれ、
自分にとって初めての
研究という分野の仕事に携わり始め、
緊張の毎日を送っていました。
英語は、海外一人旅を通して
日常レベルでは自信もあったし、
なんとかなるさ! と割と楽観的に
単身乗り込んでみたものの、
実際の仕事現場では科学的な用語を含め、
高い英語力を要す場面も多く、
正直心細くてくじけそうなことも多々。
そういえばその頃、
高価な実験器具を壊してしまったことがあって、
一生懸命慰めてくれる同僚の言葉に
緊張がふっと解けた瞬間、涙がどばっと溢れてきて、
一人でトイレに駆け込んで泣いたことも
あったっけなぁ‥‥。
今となっては微笑ましい思い出なのですけど、
当時は必死だったんですよね。


次に、ニューオリンズでの暮らしには車が無いと不便で、
気になるライブスポットにも行きづらいということで、
早速車を探すことに。
車社会アメリカでは、
長距離走行でガタが来にくいということで
日本車の人気が高く、
実際走っている車の多くが日本車だったりするのですが、
私も中古の日本車を手に入れることに。
車の運転は教習所以来という
純ペーパードライバーの私は、
ひと気の減った夜に
自宅の周りの裏道を恐る恐る走り練習。
すぐ実践せにゃうまくもならぬ、
ということで出勤に
朝夕の混雑する道路を思い切って運転。
さらに、週末には自宅で大人しくしていることにも飽き、
生まれて初めての高速道路を一人運転し、
地元民のひしめくライブスポットへ。
振り返ると我ながら恐いもの知らずなものですが、
好奇心の高まりは抑えられないくらいに
なっていたのでした。

実は、こうして思い切って出かけてみた
何度目かのライブハウスで、
後のだんなさんになる人物との
運命の出会いもあったりするのですが、
確実にニューオリンズで
新たな出会いの半径を広げていくのでした。

(つづきます)

Photographed by Ann Sally

 
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