第13回 ほんのすこしの変化


建築家が
アーティストとちがうところは、
「建築は、頼まれてやる仕事」という点ですね。

アーティストの
「やりたいからやる」というのは、
すごい精神力だと思うんですけど……。

実際に、
アーティストに会って
話をきいていると、
その人だけが感じたであろう
かけがえのない経験が、
核にあるみたいなんですよね。

話の合間に、ポロッと
そういう原体験が見える瞬間があると、
これは、とてもたのしいんです。
無数の建築評論家が
増えてきているとも言えるんですねぇ。
あ、それは、そうですね。
それは、
ジャマには、ならないですか?

映画と建築は、
「とにかくよくしゃべる」
という印象があるけど、
外野の声がおおきすぎて、
若い人が萎縮しちゃう、
ということは、ないのかなぁ。
建築には、
評論がありませんからね。

発表の媒体がありませんし、
どの雑誌を見ても、
じつはデータが載っていて、
「批評」はないんです。

映画には、
批評がありますよね。
だけど、
建築の批評というのは、
つくっている人どうしで書いていて、
批評家は、いないですから。
あ、そうなんですかー……
それはそれで、さみしいかもしれない。
(笑)さみしいです。
(笑)そうですよね!

でも、それならよかったです。
あれこれ言うヤツが多すぎて、
ジャマかなぁ、と想像してましたので。
美術の作家なら、
自分の作品については、
批評家が書いてくれるでしょう?

建築やっている人たちは……
自分でつくって、
自分で、批評を書いています。
(笑)

クライアントからは、
あとになって、
「やっぱり、
 別の案にしておけばよかったなぁ」
というふうには、
言われないものなんですか?
実際に建築をつくると
ほかの道には、進めませんから。

もし、
別の家を同時並行でつくっておいて、
となると、
「やっぱりこっちがいい」
ということになるでしょうけど、
建築の場合は、
ひとつしかできませんから、
「やっぱり、別の案のほうがよかったなぁ」
は、発想から、消してしまうものなんです。
そうなんですね。
クライアントと建築家は、
ある意味で、共犯関係という……。
そうですね。
共犯でいられるということは、
おおきいことです。
なるほどなぁ。
(次回に、つづきます)

2006-06-09-FRI


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