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  2006/04/07/FR
 
Vol.5 ニューオリンズでの音楽生活−3
音楽とは「いかに生きるか」である


日本に帰ってきて、
私自身がニューオリンズの生の音楽から
学んだことはなんだろうか、としばしば考えました。
今日はちょっとそのお話をしたいと思います。

インターネットやテレビや電話などで
世界のあらゆる情報を
いとも簡単に知ることができる昨今、
世界中のあらゆるジャンルの音楽を
CDから聴くことも簡単です。
ただ、本当の意味で何かを知るためには、
実際に触れてみて、聴いてみて、
暖かみや時には痛みを感じたり、
においを嗅いでみたり、
というような体の感覚を通してしか
あり得ないのだなと思います。

ニューオリンズでライブを
たくさん見聞きしたことを通して、
CDで聴くだけでは
音楽そのものの発しているたくさんのメッセージは
残念ながら見逃されているということを痛感しました。
実際に目の前で演奏している人の表情、
オーラ、呼吸の仕方、におい、
音と音の間にある「間」の部分。
それらは直に触れることでしかわからない部分でした。
頭だけで疑似体験することでもって
本物の体験に代えるということは
あり得ないということを、
ニューオリンズの生の音楽を通して感じました。


そして少しずつ分かってきたとても大切なことは
「面白い音楽というのはどういうものか」
ということでした。
演奏する技術が高くても
全く人の胸を打たない音楽がある一方、
上手ではないかもしれないけど胸を打つ音楽があります。
もちろんニューオリンズのミュージシャンは
演奏レベルも並外れて高いのですが、そ
れだけではない音楽の醍醐味を
ライブから教えられました。

そして、音楽というのは正直なもので、
演奏家がいかに生きているか、
どう物事を考えているか、ということを
ありありと露呈してしまうものだなと思いました。
だから、いい加減に生きていちゃだめだよ、
と音楽の神様に
いつも襟を正されているのだなと感じます。

音楽とは、いかに人生を大切に生きるか、なのです。


(つづきます)

 

Photographed by Ann Sally

 
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